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「戦争する国」へ安保3文書改訂を許すな!④「米国の戦争」に、琉球弧の島々を戦略拠点に。

Ryukyuheiwaより:



関連記事:「戦争する国」へ安保3文書改訂を許すな!③ 9条否定「専守防衛」をかなぐり捨て「米国の戦争」へ防衛政策の大転換。
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-1210.html
関連記事:「戦争する国」へ安保3文書改訂を許すな!② 11月22日「有識者」会議、結論ありき、筋書き通りの答申を岸田首相に提出
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-1209.html
*11月22日提出された「報告書」、有識者会議の開催について、第1回議事要旨、第2回議事要旨、第3回議事要旨を掲載。
関連記事:「戦争する国」へ安保3文書改訂を許すな!① 2023年度防衛省「概算要求」5兆5947億円+事項要求で6兆円超え、防衛費2倍化へ突き進む。
*「2023年度防衛省概算要求」掲載。
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-1191.html



12月16日、岸田内閣が新たに閣議決定した、
「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」(「防衛計画の大綱」)、「防衛力整備計画」(「中期防衛力整備計画」
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/index.html

*ページ下部に掲載しました!
① 国家安全保障戦略の概要 jpg File 国家安全保障戦略について txt File
② 国家防衛戦略の概要 jpg File 国家防衛戦略について txt File
③ 防衛力整備計画について txt File 別紙1~3 jpg File 





times2023 01051
1月5日の沖縄タイムス紙面

sinpou2023 01056
1月5日の琉球新報紙面

sinpou2022 12216
12月21日の琉球新報紙面


反基地ネット抗議声明です。

抗議声明  
岸田政権は、「安保三文書」の閣議決定をただちに撤回せよ!
 
岸田自公政権は十二月十六日に、「安保三文書」(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)の閣議決定を強行した。「専守防衛に徹し、軍事大国にはならない」などとうそぶきながら。私たちはこの暴挙を満身の怒りで糾弾する!
 
この「安保三文書」なるものは、「台湾有事」になれば国家の総力を挙げて戦争にうって出るための戦争遂行体制づくりの指針であり、憲法第9条を最後的に破壊することを意味する、超反動的な文書以外のなにものでもない。岸田政権は、米国政府に倣(なら)って中国の動きを「これまでにない戦略的挑戦」と明記し、その「力による一方的な現状変更の試み」を「抑止や阻止、排除」するために「防衛力の抜本的強化」の必要性をがなりたてている。そして「わが国の反撃能力」を「保有・増強」すべきことを明記したのだ。そのために国産の長射程ミサイルの増産や米国製巡航ミサイル「トマホーク」を大量に購入すると同時に、これらを使用して敵基地や「指揮統制」を担う政府中枢等を先制攻撃する独自の「スタンド・オフ・ミサイル部隊」の新設と、日米間での「運用の調整」を明記したのだ。また敵の「脅威圏」で先制攻撃する対象を確定するために、無人機で情報を収集する部隊(「作戦情報部隊」仮称)を航空自衛隊(「航空宇宙自衛隊」へ改称)に新たに編成する、としているのだ。何が「専守防衛」だ!
 
そしてまた岸田政権は、「南西諸島の防衛態勢を迅速に構築する」と強調して、陸自第15旅団を「師団」に改編・強化(人数を二倍の四〇〇〇人に増強、団長の階級を陸将補から陸将に格上げ)し、また南西諸島「有事」の際の増援体制を強化(輸送船八隻、輸送機・空中給油機計十九機購入)するなど、軍備増強につき進むことを謳いあげたのだ。これは沖縄を戦場にすることをも厭(いと)わない、対中国の長期戦を遂行するための、南西諸島の軍事要塞化でなくして何であろうか! 絶対に許してはならない。
 
この「防衛力の抜本的強化」を岸田政権は、「国力としての防衛力」という観点からも実現しようとしている。「自分の国は自分で守れ」=国防教育の推進。「防衛産業の育成強化」「防衛装備輸出三原則」の見直し。「先端科学技術への国家投資」や「公共インフラ投資」、「有事に備え港湾や空港を平素から利用するルールづくり」等々。まさに国家総力戦の体制づくりである。
 
そして岸田政権は、この財源を確保するために、物価高と低賃金に喘(あえ)ぎ苦しんでいる労働者民衆に更なる増税を強制し、搾り取ることを決定したのだ。断じて許してはならない!
 
私たち反基地ネットは、血塗られた日本軍国主義の侵略戦争の暴虐と、沖縄戦の惨禍を二度と繰り返さないために、中国への「先制攻撃」を謳う「安保三文書」の閣議決定を断固糾弾する。岸田政権は、「安保三文書」の閣議決定をただちに撤回せよ!
 
二〇二二年十二月十九日
 
あらゆる基地の建設・強化に反対するネットワーク(反基地ネット)
共同代表 當山全治・仲本和男
連絡先 那覇市首里石嶺町三-一五一-五 098(885)8641
                       
内閣総理大臣  岸田 文雄 殿


sinpou2022 12214
12月21日の琉球新報紙面

miyakosinpou2022 12201
12月20日の宮古新報紙面

sinpou2022 12203
sinpou2022 12204
12月20日の琉球新報紙面

sinpou2022 12195
12月19日の琉球新報紙面

times2022 12193
12月19日の沖縄タイムス紙面

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12月18日の琉球新報紙面

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times2022 12183
12月18日の沖縄タイムス紙面



米軍と一体化した自衛隊、
米軍指揮下で「どこでも」「いつでも」戦争をする軍隊へ。

宮古・八重山を最前線に! 
私たちの島に「米国の戦争」のための軍隊=自衛隊の基地はいらない! 米軍の基地もいらない!
島々の住民の生命の危険を招く、米軍・自衛隊による琉球弧の島々の軍事要塞化を許さない!


県紙2紙は、

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12月17日の琉球新報紙面

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12月17日の沖縄タイムス紙面

在京紙東京新聞は、

tokyo2022 12171
12月17日の東京新聞紙面


国家安全保障戦略の概要
国家安全保障戦略の概要01
国家安全保障戦略の概要02
国家安全保障戦略の概要03
国家安全保障戦略の概要04
国家安全保障戦略の概要05
国家安全保障戦略の概要06
国家安全保障戦略の概要07
国家安全保障戦略の概要08
国家安全保障戦略の概要09

国家安全保障戦略について
令和4年12月16日
国家安全保障会議決定
閣議決定
国家安全保障戦略について別紙のとおり定める。
これに伴い、「国家安全保障戦略について」(平成25年12月17日国家安
全保障会議決定及び閣議決定)は廃止する。


(別紙)
国 家 安 全 保 障 戦 略
令和4年12 月


目次
Ⅰ 策定の趣旨
Ⅱ 我が国の国益
Ⅲ 我が国の安全保障に関する基本的な原則
Ⅳ 我が国を取り巻く安全保障環境と我が国の安全保障上の課題
1 グローバルな安全保障環境と課題
2 インド太平洋地域における安全保障環境と課題
⑴ インド太平洋地域における安全保障の概観
⑵ 中国の安全保障上の動向
⑶ 北朝鮮の安全保障上の動向
⑷ ロシアの安全保障上の動向
Ⅴ 我が国の安全保障上の目標
Ⅵ 我が国が優先する戦略的なアプローチ
1 我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素
2 戦略的なアプローチとそれを構成する主な方策
⑴ 危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出し、自由
で開かれた国際秩序を強化するための外交を中心とした取組の展開
ア 日米同盟の強化
イ 自由で開かれた国際秩序の維持・発展と同盟国・同志国等との連携
の強化
ウ 我が国周辺国・地域との外交、領土問題を含む諸懸案の解決に向け
た取組の強化
エ 軍備管理・軍縮・不拡散
オ 国際テロ対策
カ 気候変動対策
キ ODAを始めとする国際協力の戦略的な活用
ク 人的交流等の促進
⑵ 我が国の防衛体制の強化
ア 国家安全保障の最終的な担保である防衛力の抜本的強化
イ 総合的な防衛体制の強化との連携等
ウ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤の強化
エ 防衛装備移転の推進
オ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
⑶ 米国との安全保障面における協力の深化
⑷ 我が国を全方位でシームレスに守るための取組の強化
ア サイバー安全保障分野での対応能力の向上
イ 海洋安全保障の推進と海上保安能力の強化
ウ 宇宙の安全保障に関する総合的な取組の強化
エ 技術力の向上と研究開発成果の安全保障分野での積極的な活用のた
めの官民の連携の強化
オ 我が国の安全保障のための情報に関する能力の強化
カ 有事も念頭に置いた我が国国内での対応能力の強化
キ 国民保護のための体制の強化
ク 在外邦人等の保護のための体制と施策の強化
ケ エネルギーや食料など我が国の安全保障に不可欠な資源の確保
⑸ 自主的な経済的繁栄を実現するための経済安全保障政策の促進
⑹ 自由、公正、公平なルールに基づく国際経済秩序の維持・強化
⑺ 国際社会が共存共栄するためのグローバルな取組
ア 多国間協力の推進、国際機関や国際的な枠組みとの連携の強化
イ 地球規模課題への取組
Ⅶ 我が国の安全保障を支えるために強化すべき国内基盤
1 経済財政基盤の強化
2 社会的基盤の強化
3 知的基盤の強化
Ⅷ 本戦略の期間・評価・修正
Ⅸ 結語


Ⅰ 策定の趣旨
国際社会は時代を画する変化に直面している。グローバリゼーションと相
互依存のみによって国際社会の平和と発展は保証されないことが、改めて明
らかになった。自由で開かれた安定的な国際秩序は、冷戦終焉以降に世界で
拡大したが、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、
今、重大な挑戦に晒されている。その中で、気候変動問題や感染症危機を始
め、国境を越えて各国が協力して対応すべき諸課題も同時に生起しており、
国際関係において対立と協力の様相が複雑に絡み合う時代になっている。
これまで、我が国を含む先進民主主義国は、自由、民主主義、基本的人権
の尊重、法の支配といった普遍的価値を擁護し、共存共栄の国際社会の形成
を主導してきた。途上国を含む国際社会の多くの国も、こうした国際秩序を
前提に、グローバリゼーションの中で、国際社会の平和と安定と経済発展の
果実を享受してきた。
しかし、同時に、拡大する経済格差等に起因する不満は、国内、更には国
家間の関係において新たな緊張をもたらしている。普遍的価値を共有しない
一部の国家は、独自の歴史観・価値観に基づき、既存の国際秩序の修正を図
ろうとする動きを見せている。人類が過去一世紀近くにわたって築き上げて
きた武力の行使の一般的禁止という国際社会の大原則が、国際社会の平和及
び安全の維持に関する主要な責任を有する国際連合安全保障理事会(以下
「国連安保理」という。)の常任理事国により、あからさまな形で破られた。
また、海洋における一方的な現状変更及びその試みも継続している。そして、
普遍的価値を共有しない一部の国家は、経済と科学技術を独自の手法で急速
に発展させ、一部の分野では、学問の自由や市場経済原理を擁護してきた国
家よりも優位に立つようになってきている。これらは、既存の国際秩序に挑
戦する動きであり、国際関係において地政学的競争が激化している。このよ
うな状況において、多くの途上国等は地政学的競争に巻き込まれることを回
避しようとしているが、中には普遍的価値を共有しない一部の国家に追随す
る国も出てきている。
このように地政学的競争が激化すると同時に、国際社会においては、国際
社会全体の協力が不可欠な問題も生じてきている。気候変動、感染症危機等、
国境を越えて人類の存在そのものを脅かす地球規模課題への対応のために、
国際社会が価値観の相違、利害の衝突等を乗り越えて協力することが、かつ
てないほど求められている時代になっている。
我が国周辺に目を向ければ、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境
に直面している。ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序を形作る
ルールの根幹がいとも簡単に破られた。同様の深刻な事態が、将来、インド
太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性は排除されない。国
際社会では、インド太平洋地域を中心に、歴史的なパワーバランスの変化が
生じている。また、我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急
速に進展し、力による一方的な現状変更の圧力が高まっている。そして、領
域をめぐるグレーゾーン事態、民間の重要インフラ等への国境を越えたサイ
バー攻撃、偽情報の拡散等を通じた情報戦等が恒常的に生起し、有事と平時
の境目はますます曖昧になってきている。さらに、国家安全保障の対象は、
経済、技術等、これまで非軍事的とされてきた分野にまで拡大し、軍事と非
軍事の分野の境目も曖昧になっている。
国内に目を転じれば、我が国は、人口減少、少子高齢化、厳しい財政状況
等の困難な課題に直面している。こうした我が国国内の困難な経済的・社会
的課題を解決し、経済成長を実現していくためにも、産業に不可欠な物資、
エネルギー、食料等の貿易や人の移動等の国境をまたぐ経済・社会活動が円
滑になされる国際的な環境を確保しなければならない。
このような世界の歴史の転換期において、我が国は戦後最も厳しく複雑な
安全保障環境のただ中にある。その中において、防衛力の抜本的強化を始め
として、最悪の事態をも見据えた備えを盤石なものとし、我が国の平和と安
全、繁栄、国民の安全、国際社会との共存共栄を含む我が国の国益を守って
いかなければならない。そのために、我が国はまず、我が国に望ましい安全
保障環境を能動的に創出するための力強い外交を展開する。そして、自分の
国は自分で守り抜ける防衛力を持つことは、そのような外交の地歩を固める
ものとなる。
こうした目標を達成するためには、地政学的競争、地球規模課題への対応
等、対立と協力が複雑に絡み合う国際関係全体を俯瞰し、外交力・防衛力・
経済力・技術力・情報力を含む総合的な国力を最大限活用して、国家の対応
を高次のレベルで統合させる戦略が必要である。このような視点に立ち、我
が国の安全保障に関する最上位の政策文書となる国家安全保障戦略を定める。
本戦略は、外交、防衛、経済安全保障、技術、サイバー、海洋、宇宙、情報、
政府開発援助(ODA)、エネルギー等の我が国の安全保障に関連する分野
の諸政策に戦略的な指針を与えるものである。
2013 年に我が国初の国家安全保障戦略(平成25 年12 月17 日国家安全保
障会議決定及び閣議決定)が策定され、我が国は、国際協調を旨とする積極
的平和主義の下での平和安全法制の制定等により、安全保障上の事態に切れ
目なく対応できる枠組みを整えた。本戦略に基づく戦略的な指針と施策は、
その枠組みに基づき、我が国の安全保障に関する基本的な原則を維持しつつ、
戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものである。
同時に、国家としての力の発揮は国民の決意から始まる。伝統的な外交・
防衛の分野にとどまらない幅広い分野を対象とする本戦略を着実に実施して
いくためには、本戦略の内容と実施について国民の理解と協力を得て、国民
が我が国の安全保障政策に自発的かつ主体的に参画できる環境を政府が整え
ることが不可欠である。
本戦略は次のとおり構成される。
本戦略は、まず、国家の安全保障戦略を定める際の原点となるべき我が国
の国益を示す。次に、その国益を踏まえ、我が国の戦後の安全保障の歴史と
経験、国民の選択の中から培われてきた我が国の安全保障に関する基本的な
原則を示す。さらに、現在の我が国を取り巻く安全保障環境と我が国の安全
保障上の課題を示す。これらを踏まえて、我が国が達成すべき我が国の安全
保障上の目標を設定し、この目標を我が国が総合的な国力を用いて達成する
ための手段と方法、すなわち戦略的なアプローチを明らかにする。さらに、
戦略的なアプローチの実施を支える土台である我が国の様々な基盤を示す。
Ⅱ 我が国の国益
我が国が守り、発展させるべき国益を以下に示す。
1 我が国の主権と独立を維持し、領域を保全し、国民の生命・身体・財産
の安全を確保する。そして、我が国の豊かな文化と伝統を継承しつつ、自
由と民主主義を基調とする我が国の平和と安全を維持し、その存立を全う
する。また、我が国と国民は、世界で尊敬され、好意的に受け入れられる
国家・国民であり続ける。
2 経済成長を通じて我が国と国民の更なる繁栄を実現する。そのことによ
り、我が国の平和と安全をより強固なものとする。そして、我が国の経済
的な繁栄を主体的に達成しつつ、開かれ安定した国際経済秩序を維持・強
化し、我が国と他国が共存共栄できる国際的な環境を実現する。
3 自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値や国
際法に基づく国際秩序を維持・擁護する。特に、我が国が位置するインド
太平洋地域において、自由で開かれた国際秩序を維持・発展させる。
Ⅲ 我が国の安全保障に関する基本的な原則
我が国の国益を守るための安全保障政策の遂行の前提として、我が国の安
全保障に関する基本的な原則を以下に示す。
1 国際協調を旨とする積極的平和主義を維持する。その理念を国際社会で
一層具現化しつつ、将来にわたって我が国の国益を守る。そのために、我
が国を守る一義的な責任は我が国にあるとの認識の下、刻々と変化する安
全保障環境を直視した上で、必要な改革を果断に遂行し、我が国の安全保
障上の能力と役割を強化する。
2 自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を維
持・擁護する形で、安全保障政策を遂行する。そして、戦後最も厳しく複
雑な安全保障環境の中においても、世界的に最も成熟し安定した先進民主
主義国の一つとして、普遍的価値・原則の維持・擁護を各国と協力する形
で実現することに取り組み、国際社会が目指すべき範を示す。
3 平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国
とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない。
4 拡大抑止の提供を含む日米同盟は、我が国の安全保障政策の基軸であり
続ける。
5 我が国と他国との共存共栄、同志国との連携、多国間の協力を重視する。
Ⅳ 我が国を取り巻く安全保障環境と我が国の安全保障上の課題
我が国の安全保障上の目標を定めるに当たり、我が国を取り巻く安全保障
環境と我が国の安全保障上の課題を以下に示す。
1 グローバルな安全保障環境と課題
⑴ 2013 年の国家安全保障戦略の策定以降も、グローバルなパワーの重心
が、我が国が位置するインド太平洋地域に移る形で、国際社会は急速に
変化し続けている。この変化は中長期的に続き、国際社会の在り様を変
えるほどの歴史的な影響を与えるものとなる可能性が高い。
⑵ 国際社会においては、経済発展、技術革新、人的交流、新たな文化の
創出等の多くの機会と恩恵がもたらされている。しかし、同時に、我が
国の同盟国であり世界最大の総合的な国力を有する米国や、G7等の国
際的な枠組みが、国際社会におけるリスクを管理し、自由で開かれた国
際秩序を維持・発展させることは、ますます難しくなってきている。国
際社会全体の意思を具現すべき国連では、対立が目立ち、その機能が十
分に果たせていない。これは、普遍的価値やそれに基づく政治・経済体
制を共有しない国家が勢力を拡大し、国際社会におけるリスクが顕在化
していることが大きな要因である。具体的には、他国の国益を減ずる形
で自国の国益を増大させることも排除しない一部の国家が、軍事的・非
軍事的な力を通じて、自国の勢力を拡大し、一方的な現状変更を試み、
国際秩序に挑戦する動きを加速させている。このような動きが、軍事、
外交、経済、技術等の幅広い分野での国家間の競争や対立を先鋭化させ、
国際秩序の根幹を揺るがしている。その結果、現在の国際的な安全保障
環境は、国家間の関係や利害がモザイクのように入り組む、複雑で厳し
いものとなっている。
⑶ 以下に、こうした現在の国際的な安全保障環境の複雑さ、厳しさを表
す顕著な例を挙げる。
ア 他国の領域主権等に対して、軍事的及び非軍事的な手段を組み合わ
せる形で、力による一方的な現状変更及びその試みがなされている。
特に、ロシアによるウクライナ侵略は、武力の行使を禁ずる国際法の
深刻な違反であり、国際秩序の根幹を揺るがすものである。
イ サイバー空間、海洋、宇宙空間、電磁波領域等において、自由なア
クセスやその活用を妨げるリスクが深刻化している。特に、相対的に
露見するリスクが低く、攻撃者側が優位にあるサイバー攻撃の脅威は
急速に高まっている。サイバー攻撃による重要インフラの機能停止や
破壊、他国の選挙への干渉、身代金の要求、機微情報の窃取等は、国
家を背景とした形でも平素から行われている。そして、武力攻撃の前
から偽情報の拡散等を通じた情報戦が展開されるなど、軍事目的遂行
のために軍事的な手段と非軍事的な手段を組み合わせるハイブリッド
戦が、今後更に洗練された形で実施される可能性が高い。
ウ サプライチェーンの脆弱性、重要インフラへの脅威の増大、先端技
術をめぐる主導権争い等、従来必ずしも安全保障の対象と認識されて
いなかった課題への対応も、安全保障上の主要な課題となってきてい
る。その結果、安全保障の対象が経済分野にまで拡大し、安全保障の
確保のために経済的手段が一層必要とされている。
エ 本来、相互互恵的であるべき国際貿易、経済協力の分野において、
一部の国家が、鉱物資源、食料、産業・医療用の物資等の輸出制限、
他国の債務持続性を無視した形での借款の供与等を行うことで、他国
に経済的な威圧を加え、自国の勢力拡大を図っている。
オ 先端技術研究とその成果の安全保障目的の活用等について、主要国
が競争を激化させる中で、一部の国家が、他国の民間企業や大学等が
開発した先端技術に関する情報を不法に窃取した上で、自国の軍事目
的に活用している。
カ 国際社会におけるパワーバランスの変化や価値観の多様化により、
国際社会全体の統治構造において強力な指導力が失われつつある。そ
の結果、気候変動、自由貿易、軍備管理・軍縮・不拡散、テロ、感染
症対策を含む国際保健、食料、エネルギー等の国際社会共通の課題へ
の対応において、国際社会が団結しづらくなっている。また、中東、
アフリカ、太平洋島嶼部の脆弱な国が、例えば、気候変動がもたらす
異常気象・国土面積の減少、感染症の世界的な拡大、食料・エネル
ギー不足等により、相対的に大きな被害を被っている。
2 インド太平洋地域における安全保障環境と課題
上記のグローバルな安全保障環境と課題は、我が国が位置するインド太
平洋地域で特に際立っており、将来、更に深刻さを増す可能性がある。こ
れを踏まえ、インド太平洋地域における安全保障環境と課題、特に注目す
べき国・地域の動向を以下に示す。
⑴ インド太平洋地域における安全保障の概観
インド太平洋地域は、世界人口の半数以上を擁する世界の活力の中核
であり、太平洋とインド洋の交わりによるダイナミズムは世界経済の成
長エンジンとなっている。この地域にある我が国は、その恩恵を受けや
すい位置にある。
同時に、インド太平洋地域は安全保障上の課題が多い地域でもある。
例えば、核兵器を含む大規模な軍事力を有し、普遍的価値やそれに基づ
く政治・経済体制を共有しない国家や地域が複数存在する。さらには、
歴史的な経緯を背景とする外交関係等が複雑に絡み合っている。また、
東シナ海、南シナ海等における領域に関する一方的な現状変更及びその
試み、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散、自然災害等の様々な種類と烈
度の脅威や課題が存在する。
このようなインド太平洋地域において、我が国が、自由で開かれたイ
ンド太平洋(以下「FOIP」という。)というビジョンの下、同盟
国・同志国等と連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実
現し、地域の平和と安定を確保していくことは、我が国の安全保障に
とって死活的に重要である。
⑵ 中国の安全保障上の動向
中国は、「中華民族の偉大な復興」、今世紀半ばまでの「社会主義現
代化強国」の全面的完成、早期に人民解放軍を「世界一流の軍隊」に築
き上げることを明確な目標としている。中国は、このような国家目標の
下、国防費を継続的に高い水準で増加させ、十分な透明性を欠いたまま、
核・ミサイル戦力を含む軍事力を広範かつ急速に増強している。
また、中国は、我が国の尖閣諸島周辺における領海侵入や領空侵犯を
含め、東シナ海、南シナ海等における海空域において、力による一方的
な現状変更の試みを強化し、日本海、太平洋等でも、我が国の安全保障
に影響を及ぼす軍事活動を拡大・活発化させている。さらに、中国は、
ロシアとの戦略的な連携を強化し、国際秩序への挑戦を試みている。
中国は、世界第二位の経済力を有し、世界経済を牽引する国としても、
また、気候変動を含む地球規模課題についても、その国際的な影響力に
ふさわしい更なる取組が国際社会から強く求められている。しかし、中
国は、主要な公的債権国が等しく参加する国際的な枠組み等にも参加し
ておらず、開発金融等に関連する活動の実態も十分な透明性を欠いてい
る。また、経済面での安全を確立すべく、戦略的な取組を強化しており、
他国の中国への依存を利用して、相手国に経済的な威圧を加える事例も
起きている。
中国は、台湾について平和的統一の方針は堅持しつつも、武力行使の
可能性を否定していない。さらに、中国は我が国近海への弾道ミサイル
発射を含め台湾周辺海空域において軍事活動を活発化させており、台湾
海峡の平和と安定については、我が国を含むインド太平洋地域のみなら
ず、国際社会全体において急速に懸念が高まっている。
中国が、首脳レベルを含む様々なレベルでの意思疎通を通じて、国際
社会と建設的な関係を構築すること、また、我が国を含む国際社会との
対話と協力を重ねること等により、我が国と共にインド太平洋地域を含
む国際社会の平和と安定に貢献することが期待されている。
しかしながら、現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向等は、我が国と
国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の平和と安全及び国際社会の
平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これ
までにない最大の戦略的な挑戦であり、我が国の総合的な国力と同盟
国・同志国等との連携により対応すべきものである。
⑶ 北朝鮮の安全保障上の動向
朝鮮半島においては、韓国と北朝鮮双方の大規模な軍事力が対峙して
いる。北朝鮮は、累次の国連安保理決議に従った、全ての大量破壊兵器
及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆
的な方法での廃棄を依然として行っていない。現在も深刻な経済的困難
に直面しており、人権状況も全く改善しない一方で、軍事面に資源を重
点的に配分し続けている。
北朝鮮は、近年、かつてない高い頻度で、新たな態様での弾道ミサイ
ルの発射等を繰り返し、急速にその能力を増強している。特に、米国本
土を射程に含む大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルの発射、
変則軌道で飛翔するミサイルを含む新たな態様での発射、発射台付き車
両(TEL)・潜水艦・鉄道といった様々なプラットフォームからの発
射等により、ミサイル関連技術及び運用能力は急速に進展している。
さらに、北朝鮮は、核戦力を質的・量的に最大限のスピードで強化す
る方針であり、ミサイル関連技術等の急速な発展と合わせて考えれば、
北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大
かつ差し迫った脅威となっている。
北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権と国民の生命・安全に関わる
重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の課題である。ま
た、基本的人権の侵害という国際社会の普遍的問題である。
⑷ ロシアの安全保障上の動向
ロシアによるウクライナ侵略等、ロシアの自国の安全保障上の目的達
成のために軍事力に訴えることを辞さない姿勢は顕著である。また、ロ
シアは核兵器による威嚇ともとれる言動を繰り返している。
ロシアは、我が国周辺における軍事活動を活発化させている。我が国
固有の領土である北方領土でもロシアは軍備を強化しているが、これは、
特にオホーツク海がロシアの戦略核戦力の一翼を担う戦略原子力潜水艦
の活動領域であることが、その背景にあるとみられる。
さらに、ロシアは、中国との間で、戦略的な連携を強化してきている。
特に、近年は、我が国周辺での中露両国の艦艇による共同航行や爆撃機
による共同飛行等の共同演習・訓練を継続的に実施するなど、軍事面で
の連携が強化されている。
ロシアの対外的な活動、軍事動向等は、今回のウクライナ侵略等に
よって、国際秩序の根幹を揺るがし、欧州方面においては安全保障上の
最も重大かつ直接の脅威と受け止められている。また、我が国を含むイ
ンド太平洋地域におけるロシアの対外的な活動、軍事動向等は、中国と
の戦略的な連携と相まって、安全保障上の強い懸念である。
Ⅴ 我が国の安全保障上の目標
以上のような我が国の安全保障上の課題が存在する中で、我が国が国益を
確保できるようにするための我が国の安全保障上の目標を以下に示す。この
目標は、上記Ⅲで示した我が国の安全保障に関する基本的な原則を踏まえた
ものである。
1 我が国の主権と独立を維持し、我が国が国内・外交に関する政策を自主
的に決定できる国であり続け、我が国の領域、国民の生命・身体・財産を
守る。そのために、我が国自身の能力と役割を強化し、同盟国である米国
や同志国等と共に、我が国及びその周辺における有事、一方的な現状変更
の試み等の発生を抑止する。万が一、我が国に脅威が及ぶ場合も、これを
阻止・排除し、かつ被害を最小化させつつ、我が国の国益を守る上で有利
な形で終結させる。
2 安全保障政策の遂行を通じて、我が国の経済が成長できる国際環境を主
体的に確保する。それにより、我が国の経済成長が我が国を取り巻く安全
保障環境の改善を促すという、安全保障と経済成長の好循環を実現する。
その際、我が国の経済構造の自律性、技術等の他国に対する優位性、ひい
ては不可欠性を確保する。
3 国際社会の主要なアクターとして、同盟国・同志国等と連携し、国際関
係における新たな均衡を、特にインド太平洋地域において実現する。それ
により、特定の国家が一方的な現状変更を容易に行い得る状況となること
を防ぎ、安定的で予見可能性が高く、法の支配に基づく自由で開かれた国
際秩序を強化する。
4 国際経済や、気候変動、感染症等の地球規模課題への対応、国際的な
ルールの形成等の分野において、多国間の協力を進め、国際社会が共存共
栄できる環境を実現する。
Ⅵ 我が国が優先する戦略的なアプローチ
我が国は、我が国の安全保障上の目標を達成するために、我が国の総合的
な国力をその手段として有機的かつ効率的に用いて、戦略的なアプローチを
実施する。
1 我が国の安全保障に関わる総合的な国力の主な要素
⑴ 第一に外交力である。国家安全保障の基本は、法の支配に基づき、平
和で安定し、かつ予見可能性が高い国際環境を能動的に創出し、脅威の
出現を未然に防ぐことにある。我が国は、長年にわたり、国際社会の平
和と安定、繁栄のための外交活動や国際協力を行ってきた。その伝統と
経験に基づき、大幅に強化される外交の実施体制の下、今後も、多くの
国と信頼関係を築き、我が国の立場への理解と支持を集める外交活動や
他国との共存共栄のための国際協力を展開する。
⑵ 第二に防衛力である。防衛力は、我が国の安全保障を確保するための
最終的な担保であり、我が国を守り抜く意思と能力を表すものである。
国際社会の現実を見れば、この機能は他の手段では代替できない。防衛
力により、我が国に脅威が及ぶことを抑止し、仮に我が国に脅威が及ぶ
場合にはこれを阻止し、排除する。そして、抜本的に強化される防衛力
は、我が国に望ましい安全保障環境を能動的に創出するための外交の地
歩を固めるものとなる。
⑶ 第三に経済力である。経済力は、平和で安定した安全保障環境を実現
するための政策の土台となる。我が国は、世界第三位の経済大国であり、
開かれ安定した国際経済秩序の主要な担い手として、自由で公正な貿
易・投資活動を行う。また、グローバル・サプライチェーンに不可欠な
高付加価値のモノとサービスを提供し、我が国の経済成長を実現してい
く。
⑷ 第四に技術力である。科学技術とイノベーションの創出は、我が国の
経済的・社会的発展をもたらす源泉である。そして、技術力の適切な活
用は、我が国の安全保障環境の改善に重要な役割を果たし、気候変動等
の地球規模課題への対応にも不可欠である。我が国が長年にわたり培っ
てきた官民の高い技術力を、従来の考え方にとらわれず、安全保障分野
に積極的に活用していく。
⑸ 第五に情報力である。急速かつ複雑に変化する安全保障環境において、
政府が的確な意思決定を行うには、質が高く時宜に適った情報収集・分
析が不可欠である。そのために、政策部門と情報部門との緊密な連携の
下、政府が保有するあらゆる情報収集の手段と情報源を活用した総合的
な分析により、安全保障に関する情報を可能な限り早期かつ正確に把握
し、政府内外での共有と活用を図る。また、我が国の安全保障上の重要
な情報の漏洩を防ぐために、官民の情報保全に取り組む。
2 戦略的なアプローチとそれを構成する主な方策
⑴ 危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創出し、自由
で開かれた国際秩序を強化するための外交を中心とした取組の展開
ア 日米同盟の強化
日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、我が国の安全保障のみ
ならず、インド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定の実現に不可
欠な役割を果たす。特に、インド太平洋地域において日米の協力を具
体的に深化させることが、米国のこの地域へのコミットメントを維
持・強化する上でも死活的に重要である。これらのことも念頭に、日
米の戦略レベルで連携を図り、米国と共に、外交、防衛、経済等のあ
らゆる分野において、日米同盟を強化していく。
イ 自由で開かれた国際秩序の維持・発展と同盟国・同志国等との連携
の強化
我が国は、インド太平洋地域に位置する国家として、日米同盟を基
軸としつつ、日米豪印(クアッド)等の取組を通じて、同志国との協
力を深化し、FOIPの実現に向けた取組を更に進める。そのために、
FOIPというビジョンの国際社会における更なる普遍化、自由で公
正な経済圏を広げるためのルール作り、連結性の向上、各国・国際機
関のガバナンスの強化、海洋安全保障の確保等の取組を拡充していく。
また、経済的にも発展し、国際社会における影響力が高まっている
途上国等への外交的な関与を更に強化する。そのことにより、できる
だけ多くの国と共に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強
化する。
さらに、同盟国・同志国間のネットワークを重層的に構築するとと
もに、それを拡大し、抑止力を強化していく。そのために、日米韓、
日米豪等の枠組みを活用しつつ、オーストラリア、インド、韓国、欧
州諸国、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国、カナダ、北大西洋
条約機構(NATO)、欧州連合(EU)等との安全保障上の協力を
強化する。具体的には、二国間・多国間の対話を通じた同志国等のイ
ンド太平洋地域への関与の強化の促進、共同訓練、情報保護協定・物
品役務相互提供協定(ACSA)・円滑化協定(RAA)の締結、防
衛装備品の共同開発、防衛装備品の移転、能力構築支援、戦略的コ
ミュニケーション、柔軟に選択される抑止措置(FDO)等の取組を
進める。
ウ 我が国周辺国・地域との外交、領土問題を含む諸懸案の解決に向け
た取組の強化
日中両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって、共に重要な責
任を有する。我が国は、中国との間で、様々なレベルの意思疎通を通
じて、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め
対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をしていくとの
「建設的かつ安定的な関係」を構築していく。このことは、インド太
平洋地域を含む国際社会の平和と安定にとって不可欠である。
中国が力による一方的な現状変更の試みを拡大していることについ
ては、これに強く反対し、そのような行為を行わないことを強く求め、
冷静かつ毅然として対応する。また、中国の急速な軍事力の強化及び
軍事活動の拡大に関しては、透明性等を向上させるとともに、国際的
な軍備管理・軍縮等の努力に建設的な協力を行うよう同盟国・同志国
等と連携し、強く働きかける。そして、日中間の信頼の醸成のため、
中国との安全保障面における意思疎通を強化する。加えて、中国との
間における不測の事態の発生を回避・防止するための枠組みの構築を
含む日中間の取組を進める。
同時に、経済、人的交流等の分野において日中双方の利益となる形
での協力は可能であり、我が国経済の発展と経済安全保障に資する形
で、中国との適切な経済関係を構築しつつ、両国の人的交流を再活性
化していく。また、同盟国・同志国や国際機関等と連携し、中国が、
国際的なルール・基準を遵守し、自国の透明性と予見可能性を高め、
地球規模課題等について協力すべきは協力しつつ、その国際的な影響
力にふさわしい責任ある建設的な役割を果たすように促す。
台湾との関係については、我が国は、1972 年の日中共同声明を踏ま
え、非政府間の実務関係として維持してきており、台湾に関する基本
的な立場に変更はない。台湾は、我が国にとって、民主主義を含む基
本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重
要なパートナーであり、大切な友人である。また、台湾海峡の平和と
安定は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素であり、両岸問題の平
和的解決を期待するとの我が国の立場の下、様々な取組を継続してい
く。
韓国は、地政学的にも我が国の安全保障にとっても極めて重要な隣
国である。北朝鮮への対応等を念頭に、安全保障面を含め、日韓・日
米韓の戦略的連携を強化していく。そのためにも、1965 年の国交正常
化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき日韓関係を発展
させていくべく、韓国側と緊密に意思疎通を図っていく。二国間の諸
懸案については、我が国の一貫した立場に基づいて然るべく対応して
いく。我が国固有の領土である竹島の領有権に関する問題については、
我が国の一貫した立場に基づき毅然と対応しつつ、国際法にのっとり、
平和的に紛争を解決するとの方針に基づき、粘り強く外交努力を行う。
北朝鮮による核・ミサイル開発に関しては、米国及び韓国と緊密に
連携しつつ、地域の抑止力の強化、国連安保理決議に基づくものを含
む対北朝鮮制裁の完全な履行及び外交的な取組を通じ、六者会合共同
声明や国連安保理決議に基づく北朝鮮の完全な非核化に向けた具体的
行動を北朝鮮に対して求めていく。また、日朝関係については、日朝
平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解
決に向けて取り組んでいく。とりわけ、拉致問題については、時間的
な制約のある深刻な人道問題であり、この問題の解決なくして北朝鮮
との国交正常化はあり得ないとの基本認識の下、一日も早い全ての拉
致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行
犯の引渡しに向けて全力を尽くす。
ロシアとの関係については、インド太平洋地域の厳しい安全保障環
境を踏まえ、我が国の国益を守る形で対応していく。また、同盟国・
同志国等と連携しつつ、ロシアによる国際社会の平和と安定及び繁栄
を損なう行動を防ぐ。対露外交上の最大の懸案である北方領土問題に
ついては、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針は不
変である。
エ 軍備管理・軍縮・不拡散
我が国周辺における核兵器を含む軍備増強の傾向を止め、これを反
転させ、核兵器による威嚇等の事態の生起を防ぐことで、我が国を取
り巻く安全保障環境を改善し、国際社会の平和と安定を実現する。そ
のために、軍備管理・軍縮・不拡散の取組を一層強化する。具体的に
は、唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」の実現に向けた
国際的な取組を主導する。北朝鮮、イラン等の地域の不拡散問題も踏
まえ、核兵器不拡散条約(NPT)を礎石とする国際的な核軍縮・不
拡散体制を維持・強化し、現実の国際的な安全保障上の課題に適切に
対処しつつ、実践的・現実的な取組を着実に進める。
また、武器や関連機微技術の拡散防止のための国際輸出管理レジー
ムの維持・強化、我が国国内における不拡散措置の適切な実施や、各
国の能力構築支援を柱として不拡散政策に取り組む。
生物兵器、化学兵器及び通常兵器についても、自律型致死兵器シス
テム(LAWS)を含め、多国間での取組、ルール作り等に積極的に
取り組む。
オ 国際テロ対策
テロはいかなる理由をもってしても正当化できず、強く非難される
べきものであり、国際社会と共に、断固とした姿勢を示し、テロ対策
を講じていく。具体的には、国際テロ対策を推進し、また、原子力発
電所等の重要な生活関連施設の安全確保に関する我が国国内での対策
を徹底する。
さらに、在外邦人等の安全を確保するための情報の共有を始め、各
国、民間企業等との協力体制を構築する。また、国際テロ情勢に関す
る情報収集・分析の体制や能力を強化する。
カ 気候変動対策
気候変動は、人類の存在そのものに関わる安全保障上の問題であり、
気候変動がもたらす異常気象は、自然災害の多発・激甚化、災害対応
の増加、エネルギー・食料問題の深刻化、国土面積の減少、北極海航
路の利用の増加等、我が国の安全保障に様々な形で重大な影響を及ぼ
す。
同盟国・同志国を含むあらゆるステークホルダーと連携して、国内
外での取組を主導していく。具体的には、2030 年度において温室効果
ガスを2013 年度から46%削減、2050 年までのカーボンニュートラル
実現に向けた、再生可能エネルギーや原子力の最大限の活用を始めと
するエネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベー
ションの創出等を通じ、脱炭素社会の実現に向けて取り組む。
また、気候変動が国際的な安全保障環境に与える否定的な影響を最
小限のものとするよう、国際社会での取組を主導する。その一環とし
て、気候変動問題が切迫した脅威となっている島嶼国を始めとする途
上国等に対して、持続可能で強靭な経済・社会を構築するための支援
を行う。
キ ODAを始めとする国際協力の戦略的な活用
FOIPというビジョンの下、自由で開かれた国際秩序を維持・発
展させ、国際社会の共存共栄を実現するためにODAを戦略的に活用
していく。具体的には、質の高いインフラ、人材育成等による連結性、
海洋安全保障、法の支配、経済安全保障等の強化のための支援を行う。
そのことにより、開発途上国等との信頼・協力関係を強化する。また、
FOIPというビジョンに賛同する幅広い国際社会のパートナーとの
協力を進める。
そして、人間の安全保障の考え方の下、貧困削減、保健、気候変動、
環境、人道支援等の地球規模課題の解決のための国際的な取組を主導
する。これらの取組を行うに当たり、我が国企業の海外展開の支援や、
ODAとODA以外の公的資金との連携等を強化する。さらに、国際
機関・NGOを始めとする多様なステークホルダーとの連携を引き続
き強化する。
同志国との安全保障上の協力を深化させるために、開発途上国の経
済社会開発等を目的としたODAとは別に、同志国の安全保障上の能
力・抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品・物資の提
供やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組
みを設ける。これは、総合的な防衛体制の強化のための取組の一つで
ある。
ク 人的交流等の促進
人と人、国と国の相互理解の増進は、国家間の緊張を緩和し、平和
で安定した国際関係を築く土台となる。海外における日本への理解を
促進し、我が国と国民が好意的に受け入れられる国際環境を醸成する
ために、人的交流、文化交流等に取り組む。具体的には、各国・地域
の政府関係者、有識者、文化人等との交流、留学生交流、青少年交流、
スポーツ交流等、様々なレベル・分野での人的交流を促進する。さら
に、豊かな我が国の文化の海外への紹介、海外での日本語の普及に対
する支援等を行う。
⑵ 我が国の防衛体制の強化
ア 国家安全保障の最終的な担保である防衛力の抜本的強化
国際社会において、力による一方的な現状変更及びその試みが恒常
的に生起し、我が国周辺における軍備増強が急速に拡大している。ロ
シアによるウクライナ侵略のように国際秩序の根幹を揺るがす深刻な
事態が、将来、とりわけ東アジアにおいて発生することは排除されな
い。このような安全保障環境に対応すべく、防衛力を抜本的に強化し
ていく。
そして、強力な軍事能力を持つ主体が、他国に脅威を直接及ぼす意
思をいつ持つに至るかを正確に予測することは困難である。したがっ
て、そのような主体の能力に着目して、我が国の安全保障に万全を期
すための防衛力を平素から整備しなければならない。また、我が国の
防衛力は、科学技術の進展等に伴う新しい戦い方にも対応できるもの
でなくてはならない。
このような視点に立ち、宇宙・サイバー・電磁波の領域及び陸・
海・空の領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により自
衛隊の全体の能力を増幅させる領域横断作戦能力に加え、侵攻部隊に
対し、その脅威圏の外から対処するスタンド・オフ防衛能力等により、
重層的に対処する。また、有人アセットに加え、無人アセット防衛能
力も強化すること等により、様々な防衛能力が統合された防衛力を構
築していく。さらに、現有装備品を最大限有効に活用するため、可動
率向上や弾薬・燃料の確保、主要な防衛施設の強靭化により、防衛力
の実効性を一層高めていくことを最優先課題として取り組む。
我が国への侵攻を抑止する上で鍵となるのは、スタンド・オフ防衛
能力等を活用した反撃能力である。近年、我が国周辺では、極超音速
兵器等のミサイル関連技術と飽和攻撃など実戦的なミサイル運用能力
が飛躍的に向上し、質・量ともにミサイル戦力が著しく増強される中、
ミサイルの発射も繰り返されており、我が国へのミサイル攻撃が現実
の脅威となっている。こうした中、今後も、変則的な軌道で飛翔する
ミサイル等に対応し得る技術開発を行うなど、ミサイル防衛能力を
質・量ともに不断に強化していく。
しかしながら、弾道ミサイル防衛という手段だけに依拠し続けた場
合、今後、この脅威に対し、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応
することは難しくなりつつある。
このため、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル
防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力
攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力、すな
わち反撃能力を保有する必要がある。
この反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段と
して弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件
に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自
衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加える
ことを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能
力をいう。
こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、武力攻撃その
ものを抑止する。その上で、万一、相手からミサイルが発射される際
にも、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、反撃能
力により相手からの更なる武力攻撃を防ぎ、国民の命と平和な暮らし
を守っていく。
この反撃能力については、1956 年2月29 日に政府見解として、憲
法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認め
られる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲
に含まれ、可能である」としたものの、これまで政策判断として保有
することとしてこなかった能力に当たるものである。
この政府見解は、2015 年の平和安全法制に際して示された武力の行
使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるもので
あり、今般保有することとする能力は、この考え方の下で上記三要件
を満たす場合に行使し得るものである。
この反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を
変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使さ
れ、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許
されないことはいうまでもない。
また、日米の基本的な役割分担は今後も変更はないが、我が国が反
撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米
が協力して対処していくこととする。
さらに、有事の際の防衛大臣による海上保安庁に対する統制を含め、
自衛隊と海上保安庁との連携・協力を不断に強化する。
また、政府横断的な連携を図る形での自衛隊のアセットを活用した
柔軟に選択される抑止措置(FDO)等を実施する。
現下の我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえれば、我が国の防衛
力の抜本的強化は、速やかに実現していく必要がある。具体的には、
本戦略策定から5年後の2027 年度までに、我が国への侵攻が生起する
場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受
けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。さらに、
おおむね10 年後までに、より早期かつ遠方で我が国への侵攻を阻止・
排除できるように防衛力を強化する。さらに、今後5年間の最優先課
題として、現有装備品の最大限の有効活用と、将来の自衛隊の中核と
なる能力の強化に取り組む。
上記の自衛隊の体制整備や防衛に関する施策は、かつてない規模と
内容を伴うものである。また、防衛力の抜本的強化は、一時的な支出
増では対応できず、一定の支出水準を保つ必要がある。そのため、こ
れら施策は、本戦略を踏まえ、国家防衛戦略及び防衛力整備計画に基
づき実現するとともに、その財源についてしっかりした措置を講じ、
これを安定的に確保していく。
このように、必要とされる防衛力の内容を積み上げた上で、同盟
国・同志国等との連携を踏まえ、国際比較のための指標も考慮し、我
が国自身の判断として、2027 年度において、防衛力の抜本的強化とそ
れを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が現在の国内総生産
(GDP)の2%に達するよう、所要の措置を講ずる。
イ 総合的な防衛体制の強化との連携等
我が国の防衛上の課題に対応する上で、防衛力の抜本的強化がその
中核となる。しかし、安全保障の対象・分野が多岐にわたるため、防
衛力のみならず、外交力・経済力を含む総合的な国力を活用し、我が
国の防衛に当たる。このような考えの下、防衛力の抜本的強化を補完
し、それと不可分一体のものとして、研究開発、公共インフラ整備、
サイバー安全保障、我が国及び同志国の抑止力の向上等のための国際
協力の四つの分野における取組を関係省庁の枠組みの下で推進し、総
合的な防衛体制を強化する。
これに加え、地方公共団体を含む政府内外の組織との連携を進め、
国全体の防衛体制を強化する。
ウ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤の強化
我が国の防衛生産・技術基盤は、自国での防衛装備品の研究開発・
生産・調達の安定的な確保等のために不可欠な基盤である。したがっ
て、我が国の防衛生産・技術基盤は、いわば防衛力そのものと位置付
けられるものであることから、その強化は必要不可欠である。具体的
には、力強く持続可能な防衛産業を構築するために、事業の魅力化を
含む各種取組を政府横断的に進めるとともに、官民の先端技術研究の
成果の防衛装備品の研究開発等への積極的な活用、新たな防衛装備品
の研究開発のための態勢の強化等を進める。
エ 防衛装備移転の推進
防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和
と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国に
とって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力
の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための重要な
政策的な手段となる。こうした観点から、安全保障上意義が高い防衛
装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため、防衛装備移
転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討する。そ
の際、三つの原則そのものは維持しつつ、防衛装備移転の必要性、要
件、関連手続の透明性の確保等について十分に検討する。
また、防衛装備移転を円滑に進めるための各種支援を行うこと等に
より、官民一体となって防衛装備移転を進める。
オ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
防衛力の中核である自衛隊員が、その能力を一層発揮できるように
するため、人的基盤を強化する。そのために、より幅広い層から多様
かつ優秀な人材の確保を図る。ハラスメントを一切許容しない組織環
境や女性隊員が更に活躍できる環境を整備するとともに、隊員の処遇
の向上を図り、そして、全ての自衛隊員が高い士気を維持し、自らの
能力を十分に発揮できる環境を整備する。
⑶ 米国との安全保障面における協力の深化
我が国の防衛力を抜本的に強化しつつ、米国との安全保障面における
協力を深化すること等により、核を含むあらゆる能力によって裏打ちさ
れた米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層
強化する。具体的には、日米の役割・任務・能力に関する不断の検討を
踏まえ、日米の抑止力・対処力を強化するため、同盟調整メカニズム
(ACM)等の調整機能を更に発展させつつ、領域横断作戦や我が国の
反撃能力の行使を含む日米間の運用の調整、相互運用性の向上、サイ
バー・宇宙分野等での協力深化、先端技術を取り込む装備・技術面での
協力の推進、日米のより高度かつ実践的な共同訓練、共同の柔軟に選択
される抑止措置(FDO)、共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)
活動、日米の施設の共同使用の増加等に取り組む。その際、日米がその
能力を十分に発揮できるよう、情報保全、サイバーセキュリティ等の基
盤を強化する。
同時に、このような取組を進めつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽
減を図る観点から、普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編を着実に実
施する。
⑷ 我が国を全方位でシームレスに守るための取組の強化
軍事と非軍事、有事と平時の境目が曖昧になり、ハイブリッド戦が展
開され、グレーゾーン事態が恒常的に生起している現在の安全保障環境
において、サイバー空間・海洋・宇宙空間、技術、情報、国内外の国民
の安全確保等の多岐にわたる分野において、政府横断的な政策を進め、
我が国の国益を隙なく守る。
ア サイバー安全保障分野での対応能力の向上
サイバー空間の安全かつ安定した利用、特に国や重要インフラ等の
安全等を確保するために、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米
主要国と同等以上に向上させる。
具体的には、まずは、最新のサイバー脅威に常に対応できるように
するため、政府機関のシステムを常時評価し、政府機関等の脅威対策
やシステムの脆弱性等を随時是正するための仕組みを構築する。その
一環として、サイバーセキュリティに関する世界最先端の概念・技術
等を常に積極的に活用する。そのことにより、外交・防衛・情報の分
野を始めとする政府機関等のシステムの導入から廃棄までのライフサ
イクルを通じた防御の強化、政府内外の人材の育成・活用の促進等を
引き続き図る。
その上で、武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対す
る安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある
場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生し
た場合の被害の拡大を防止するために能動的サイバー防御を導入する。
そのために、サイバー安全保障分野における情報収集・分析能力を強
化するとともに、能動的サイバー防御の実施のための体制を整備する
こととし、以下の(ア)から(ウ)までを含む必要な措置の実現に向
け検討を進める。
(ア) 重要インフラ分野を含め、民間事業者等がサイバー攻撃を受けた
場合等の政府への情報共有や、政府から民間事業者等への対処調整、
支援等の取組を強化するなどの取組を進める。
(イ) 国内の通信事業者が役務提供する通信に係る情報を活用し、攻撃
者による悪用が疑われるサーバ等を検知するために、所要の取組を
進める。
(ウ) 国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大
なサイバー攻撃について、可能な限り未然に攻撃者のサーバ等への
侵入・無害化ができるよう、政府に対し必要な権限が付与されるよ
うにする。
能動的サイバー防御を含むこれらの取組を実現・促進するために、
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発展的に改組し、
サイバー安全保障分野の政策を一元的に総合調整する新たな組織を設
置する。そして、これらのサイバー安全保障分野における新たな取組
の実現のために法制度の整備、運用の強化を図る。これらの取組は総
合的な防衛体制の強化に資するものとなる。
また、経済安全保障、安全保障関連の技術力の向上等、サイバー安
全保障の強化に資する他の政策との連携を強化する。
さらに、同盟国・同志国等と連携した形での情報収集・分析の強化、
攻撃者の特定とその公表、国際的な枠組み・ルールの形成等のために
引き続き取り組む。
イ 海洋安全保障の推進と海上保安能力の強化
四方を海に囲まれ、世界有数の広大な管轄海域を有する海洋国家と
して、同盟国・同志国等と連携し、航行・飛行の自由や安全の確保、
法の支配を含む普遍的価値に基づく国際的な海洋秩序の維持・発展に
向けた取組を進める。具体的には、シーレーンにおける脅威に対応す
るための海洋状況監視、他国との積極的な共同訓練・演習や海外にお
ける寄港等を推進し、多国間の海洋安全保障協力を強化する。また、
海上交通の安全を確保するために、海賊対処や情報収集活動等を実施
する。
そして、これらの取組に関連する国際協力を進めつつ、南シナ海等
における航行及び上空飛行の自由の確保、国際法に基づく紛争の平和
的解決の推進、シーレーン沿岸国との関係の強化、北極海航路の利活
用等を図る。さらに、シーレーンの安定的利用の確保等のためにも、
ジブチにおける拠点を引き続き活用する。
我が国の安全保障において、海上法執行機関である海上保安庁が担
う役割は不可欠である。尖閣諸島周辺を含む我が国領域の警備を万全
にし、複数の重大事案発生時にも有効に対応していくため、我が国の
海上保安能力を大幅に強化し、体制を拡充する。具体的には、新たな
海上保安能力強化に関する方針に基づき、海上保安庁によるアセット
の増強や新たな技術の導入、十分な運航費の確保や老朽船の更新、海
上保安庁の職員の確保・育成等を速やかに図る。
また、有事の際の防衛大臣による海上保安庁に対する統制を含め、
海上保安庁と自衛隊の連携・協力を不断に強化する。
さらに、米国、東南アジア諸国等の海上法執行機関との国際的な連
携・協力も強化する。
ウ 宇宙の安全保障に関する総合的な取組の強化
経済・社会活動にとって不可欠な宇宙空間の安全かつ安定した利用
等を確保するため、宇宙の安全保障の分野での対応能力を強化する。
具体的には、自衛隊、海上保安庁等による宇宙空間の利用を強化しつ
つ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等と自衛隊の連携の強化等、
我が国全体の宇宙に関する能力を安全保障分野で活用するための施策
を進める。
また、不測の事態における政府の意思決定に関する体制の構築、宇
宙領域の把握のための体制の強化、スペースデブリへの対応の推進、
相手方の指揮統制・情報通信等を妨げる能力の整備の拡充、国際的な
行動の規範策定を含む同盟国・同志国等との連携の強化を進める。
さらに、我が国の宇宙産業を支援・育成することで、衛星コンステ
レーションの構築を含め、我が国の民間の宇宙技術を我が国の防衛に
活用する。そして、それが更に我が国の宇宙産業の発展を促すという
好循環を実現する。
このような宇宙の安全保障の分野の課題と政策を具体化させる政府
の構想を取りまとめた上で、それを宇宙基本計画等に反映させる。
エ 技術力の向上と研究開発成果の安全保障分野での積極的な活用のた
めの官民の連携の強化
最先端の科学技術は加速度的に進展し、民生用の技術と安全保障用
の技術の区別は実際には極めて困難となっている。このこと等を踏ま
え、我が国の官民の高い技術力を幅広くかつ積極的に安全保障に活用
するために、安全保障に活用可能な官民の技術力を向上させ、研究開
発等に関する資金及び情報を政府横断的に活用するための体制を強化
する。具体的には、総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究
開発の推進のため、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省
庁が有する技術シーズを合致させるとともに、当該事業を実施してい
くための政府横断的な仕組みを創設する。また、経済安全保障重要技
術育成プログラムを含む政府全体の研究開発に関する資金及びその成
果の安全保障分野への積極的な活用を進める。
さらに、先端重要技術の情報収集・開発・育成に向けた更なる支援
の強化と体制の整備を図る。
そして、民間のイノベーションを推進し、その成果を安全保障分野
において積極的に活用するため、関係者の理解と協力を得つつ、広く
アカデミアを含む最先端の研究者の参画促進等に取り組む。また、防
衛産業が他の民間のイノベーションの成果を十分に活かしていくため
の環境の整備に政府横断的に取り組む。
オ 我が国の安全保障のための情報に関する能力の強化
健全な民主主義の維持、政府の円滑な意思決定、我が国の効果的な
対外発信に密接に関連する情報の分野に関して、我が国の体制と能力
を強化する。具体的には、国際社会の動向について、外交・軍事・経
済にまたがり幅広く、正確かつ多角的に分析する能力を強化するため、
人的情報、公開情報、電波情報、画像情報等、多様な情報源に関する
情報収集能力を大幅に強化する。特に、人的情報については、その収
集のための体制の充実・強化を図る。
そして、画像情報については、情報収集衛星の機能の拡充・強化を
図るとともに、内閣衛星情報センターと防衛省・自衛隊の協力・連携
を強化するなどして、収集した情報の更なる効果的な活用を図る。
また、統合的な形での情報の集約を行うための体制を整備する。政
策部門と情報部門の連携を強化し、情報部門については、人工知能
(AI)等の新たな技術の活用も含め、政府が保有するあらゆる情報
手段を活用した総合的な分析(オール・ソース・アナリシス)により、
政策部門への高付加価値の分析結果の提供を行えるよう、情報分析能
力を強化する。
そして、経済安全保障分野における新たなセキュリティ・クリアラ
ンス制度の創設の検討に関する議論等も踏まえつつ、情報保全のため
の体制の更なる強化を図る。
また、偽情報等の拡散を含め、認知領域における情報戦への対応能
力を強化する。その観点から、外国による偽情報等に関する情報の集
約・分析、対外発信の強化、政府外の機関との連携の強化等のための
新たな体制を政府内に整備する。さらに、戦略的コミュニケーション
を関係省庁の連携を図った形で積極的に実施する。
そして、地理空間情報の安全保障面での悪用を防ぐための官民の実
効的な措置の検討を速やかに行う。
カ 有事も念頭に置いた我が国国内での対応能力の強化
我が国に直接脅威が及んだ場合も念頭に、我が国国内における幅広
い分野での対応能力を強化する。具体的には、総合的な防衛体制の強
化の一環として、自衛隊・海上保安庁による国民保護への対応、平素
の訓練、有事の際の展開等を目的とした円滑な利用・配備のため、自
衛隊・海上保安庁のニーズに基づき、空港・港湾等の公共インフラの
整備や機能を強化する政府横断的な仕組みを創設する。あわせて、有
事の際の対応も見据えた空港・港湾の平素からの利活用に関するルー
ル作り等を行う。これらの取組は、地方公共団体、住民等の協力を得
つつ、推進する。
自衛隊、米軍等の円滑な活動の確保のために、自衛隊の弾薬、燃料
等の輸送・保管の制度の整備、民間施設等の自衛隊、米軍等の使用に
関する関係者・団体との調整、安定的かつ柔軟な電波利用の確保、民
間施設等によって自衛隊の施設や活動に否定的な影響が及ばないよう
にするための措置をとる。
原子力発電所等の重要な生活関連施設の安全確保対策、国境離島へ
の不法上陸事案対策等に関し、武力攻撃事態のほか、それには至らな
い様々な態様・段階の危機にも切れ目なく的確に対処できるようにす
る。そのために、自衛隊、警察、海上保安庁等による連携枠組みを確
立するとともに、装備・体制・訓練の充実など対処能力の向上を図る。
キ 国民保護のための体制の強化
国、地方公共団体、指定公共機関等が協力して、住民を守るための
取組を進めるなど、国民保護のための体制を強化する。具体的には、
武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実
現すべく、円滑な避難に関する計画の速やかな策定、官民の輸送手段
の確保、空港・港湾等の公共インフラの整備と利用調整、様々な種類
の避難施設の確保、国際機関との連携等を行う。
また、こうした取組の実効性を高めるため、住民避難等の各種訓練
の実施と検証を行った上で、国、地方公共団体、指定公共機関等の連
携を推進しつつ、制度面を含む必要な施策の検討を行う。
さらに、全国瞬時警報システム(J-ALERT)の情報伝達機能
を不断に強化しつつ、弾道ミサイルを想定した避難行動に関する周
知・啓発に取り組む。
ク 在外邦人等の保護のための体制と施策の強化
紛争、自然災害、感染症、テロ等の脅威から在外邦人を守るための
体制と施策を強化する。具体的には、平素からの邦人に対する啓発、
時宜に適った現地危険情報の提供、退避手段の確保、関係国との連携
強化等のための取組を行う。
この関連で、在外邦人を保護する上で最も重要な拠点となる在外公
館における領事業務に関する体制と能力の強化を図る。
同時に、在外邦人等の退避等のために、必要かつ可能な場合には、
自衛隊等を迅速に活用することとし、その実現のための関係省庁間の
連携を強化する。
さらに、ジブチ政府の理解を得つつ、在外邦人等の保護に当たって
も、海賊対処のために運営されているジブチにある自衛隊の活動拠点
を活用していく。
ケ エネルギーや食料など我が国の安全保障に不可欠な資源の確保
我が国の経済・社会活動を国内外において円滑にし、また、有事の
際の我が国の持続的な対応能力等を確保するとの観点から、国民の生
活や経済・社会活動の基盤となるエネルギー安全保障、食料安全保障
等、我が国の安全保障に不可欠な資源を確保するための政策を進める。
エネルギー安全保障の確保に向けては、資源国との関係強化、供給
源の多角化、調達リスク評価の強化等の手法に加え、再生可能エネル
ギーや原子力といったエネルギー自給率向上に資するエネルギー源の
最大限の活用、そのための戦略的な開発を強化する。同盟国・同志国
や国際機関等とも連携しながら、我が国のエネルギー自給率向上に向
けた方策を強化し、有事にも耐え得る強靭なエネルギー供給体制を構
築する。
食料安全保障に関し、国際社会における食料の需給や貿易等をめぐ
る状況が不安定かつ不透明であり、食料や生産資材の多くを海外から
の輸入に依存する我が国の食料安全保障上のリスクが顕在化している
中、我が国の食料供給の構造を転換していくこと等が重要である。具
体的には、安定的な輸入と適切な備蓄を組み合わせつつ、国内で生産
できるものはできる限り国内で生産することとし、海外依存度の高い
品目や生産資材の国産化を図る。その観点から、穀物等の生産拡大、
飼料の増産、堆肥等の国内資源の利用拡大を進めるほか、国内で調達
困難なものの安定的な輸入を確保するための対策や適切な備蓄等を併
せて講ずることにより、国民への安定的な食料供給を確保し、我が国
の食料安全保障の強化を図る。
そして、国際的な食料安全保障の危機に対応するために、同盟国・
同志国や国際機関等と連携しつつ、食料供給に関する国際環境の整備、
食料生産の向上及び脆弱な国への支援等を実施していく。
⑸ 自主的な経済的繁栄を実現するための経済安全保障政策の促進
我が国の平和と安全や経済的な繁栄等の国益を経済上の措置を講じ確
保することが経済安全保障であり、経済的手段を通じた様々な脅威が存
在していることを踏まえ、我が国の自律性の向上、技術等に関する我が
国の優位性、不可欠性の確保等に向けた必要な経済施策に関する考え方
また、我が国の安全保障に直接・間接に影響を及ぼしている気候変
動、感染症、エネルギー・食料問題、環境等の地球規模課題について、
同盟国・同志国のみならず、多くの国等との協力を広げ、国際的な取
組を強化する。
感染症対策を含む国際保健が、経済・社会のみならず安全保障上の
大きなリスクを包含する国際社会の重要課題であることを十分認識し、
同盟国・同志国や国際機関等と連携し、新型コロナウイルスへの対応
の経験を踏まえ、将来の感染症危機に対する予防、備えと対応を平素
から万全にする。その際、同盟国・同志国や国際機関等と連携しつつ、
感染症危機の初期段階から、国内における確実な医療の提供や、医薬
品を含む感染症対策物資を確保できるようにしつつ、科学的知見等に
基づく感染症対応能力の強化等に取り組む。そして、感染症危機に対
応する司令塔機能の強化に取り組む。また、途上国等の感染症対応能
力強化に資する保健システムや国際的な枠組みの強化等に取り組む。
そして、より強靭、より公平で、より持続可能なユニバーサル・ヘ
ルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けた国際的な取組を主導して
いく。
近年、世界中で急速に高まっている人道支援の需要に適切に対応す
べく、迅速かつ十分な規模の人道支援を行うために必要な取組を強化
する。さらに、外国における戦争、自然災害等のために発生した避難
民を積極的に受け入れていく。
人権擁護は全ての国の基本的な責務であり、深刻な人権侵害には声
を上げると同時に、様々な国と人権保護・促進に向けた対話と協力を
重ねていく。
紛争下での女性の脆弱な立場を踏まえ、女性の人権保護・救済促進
に向けた国際的な取組を主導する。また、あらゆる分野におけるジェ
ンダー平等の実現と女性のエンパワーメントの促進のために国際的な
取組を行っていく。
我が国が国連平和維持活動(PKO)等の分野で長年貢献をしてき
た国際平和協力は、国際社会の平和と安定に資するとともに、他の要
員派遣国との連携促進及び我が国の人材の育成にも繋がるものである。
要員派遣や能力構築支援の戦略的活用を含む多様な協力について引き
続き積極的に取り組んでいく。
Ⅶ 我が国の安全保障を支えるために強化すべき国内基盤
1 経済財政基盤の強化
我が国の経済が成長できる安全保障環境を確保しつつ、経済成長が我が
国の安全保障の更なる改善を促すという安全保障と経済成長の好循環を実
現する。
また、幅広い分野において有事の際の持続的な対応能力を確保する。そ
のために、エネルギーや食料等の確保、インフラの整備、安全保障に不可
欠な部品等の安定的なサプライチェーンの構築等のための官民の連携を強
化する。
そして、我が国の経済は海外依存度が高いことから、有事の際の資源や
防衛装備品等の確保に伴う財政需要の大幅な拡大に対応するためには、国
際的な市場の信認を維持し、必要な資金を調達する財政余力が極めて重要
となる。このように我が国の安全保障の礎である経済・金融・財政の基盤
の強化に不断に取り組む。このことは、防衛力の抜本的強化を含む安全保
障政策を継続的かつ安定的に実施していく前提でもある。
2 社会的基盤の強化
平素から国民や地方公共団体・企業を含む政府内外の組織が安全保障に
対する理解と協力を深めるための取組を行う。また、諸外国やその国民に
対する敬意を表し、我が国と郷土を愛する心を養う。そして、自衛官、海
上保安官、警察官など我が国の平和と安全のために危険を顧みず職務に従
事する者の活動が社会で適切に評価されるような取組を一層進める。さら
に、これらの者の活動の基盤となる安全保障関連施設周辺の住民の理解と
協力を確保するための施策にも取り組む。
また、領土・主権に関する問題、国民保護やサイバー攻撃等の官民にま
たがる問題、自衛隊、在日米軍等の活動の現状等への理解を広げる取組を
強化する。
そして、将来の感染症危機に備えた官民の対応能力の向上、防災・減災
のための施策等を進める。
3 知的基盤の強化
安全保障における情報や技術の重要性が増しており、それらを生み出す
知的基盤の強化は、安全保障の確保に不可欠である。
そのような観点から、安全保障分野における政府と企業・学術界との実
践的な連携の強化、偽情報の拡散、サイバー攻撃等の安全保障上の問題へ
の冷静かつ正確な対応を促す官民の情報共有の促進、我が国の安全保障政
策に関する国内外での発信をより効果的なものとするための官民の連携の
強化等の施策を進める。
31
Ⅷ 本戦略の期間・評価・修正
国家安全保障戦略は、その内容が実施されて、初めて完成する。本戦略に
基づく施策は、国家安全保障会議の司令塔機能の下、戦略的かつ持続的な形
で適時適切に実施される。さらに、安全保障環境や本戦略に基づく施策の実
施状況等は、国家安全保障会議が定期的かつ体系的な評価を行う。本戦略は
おおむね10 年の期間を念頭に置き、安全保障環境等について重要な変化が見
込まれる場合には必要な修正を行う。
Ⅸ 結語
歴史の転換期において、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の下
に置かれることになった。将来の国際社会の行方を楽観視することは決して
できない。
しかし、我々がこれまで築き上げてきた世界は、これからも、活力にあふ
れる貿易・投資活動から生まれる経済的な繁栄、異なる才能の国際的な交わ
りから生まれるイノベーション、そして、新しく魅力あふれる文化を生み出
すことができる。我々は、このような希望を持ち続けるべきである。
我々は今、希望の世界か、困難と不信の世界のいずれかに進む分岐点にあ
り、そのどちらを選び取るかは、今後の我が国を含む国際社会の行動にか
かっている。我が国は、国際社会が対立する分野では、総合的な国力により、
安全保障を確保する。国際社会が協力すべき分野では、諸課題の解決に向け
て主導的かつ建設的な役割を果たし続けていく。我が国の国際社会における
このような行動は、我が国の国際的な存在感と信頼を更に高め、同志国等を
増やし、我が国を取り巻く安全保障環境を改善することに繋がる。
希望の世界か、困難と不信の世界かの分岐点に立ち、戦後最も厳しく複雑
な安全保障環境の下にあっても、安定した民主主義、確立した法の支配、成
熟した経済、豊かな文化を擁する我が国は、普遍的価値に基づく政策を掲げ、
国際秩序の強化に向けた取組を確固たる覚悟を持って主導していく。


国家防衛戦略の概要
国家防衛戦略の概要01
国家防衛戦略の概要02
国家防衛戦略の概要03
国家防衛戦略の概要04
国家防衛戦略の概要05
国家防衛戦略の概要06
国家防衛戦略の概要07
国家防衛戦略の概要08
国家防衛戦略の概要09
国家防衛戦略の概要10
国家防衛戦略の概要11
国家防衛戦略の概要12
国家防衛戦略の概要13
国家防衛戦略の概要14
国家防衛戦略の概要15
国家防衛戦略の概要16
国家防衛戦略の概要17
国家防衛戦略の概要18
国家防衛戦略の概要19

国家防衛戦略について
令和4年12月16日
国家安全保障会議決定
閣議決定
国家防衛戦略について別紙のとおり定める。
本決定は、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成30年
12月18日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に代わるものとする。


(別紙)
国 家 防 衛 戦 略
令和4年12月


目 次
Ⅰ 策定の趣旨
Ⅱ 戦略環境の変化と防衛上の課題
1 戦略環境の変化
2 我が国周辺国等の軍事動向
3 防衛上の課題
Ⅲ 我が国の防衛の基本方針
1 我が国自身の防衛体制の強化
⑴ 我が国の防衛力の抜本的強化
⑵ 国全体の防衛体制の強化
2 日米同盟による共同抑止・対処
⑴ 日米共同の抑止力・対処力の強化
⑵ 同盟調整機能の強化
⑶ 共同対処基盤の強化
⑷ 在日米軍の駐留を支えるための取組
3 同志国等との連携
Ⅳ 防衛力の抜本的強化に当たって重視する能力
1 スタンド・オフ防衛能力
2 統合防空ミサイル防衛能力
3 無人アセット防衛能力
4 領域横断作戦能力
5 指揮統制・情報関連機能
6 機動展開能力・国民保護
7 持続性・強靱性
Ⅴ 将来の自衛隊の在り方
1 7つの重視分野における自衛隊の役割
2 自衛隊の体制整備の考え方
3 政策立案機能の強化
Ⅵ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組
1 国民の生命・身体・財産の保護に向けた取組
2 国際的な安全保障協力への取組
Ⅶ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
1 防衛生産基盤の強化
2 防衛技術基盤の強化
3 防衛装備移転の推進
Ⅷ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
1 人的基盤の強化
2 衛生機能の変革
Ⅸ 留意事項


Ⅰ 策定の趣旨
 国民の命と平和な暮らし、そして、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜く。

 これは我が国政府の最も重大な責務であり、安全保障の根幹である。戦後、我が国は、東西冷戦とその終結後の安全保障環境の大きな変化の中にあっても、我が国自身の外交力、防衛力等を強化し、日米同盟を基軸として、各国との協力を拡大・深化させ、77年もの間、我が国の平和と安全を守ってきた。また、その際、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を堅持してきた。今後とも、我が国は、こうした基本方針の下で、平和国家としての歩みを決して変えることはない。

 我が国を含む国際社会は、今、ロシアによるウクライナ侵略が示すように、深刻な挑戦を受け、新たな危機に突入している。中国は東シナ海、南シナ海において、力による一方的な現状変更やその試みを推し進め、北朝鮮はかつてない高い頻度で弾道ミサイルを発射し、核の更なる小型化を追求するなど行動をエスカレートさせ、ロシアもウクライナ侵略を行うとともに、極東地域での軍事活動を活発化させている。今後、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されない。我が国は、こうした動きの最前線に位置しており、我が国の今後の安全保障・防衛政策の在り方が地域と国際社会の平和と安定に直結すると言っても過言ではない。

 国際連合安全保障理事会(以下「国連安保理」という。)常任理事国であるロシアがウクライナへの侵略を行った事実は、自らの主権と独立の維持は我が国自身の主体的、自主的な努力があって初めて実現するものであり、他国の侵略を招かないためには自らが果たし得る役割の拡大が重要であることを教えている。また、今や、どの国も一国では自国の安全を守ることはできない。戦後の国際秩序への挑戦が続く中、我が国は普遍的価値と戦略的利益等を共有する同盟国・同志国等と協力・連携を深めていくことが不可欠である。この協力・連携が大きな成果を収めるためには、我が国自身の努力を従来にも増して強化することが必要であり、同盟国・同志国等も我が国が国力にふさわしい役割を果たすことを期待している。我が国と、同盟国・同志国等が共通の努力を行い、更なる相乗効果を発揮することで、力による一方的な現状変更やその試みを許さないことが求められている。

 戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、その厳しい現実に正面から向き合って、相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化を行う必要がある。こうした防衛力の抜本的強化とともに国力を総合した国全体の防衛体制の強化を、戦略的発想を持って一体として実施することこそが、我が国の抑止力を高め、日米同盟をより一層強化していく道であり、また、同志国等との安全保障協力の礎となるものである。

 特に、本年、米国は、新たな国家防衛戦略を策定したところであり、地域の平和と安定に大きな責任を有する日米両国がそれぞれの戦略を擦り合わせ、防衛協力を統合的に進めていくことは時宜にかなう。

 こうした認識の下、政府は、1976年以降6回策定してきた自衛隊を中核とした防衛力の整備、維持及び運用の基本的指針である防衛計画の大綱に代わって、我が国の防衛目標、防衛目標を達成するためのアプローチ及びその手段を包括的に示すため、「国家防衛戦略」を策定する。

 今般、本戦略及び「防衛力整備計画」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)において、政府が決定した防衛力の抜本的強化とそれを裏付ける防衛力整備の水準についての方針は、戦後の防衛政策の大きな転換点となるものである。中長期的な防衛力強化の方向性と内容を示す本戦略の策定により、こうした大きな転換点の意義について、国民の理解が深まるよう政府として努力していく。


Ⅱ 戦略環境の変化と防衛上の課題
1 戦略環境の変化
 情報化社会の進展や国際貿易の拡大等に伴い、国家間の経済や文化を巡る関係が一層拡大・深化する一方、普遍的価値やそれに基づく政治・経済体制を共有しない国家が勢力を拡大している。また、力による一方的な現状変更やその試みは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する深刻な挑戦であり、ロシアによるウクライナ侵略は、最も苛烈な形でこれを顕在化させている。国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しつつある。

 また、グローバルなパワーバランスが大きく変化し、政治・経済・軍事等にわたる国家間の競争が顕在化している。特に、インド太平洋地域においては、こうした傾向が顕著であり、その中で中国が力による一方的な現状変更やその試みを継続・強化している。また、中国のみならず、北朝鮮やロシアが、これまで以上に行動を活発化させている。

 特に、中国と米国の国家間競争は、様々な分野で今後も激しさを増していくと思われるが、そのような中、米国は、中国との競争において今後の10年が決定的なものになるとの認識を示している。

 さらに、科学技術の急速な進展が安全保障の在り方を根本的に変化させ、各国は将来の戦闘様相を一変させる、いわゆるゲーム・チェンジャーとなり得る先端技術の開発を行っている。その中でも中国は「軍民融合発展戦略」の名の下に、技術のイノベーションの活発化と軍事への応用を急速に推進しており、特に人工知能(AI)を活用した無人アセット等を前提とした軍事力の強化を加速させている。こうした動向によって従来の軍隊の構造や戦い方に根本的な変化が生じている。

 加えて、サイバー領域等におけるリスクの深刻化、偽情報の拡散を含む情報戦の展開、気候変動等のグローバルな安全保障上の課題も存在する。

2 我が国周辺国等の軍事動向
 中国は、2017年の中国共産党全国代表大会(以下「党大会」という。)での報告において、2035年までに「国防と軍隊の現代化を基本的に実現」した上で、今世紀半ばに「世界一流の軍隊」を築き上げることを目標に掲げ、2020年の第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)では、2027年には「建軍100年の奮闘目標」を達成することを目標に加えた。2022年の党大会における報告においては、「世界一流の軍隊」を早期に構築することが「社会主義現代化国家」の全面的建設の戦略的要請であることが新たに明記され、そうした目標の下、「新型挙国体制」を掲げ、「機械化・情報化・智能化」の融合発展を推進し、軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している。その上で、中国は、今後5年が自らの目指す「社会主義現代化国家」の全面的建設をスタートさせる肝心な時期と位置付けている。

 中国の公表国防費は、1998年度に我が国の防衛関係費を上回って以降、急速なペースで増加しており、2022年度には我が国の防衛関係費の約4.8倍に達している。また、中国の公表国防費は、実際に軍事目的に支出している額の一部に過ぎないとみられ、国防費の急速な増加を背景に、中国は、我が国を上回る数の近代的な海上・航空アセットを保持するに至っており、さらに、宇宙・サイバー等の新たな領域における能力も強化している。核戦力については、2020年代末までに少なくとも1,000発の運搬可能な核弾頭の保有を企図している可能性が高いとみられる。ミサイル戦力については、中距離核戦力(INF)全廃条約の枠組みの外にあった中国は、周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を阻害する軍事能力(いわゆる「接近阻止/領域拒否」(「A2/AD」)能力)の強化等の観点から、同条約が規制していた地上発射型中距離ミサイルを多数配備しつつ、対艦弾道ミサイルや長射程対地巡航ミサイルの戦力化及び極超音速滑空兵器(HGV)の開発・配備等を進めている。また、無人アセットの開発・配備を進めているとみられ、無人アセットの我が国周辺における活動の活発化も確認されている。

 このような軍事力を背景として、中国は、尖閣諸島周辺を始めとする東シナ海、日本海、さらには伊豆・小笠原諸島周辺を含む西太平洋等、いわゆる第一列島線を越え、第二列島線に及ぶ我が国周辺全体での活動を活発化させるとともに、台湾に対する軍事的圧力を高め、さらに、南シナ海での軍事拠点化等を推し進めている。

 特に、我が国周辺においては、中国海軍艦艇が、尖閣諸島周辺海域での活動を活発化させており、そうした状況の下、中国海警局に所属する船舶が尖閣諸島周辺の我が国領海への侵入を繰り返している。また、中国海軍艦艇が南西諸島周辺の我が国領海や接続水域を航行する例がみられている。

 中国は、台湾に関して、2022年の党大会における報告で「最大の誠意と努力を尽くして平和的統一の実現を目指すが、決して武力行使の放棄を約束しない」と改めて表明した。同時に、「両岸関係の主導権と主動権をしっかり握った」「祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」とも表明した。近年、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に急速に傾斜する形で変化しているが、そうした中、中国は、台湾周辺での軍事活動を活発化させてきている。中国は、台湾周辺での一連の活動を通じ、中国軍が常態的に活動している状況の既成事実化を図るとともに、実戦能力の向上を企図しているとみられる。さらに、中国は、2022年8月4日に我が国の排他的経済水域(EEZ)内への5発の着弾を含む計9発の弾道ミサイルの発射を行った。このことは、地域住民に脅威と受け止められた。このように、台湾周辺における威圧的な軍事活動を活発化させており、台湾海峡の平和と安定については、我が国を含むインド太平洋地域のみならず、国際社会全体において急速に懸念が高まっている。

 このような中国の対外的な姿勢や軍事動向等は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、我が国の防衛力を含む総合的な国力と同盟国・同志国等との協力・連携により対応すべきものである。

 北朝鮮は体制を維持するため、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の増強に集中的に取り組んでおり、技術的には我が国を射程に収める弾道ミサイルに核兵器を搭載し、我が国を攻撃する能力を既に保有しているものとみられる。大量破壊兵器の運搬手段である弾道ミサイルについては、その発射の態様を多様化させるなどして、関連技術・運用能力を急速に向上させており、特に近年、低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルの実用化を追求し、これらを発射台付き車両(TEL)、潜水艦、鉄道といった様々なプラットフォームから発射することで、発射の兆候把握・探知・迎撃を困難にすることを企図しているとみられる。また、「極超音速滑空飛行弾頭」、米国本土を射程に含む「固体燃料推進式大陸間弾道ミサイル(ICBM)」等の実現を優先課題に掲げて研究開発を進めているとみられ、今後の技術進展が懸念される。このような北朝鮮の核・弾道ミサイル開発等は、累次の国連安保理決議等に違反するものであり、地域と国際社会の平和と安全を著しく損なっている。こうした軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっている。

 ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがすものであり、欧州方面における防衛上の最も重大かつ直接の脅威と受け止められている。また、我が国周辺においても北方領土を含む極東地域において、ロシア軍は新型装備の配備や、大規模な軍事演習の実施等、軍事活動を活発化させている。さらに、近年は中国と共に、艦艇の共同航行や爆撃機の共同飛行を実施するなど、軍事面での連携を強化している。こうしたロシアの軍事動向は、我が国を含むインド太平洋地域において、中国との戦略的な連携と相まって防衛上の強い懸念である。

 さらに、今後、インド太平洋地域において、こうした活動が同時に行われる場合には、それが地域にどのような影響を及ぼすかについて注視していく必要がある。

3 防衛上の課題
 国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を負う国連安保理常任理事国であり、核兵器国でもあるロシアが、ウクライナを公然と侵略し、核兵器による威嚇ともとれる言動を繰り返す、前代未聞といえる事態が生起している。これは戦後国際社会が築いてきた国際秩序の根幹を揺るがすものであり、こうした欧州で起きている力による一方的な現状変更は、インド太平洋地域でも生起し得る。

 ロシアがウクライナを侵略するに至った軍事的な背景としては、ウクライナのロシアに対する防衛力が十分ではなく、ロシアによる侵略を思いとどまらせ、抑止できなかった、つまり、十分な能力を保有していなかったことにある。

 また、どの国も一国では自国の安全を守ることはできない中、外部からの侵攻を抑止するためには、共同して侵攻に対処する意思と能力を持つ同盟国との協力の重要性が再認識されている。

 さらに、高い軍事力を持つ国が、あるとき侵略という意思を持ったことにも注目すべきである。脅威は能力と意思の組み合わせで顕在化するところ、意思を外部から正確に把握することには困難が伴う。国家の意思決定過程が不透明であれば、脅威が顕在化する素地が常に存在する。

 このような国から自国を守るためには、力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要であり、相手の能力に着目した自らの能力、すなわち防衛力を構築し、相手に侵略する意思を抱かせないようにする必要がある。

 戦い方も、従来のそれとは様相が大きく変化してきている。これまでの航空侵攻・海上侵攻・着上陸侵攻といった伝統的なものに加えて、精密打撃能力が向上した弾道・巡航ミサイルによる大規模なミサイル攻撃、偽旗作戦を始めとする情報戦を含むハイブリッド戦の展開、宇宙・サイバー・電磁波の領域や無人アセットを用いた非対称的な攻撃、核保有国が公然と行う核兵器による威嚇ともとれる言動等を組み合わせた新しい戦い方が顕在化している。こうした新しい戦い方に対応できるかどうかが、今後の防衛力を構築する上で大きな課題となっている。

 海に囲まれ長大な海岸線を持つ我が国は、本土から離れた多くの島嶼及び広大なEEZ・大陸棚を有しており、そこに広く存在する国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空及び各種資源を守り抜くことが課題である。また、海洋国家であり、資源や食料の多くを海外との貿易に依存する我が国にとって、自由で開かれた海洋秩序を強化し、航行・飛行の自由や安全を確保することは必要不可欠である。

 一方、我が国は、大きな被害を伴う自然災害が多発することに加え、都市部に産業・人口・情報基盤が集中するとともに、沿岸部に原子力発電所等の重要施設が多数存在しており、様々な脅威から、国民と重要施設を防護することも課題となっている。

 これらに加えて、我が国においては、人口減少と少子高齢化が急速に進展しているとともに、厳しい財政状況が続いていることを踏まえれば、予算・人員をこれまで以上に効率的に活用することが必要不可欠である。



Ⅲ 我が国の防衛の基本方針
 我が国の防衛の根幹である防衛力は、我が国の安全保障を確保するための最終的な担保であり、我が国に脅威が及ぶことを抑止するとともに、脅威が及ぶ場合には、これを阻止・排除し、我が国を守り抜くという意思と能力を表すものである。

 この防衛力については、我が国は戦後一貫して節度ある効率的な整備を行うものとしてきた。特に、1976年の「防衛計画の大綱について」(昭和51年10月29日国防会議決定及び閣議決定)策定以来、我が国が防衛力を保持する意義は、特定の脅威に対抗するというよりも、我が国自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないことにあるとされてきた。

 冷戦終結後、自衛隊の役割と任務は、国内外での大規模災害等への対応や国際平和協力活動等に拡大され、様々な事態に対応するものとされた。また、2010年の「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成22年12月17日安全保障会議決定及び閣議決定)では防衛力の存在自体による抑止効果を重視した「基盤的防衛力構想」によらないこととされ、さらに、2013年の「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成25年12月17日国家安全保障会議決定及び閣議決定)では、厳しさを増す安全保障環境を現実のものとして見据え、真に実効的な防衛力を構築することとし、防衛力を強化してきた。しかしながら、我が国周辺国等は、その後も、軍事的な能力の大幅な強化に加え、ミサイル発射や軍事的示威活動を急速に拡大・活発化させており、我が国と地域の安全保障を脅かしている。

 今後、こうした活動のエスカレーションに伴って、いついかなる形で意思が変わり、力による一方的な現状変更が起こるのか予測が極めて困難な状況にある。一旦、力による一方的な現状変更が起こると、極めて甚大な人的・物的被害が発生するとともに、地域のみならず世界の経済・金融・エネルギー・海上交通・航空交通等が混乱し、人々の日常生活に大きな影響を与えることは、ロシアによるウクライナ侵略から明らかである。

 このようなことから、今後の防衛力については、相手の能力と戦い方に着目して、我が国を防衛する能力をこれまで以上に抜本的に強化するとともに、新たな戦い方への対応を推進し、いついかなるときも力による一方的な現状変更やその試みは決して許さないとの意思を明確にしていく必要がある。こうした努力は、我が国一国でなし得るものではなく、同盟国・同志国等と緊密に協力・連携して実施していく必要がある。このため、本戦略において、我が国の防衛目標を明確にした上で、防衛目標を達成するためのアプローチと具体的な手段を示し、あらゆる努力を統合して実施していく必要がある。

○ 我が国の防衛目標は以下のとおり。
 第一の目標は、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出することである。

 第二の目標は、我が国の平和と安全に関わる力による一方的な現状変更やその試みについて、我が国として、同盟国・同志国等と協力・連携して抑止することである。また、これが生起した場合でも、我が国への侵攻につながらないように、あらゆる方法により、これに即応して行動し、早期に事態を収拾することである。

 第三の目標は、万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合には、その態様に応じてシームレスに即応し、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除することである。

 また、核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠であり、第一から第三までの防衛目標を達成するための我が国自身の努力と、米国の拡大抑止等が相まって、あらゆる事態から我が国を守り抜く。

○ 防衛目標を実現するためのアプローチは以下のとおりであり、それぞれのアプローチの中で具体的な手段を示すものとする。
 第一のアプローチは、我が国自身の防衛体制の強化として、我が国の防衛の中核となる防衛力を抜本的に強化するとともに、国全体の防衛体制を強化することである。

 第二のアプローチは、同盟国である米国との協力を一層強化することにより、日米同盟の抑止力と対処力を更に強化することである。

 第三のアプローチは、自由で開かれた国際秩序の維持・強化のために協力する同志国等との連携を強化することである。

1 我が国自身の防衛体制の強化
 我が国を守り抜くのは我が国自身の努力にかかっていることは言うまでもない。自らの国は自らが守るという強い意思と努力があって初めて、いざというときに同盟国等と共に守り合い、助け合うことができる。このため、第一のアプローチとして、防衛力の抜本的強化を中核として、国力を統合した我が国自身の防衛体制を今まで以上に強化していく。

我が国の防衛力の抜本的強化
 我が国の安全保障を最終的に担保する防衛力については、これまで、想定される各種事態に真に実効的に対処し、抑止できるものを目指してきた。具体的には、2018年の「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成30年12月18日国家安全保障会議決定及び閣議決定)において、平時から有事までのあらゆる段階における活動をシームレスに実施できるよう、宇宙・サイバー・電磁波の領域と陸・海・空の領域を有機的に融合させつつ、統合運用により機動的・持続的な活動を行い得る多次元統合防衛力を構築してきた。
 国際社会が戦後最大の試練の時を迎える中で、相手の能力と新しい戦い方を踏まえ、想定される各種事態への対応について、能力評価等を通じた分析により将来の防衛力の在り方を検討してきた。こうしたことも踏まえつつ、力による一方的な現状変更やその試みから、今後も国民の命と平和な暮らしを守っていくため、これまでの多次元統合防衛力を抜本的に強化し、その努力を更に加速して進めていく。
 防衛力の抜本的強化の基本的考え方は以下のとおりである。
 まず、抜本的に強化された防衛力は、防衛目標である我が国自体への侵攻を我が国が主たる責任をもって阻止・排除し得る能力でなくてはならない。これは相手にとって軍事的手段では我が国侵攻の目標を達成できず、生じる損害というコストに見合わないと認識させ得るだけの能力を我が国が持つことを意味する。さらに、我が国に対する侵攻を阻止・排除できる防衛力を我が国が保有できれば、同盟国たる米国の能力と相まって、我が国への侵攻のみならず、インド太平洋地域における力による一方的な現状変更やその試みを抑止でき、ひいてはそれを許容しない安全保障環境を創出することにつながる。
 さらに、抜本的に強化された防衛力は、我が国への侵攻を抑止できるよう、常続的な情報収集・警戒監視・偵察(ISR)や事態に応じて柔軟に選択される抑止措置(FDO)としての訓練・演習等に加え、対領空侵犯措置等を行い、かつ事態にシームレスに即応・対処できる能力でなければならない。
 これを実現するためには、部隊の活動量が増える中であっても、自衛隊員の能力や部隊の練度向上に必要な訓練・演習等を十分に実施できるよう、内外に訓練基盤を確保し、柔軟な勤務態勢を構築すること等により、高い即応性・対処力を保持した防衛力を構築する必要がある。
 次に、抜本的に強化された防衛力は新しい戦い方に対応できるものでなくてはならない。領域横断作戦、情報戦を含むハイブリッド戦、ミサイルに対する迎撃と反撃といった多様な任務を統合し、米国と共同して実施していく必要がある。このため、国家安全保障戦略、本戦略及び防衛力整備計画に示された方針、さらにこれらと整合された統合的な運用構想により、我が国の防衛上必要な機能・能力を導き、その能力を陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊のいずれが保有すべきかを決めていく。
 上記ウの我が国の防衛上必要な機能・能力として、まず、我が国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるようにする必要がある。このため、「スタンド・オフ防衛能力」と「統合防空ミサイル防衛能力」を強化する。
 また、万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合には、これらの能力に加え、有人アセット、さらに無人アセットを駆使するとともに、水中・海上・空中といった領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保できるようにする必要がある。このため、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」を強化する。
 さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させられるようにする必要がある。このため、「機動展開能力・国民保護」、「持続性・強靱性」を強化する。
 このような防衛力の抜本的強化は、いついかなる形で力による一方的な現状変更が生起するか予測困難であることから、速やかに実現していく必要がある。
 具体的には、5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。さらに、おおむね10年後までに、この防衛目標をより確実にするため更なる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する。
 今後5年間の最優先課題は、現有装備品を最大限有効に活用するため、可動率向上や弾薬・燃料の確保、主要な防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、将来の中核となる能力を強化することである。
 この防衛力の構築は、刻々と変化する我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、不断に見直し、その変化に適応していくものとする。
 この防衛力の抜本的強化には大幅な経費と相応の人員の増加が必要となるが、防衛力の抜本的強化の実現に資する形で、スクラップ・アンド・ビルドを徹底して、自衛隊の組織定員と装備の最適化を実施するとともに、効率的な調達等を進めて大幅なコスト縮減を実現してきたこれまでの努力を、防衛生産基盤に配意しつつ、更に継続・強化していく。あわせて、人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。
 以上の防衛力の抜本的強化の目的は、あくまで力による一方的な現状変更やその試みを許さず、我が国への侵攻を抑止することにある。
 我が国が自らの防衛力を抜本的に強化することによって、日米同盟の抑止力・対処力が更に強化され、同志国等との連携が強化される。そのことにより、我が国の意思と能力を相手にしっかりと認識させ、我が国を過小評価させず、相手方にその能力を過大評価させないことにより我が国への侵攻を抑止する。それが我が国の防衛力の抜本的強化の目的である。
 我が国への侵攻を抑止する上で鍵となるのは、スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力である。
 近年、我が国周辺では、極超音速兵器等のミサイル関連技術と飽和攻撃など実戦的なミサイル運用能力が飛躍的に向上し、質・量ともにミサイル戦力が著しく増強される中、ミサイルの発射も繰り返されており、我が国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっている。
 こうした中、今後も、変則的な軌道で飛翔するミサイル等に対応し得る技術開発を行うなど、ミサイル防衛能力を質・量ともに不断に強化していく。
 しかしながら、弾道ミサイル防衛という手段だけに依拠し続けた場合、今後、この脅威に対し、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある。
 このため、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要がある。
 この反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力をいう。
 こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止する。その上で、万一、相手からミサイルが発射される際にも、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、反撃能力により相手からの更なる武力攻撃を防ぎ、国民の命と平和な暮らしを守っていく。
 この反撃能力については、1956年2月29日に政府見解として、憲法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」としたものの、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力に当たるものである。
 この政府見解は、2015年の平和安全法制に際して示された武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるものであり、今般保有することとする能力は、この考え方の下で上記三要件を満たす場合に行使し得るものである。
 この反撃能力は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないことはいうまでもない。
 また、日米の基本的な役割分担は今後も変更はないが、我が国が反撃能力を保有することに伴い、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していくこととする。
国全体の防衛体制の強化
 我が国を守るためには自衛隊が強くなければならないが、我が国全体で連携しなければ、我が国を守ることはできないことも自明である。このため、防衛力を抜本的に強化することに加えて、我が国が持てる力、すなわち、外交力、情報力、経済力、技術力を含めた国力を統合して、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせて国全体の防衛体制を構築していく。その際、政府一体となった取組を強化していくため、政府内の縦割りを打破していくことが不可欠である。こうした観点から、防衛力の抜本的強化を補完する不可分一体の取組として、我が国の国力を結集した総合的な防衛体制を強化する。また、政府と地方公共団体、民間団体等との協力を推進する。
 力による一方的な現状変更を許さない取組において重要なのは、我が国自身の防衛体制の強化に裏付けられた外交努力である。我が国として、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)というビジョンの推進等を通じて力強い外交を推進することにより、平和で安定し予見可能性が高い国際環境を能動的に創出し、力による一方的な現状変更を未然に防ぐとともに、我が国の平和と安全、地域と国際社会の平和と安定及び繁栄を確保していく。
 このような外交努力と相まって、防衛省・自衛隊においては、同盟国との協力及び同志国等との多層的な連携を推進し、望ましい安全保障環境の創出に取り組んでいくこととする。また、力による一方的な現状変更やその試みを抑止するとの意思と能力を示し続け、相手の行動に影響を与えるために、FDOとしての訓練・演習等や、戦略的コミュニケーション(SC)を、政府一体となって、また同盟国・同志国等と共に充実・強化していく必要がある。
 平素からの常続的なISR及び分析を関係省庁が連携して実施することにより、事態の兆候を早期に把握するとともに、事態に応じて政府全体で迅速な意思決定を行い、関係機関が連携していくことが重要である。その際、認知領域を含む情報戦について、偽情報の流布等に対応したファクト・チェック機能やカウンター発信機能等を強化し、有事はもとより、平素から、政府全体での対応を強化していく。
 政府全体の意思決定に基づき、関係機関が連携して行動することにより、力による一方的な現状変更を許さないことが重要である。このため、平素から政府全体として、連携要領を確立しつつ、シミュレーションや統合的な訓練・演習を行い、対処の実効性を向上させる。特に、原子力発電所等の重要施設の防護、離島の周辺地域等における外部からの武力攻撃に至らない侵害や武力攻撃事態への対応については、有事を念頭に平素から警察や海上保安庁と自衛隊との間で訓練や演習を実施し、特に武力攻撃事態における防衛大臣による海上保安庁の統制要領を含め、必要な連携要領を確立する。
 宇宙・サイバー・電磁波の領域は、国民生活にとっての基幹インフラであるとともに、我が国の防衛にとっても領域横断作戦を遂行する上で死活的に重要であることから、政府全体でその能力を強化していく。
 宇宙空間については、情報収集、通信、測位等の目的での安定的な利用を確保することは国民生活と防衛の双方にとって死活的に重要であり、防衛省・自衛隊においては、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を含めた関係機関や民間事業者との間で、研究開発を含めた協力・連携を強化することとする。その際、民生技術の防衛分野への一層の活用を図ることで、民間における技術開発への投資を促進し、我が国全体としての宇宙空間における能力の向上につなげる。
 サイバー領域においては、諸外国や関係省庁及び民間事業者との連携により、平素から有事までのあらゆる段階において、情報収集及び共有を図るとともに、我が国全体としてのサイバー安全保障分野での対応能力の強化を図ることが重要である。政府全体において、サイバー安全保障分野の政策が一元的に総合調整されていくことを踏まえ、防衛省・自衛隊においては、自らのサイバーセキュリティのレベルを高めつつ、関係省庁、重要インフラ事業者及び防衛産業との連携強化に資する取組を推進することとする。
 電磁波領域については、陸・海・空、宇宙、サイバー領域に至るまで、活用範囲や用途が拡大し、現在の戦闘様相における攻防の最前線となっている。このため、電磁波領域における優勢を確保することが抑止力の強化や領域横断作戦の実現のために極めて重要である。民生用の周波数利用と自衛隊の指揮統制や情報収集活動等のための周波数利用を両立させ、自衛隊が安定的かつ柔軟な電波利用を確保できるよう、関係省庁と緊密に連携する。
 先進的な技術に裏付けられた新しい戦い方が勝敗を決する時代において、先端技術を防衛目的で活用することが死活的に重要となっている。
 この際、総合的な防衛体制の強化のための府省横断的な仕組みの下、防衛省・自衛隊のニーズを踏まえ、政府関係機関が行っている先端技術の研究開発を防衛目的に活用していく。また、防衛産業を活用しつつ、スタートアップ等各種企業、各種研究機関の研究開発の成果を早期の実装化につなげていく取組を実施することとする。
 国民の命を守りながら我が国への侵攻に対処し、また、大規模災害を含む各種事態に対処するに当たっては、国の行政機関、地方公共団体、公共機関、民間事業者が協力・連携して統合的に取り組む必要がある。
 まず、防衛上のニーズを踏まえ、総合的な防衛体制の強化のための府省横断的な仕組みの下、特に南西地域における空港・港湾等を整備・強化するとともに、既存の空港・港湾等を運用基盤として、平素からの訓練を含めて使用するために、関係省庁間で調整する枠組みの構築等、必要な措置を講ずる。
 また、自衛隊の機動展開のための民間船舶・民間航空機の利用拡大について関係機関等との連携を深めるとともに、当該船舶・航空機を利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整・協力する。加えて、防衛省・自衛隊においては、政府全体で実施する武力攻撃事態等を念頭に置いた国民保護訓練の強化、弾道ミサイル等による攻撃を受ける事態に備えた全国瞬時警報システム(J-ALERT)の情報伝達機能の強化等に協力していくこととする。
 さらに、海空域や電波を円滑に利用し、防衛関連施設の機能を十全に発揮できるよう、風力発電施設の設置等の社会経済活動との調和を図る効果的な仕組みを確立する。
 あわせて、自衛隊の弾薬・燃料等の輸送・保管について、関係省庁との連携を強化し、更なる円滑化のための措置を講ずる。
 各種事態において日米共同対処を円滑に実施するため、これらと同様の取組を推進する。
 海洋国家である我が国にとって、海洋の秩序を強化し、航行・飛行の自由や安全を確保することは、我が国の平和と安全にとって極めて重要である。このため、我が国の領海等における国益や我が国の重要なシーレーンの安定的利用の確保等に取り組んでいく。
 まず、防衛省・自衛隊においては、我が国における海洋の安全保障の担い手である海上保安庁と緊密に協力・連携しつつ、同盟国・同志国、さらにインド太平洋地域の沿岸国と共に、FOIPというビジョンの下、海洋安全保障に関する協力を推進していくこととする。
 また、シーレーンの安定的利用を確保するために、関係機関との協力・連携の下、海賊対処や日本関係船舶の安全確保に必要な取組を実施していく。この際、ジブチにおける拠点を長期的・安定的に活用する。
 自衛隊及び在日米軍が、平素からシームレスかつ効果的に活動できるよう、自衛隊施設及び米軍施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力をこれまで以上に獲得していく。日頃から防衛省・自衛隊の政策や活動、さらには、在日米軍の役割に関する積極的な広報を行い、地元に対する説明責任を果たしながら、地元の要望や情勢に応じた調整を実施する。同時に、騒音等への対策を含む防衛施設周辺対策事業についても、我が国の防衛への協力促進という観点も踏まえ、引き続き推進する。
 また、地方によっては、自衛隊の部隊による急患輸送や存在そのものが地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献していることを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配備・運営に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性や地元経済への寄与に配慮する。
2 日米同盟による共同抑止・対処
 第二のアプローチは、日米同盟の更なる強化である。米国との同盟関係は、我が国の安全保障政策の基軸であり、我が国の防衛力の抜本的強化は、米国の能力のより効果的な発揮にも繋がり、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するものとなる。日米は、こうした共同の意思と能力を顕示することにより、グレーゾーンから通常戦力による侵攻、さらに核兵器の使用に至るまでの事態の深刻化を防ぎ、力による一方的な現状変更やその試みを抑止する。その上で、我が国への侵攻が生起した場合には、日米共同対処によりこれを阻止する。このため、日米両国は、その戦略を整合させ、共に目標を優先付けることにより、同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する。その際、我が国は、我が国自身の防衛力の抜本的強化を踏まえて、日米同盟の下で、我が国の防衛と地域の平和及び安定のため、より大きな役割を果たしていく。具体的には、以下の施策に取り組んでいく。

 日米共同の抑止力・対処力の強化
 我が国の防衛戦略と米国の国防戦略は、あらゆるアプローチと手段を統合させて、力による一方的な現状変更を起こさせないことを最優先とする点で軌を一にしている。これを踏まえ、即応性・抗たん性を強化し、相手にコストを強要し、我が国への侵攻を抑止する観点から、それぞれの役割・任務・能力に関する議論をより深化させ、日米共同の統合的な抑止力をより一層強化していく。
 具体的には、日米共同による宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦を円滑に実施するための協力及び相互運用性を高めるための取組を一層深化させる。あわせて、我が国の反撃能力については、情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築する。さらに、今後、防空、対水上戦、対潜水艦戦、機雷戦、水陸両用作戦、空挺作戦、情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)、アセットや施設の防護、後方支援等における連携の強化を図る。また、我が国の防衛力の抜本的強化を踏まえた日米間の役割・任務分担を効果的に実現するため、日米共同計画に係る作業等を通じ、運用面における緊密な連携を確保する。加えて、より高度かつ実践的な演習・訓練を通じて同盟の即応性や相互運用性を始めとする対処力の向上を図っていく。
 さらに、核抑止力を中心とした米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保するため、日米間の協議を閣僚レベルのものも含めて一層活発化・深化させる。
 力による一方的な現状変更やその試み、さらには各種事態の生起を抑止するため、平素からの日米共同による取組として、共同FDOや共同ISR等をさらに拡大・深化させる。その際には、これを効果的に実現するため、同志国等の参画や自衛隊による米軍艦艇・航空機等の防護といった取組を積極的に実施する。
 さらに、日米一体となった抑止力・対処力の強化の一環として、日頃から、双方の施設等の共同使用の増加、訓練等を通じた日米の部隊の双方の施設等への展開等を進める。
 同盟調整機能の強化
 いついかなる事態が生起したとしても、日米両国による整合的な共同対処を行うため、同盟調整メカニズム(ACM)を中心とする日米間の調整機能をさらに発展させる。
 これらに加え、日米同盟を中核とする同志国等との連携を強化するため、ACM等を活用し、運用面におけるより緊密な調整を実現する。
 共同対処基盤の強化
 あらゆる段階における日米共同での実効的な対処を支える基盤を強化する。
 まず、日米がその能力を十分に発揮できるよう、あらゆるレベルにおける情報共有を更に強化するために、情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組を抜本的に強化する。また、同盟の技術的優位性、相互運用性、即応性、さらには継戦能力を確保するため、先端技術に関する共同分析や共同研究、装備品の共同開発・生産、相互互換性の向上、各種ネットワークの共有及び強化、米国製装備品の国内における生産・整備能力の拡充、サプライチェーンの強化に係る取組等、装備・技術協力を一層強化する。
 在日米軍の駐留を支えるための取組
 厳しい安全保障環境に対応する、日米共同の態勢の最適化を図りつつ、在日米軍再編の着実な進展や在日米軍の即応性・抗たん性強化を支援する取組等、在日米軍の駐留を安定的に支えるための各種施策を推進する。
 特に、安全保障上極めて重要な位置にある沖縄においては、一層厳しさを増す安全保障環境に対応しつつ、普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設・区域の整理・統合・縮小、部隊や訓練の移転等を着実に実施することにより、負担軽減を図っていく。
 以上のような日米共同の取組を円滑かつ効果的に実施するためには、国民の理解が不可欠であり、その意義・必要性を積極的に発信するなどの取組を強化する。
3 同志国等との連携
 第三のアプローチは、同志国等との連携の強化である。力による一方的な現状変更やその試みに対抗し、我が国の安全保障を確保するためには、同盟国のみならず、一か国でも多くの国々と連携を強化することが極めて重要である。その観点から、FOIPというビジョンの実現に資する取組を進めていく。
 まずは、日米同盟を重要な基軸と位置付けつつ、地域の特性や各国の事情を考慮した上で、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進していく。その際、同志国等との連携強化を効果的に進める観点から、円滑化協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、防衛装備品・技術移転協定等の制度的枠組みの整備を更に推進する。
 オーストラリアとの間では、インド太平洋地域の「特別な戦略的パートナー」として新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」で方向付けたとおり、日米防衛協力に次ぐ緊密な協力関係を構築し、外務・防衛閣僚級協議(「2+2」)を含む各レベルでの協議、共同訓練、防衛装備・技術協力等を深化させる。また、RAA等の整備を踏まえ、オーストラリアにおける訓練の実施やローテーション展開等を図り、事態生起時には、我が国、米国及びオーストラリアが協力することも念頭に置きながら、相互に協議し、後方支援や情報共有等を中心に連携する。こうした事態への効果的な対応を確保する観点から、平素より運用面の協力の範囲、目的及び形態に関する議論を推進する。
 インドとの間では、特別戦略的グローバル・パートナーシップを構築しており、戦略的な連携を強化する観点から、「2+2」等の枠組みも活用しつつ、海洋安全保障やサイバーセキュリティ等を始めとする幅広い分野において、二国間及び多国間の軍種間交流等を更に深化させるとともに、共同訓練、防衛装備・技術協力等を推進する。
 英国、フランス、ドイツ、イタリア等との間では、グローバルな安全保障上の課題のみならず、欧州及びインド太平洋地域の課題に相互に関与を強化する。その上で、北大西洋条約機構(NATO)等による米国との同盟関係を基軸として、緊密な協力関係を構築し、「2+2」等の各レベルでの協議、共同訓練、次期戦闘機の共同開発を含む防衛装備・技術協力、艦艇・航空機等の相互派遣等を実施する。その際、共同で実施する北朝鮮に向けた瀬取り監視やソマリア沖・アデン湾における海賊対処を通じて連携を強化する。
 NATO及び欧州連合(EU)との間では、これら欧州諸国との二国間関係を基礎として、国際的なルール形成やインド太平洋地域における安全保障への関与に関して連携を強化していく。
 韓国との間では、北朝鮮による核・ミサイルの脅威に対し、日米同盟及び米韓同盟の抑止力・対処力の強化の重要性を踏まえ、日米韓三か国による共同訓練を始めとした取組により日米韓の連携を強化する。
 カナダ及びニュージーランドとの間では、インド太平洋地域の課題に更に連携して取り組むため、各レベルでの協議、共同訓練・演習、二国間で連携した第三国との協力等を推進する。
 ロシアによるウクライナ侵略を含む力による一方的な現状変更やその試みに直面し、情報戦、サイバーセキュリティ、SC、ハイブリッド戦等の先進的な取組を進める北欧・バルト諸国等との連携や、日本との関係強化に関心を示すチェコ・ポーランド等の中東欧諸国との連携を強化していく。
 東南アジア諸国との間では、まず東南アジア諸国連合(ASEAN)の中心性・一体性の強化に向けて、東アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラム、拡大ASEAN国防相会議、日ASEAN防衛担当大臣会合等を通じ、その動きを支援する。その上で、インド太平洋地域の安全保障を安定化させる観点から、各国の状況に合わせ、「2+2」を含む各レベルでの協議、戦略的寄港・寄航、共同訓練等を実施する。また、地域の安定化を目指し、防衛力強化に資する防衛装備移転、能力構築支援等を実施する。
 モンゴルとの間では、中露の間に位置する民主主義国家という戦略的重要性に鑑み、各レベルでの交流、能力構築支援、多国間共同訓練等に加え、政治・安全保障分野での協力を新たな次元に高めるべく、防衛装備・技術協力を推進する。
 中央アジア諸国との間では、アジアと欧州の間に位置する地政学的に重要な地域である一方で、防衛交流実績が少なく空白地帯となっていることから、双方が関心のある分野において、能力構築支援を含む防衛交流を積み重ねていく。
 太平洋島嶼国との間では、重要なパートナーとして、同盟国・同志国等とも連携して能力構築支援等の協力に取り組んでいく。その際、軍隊以外の組織である沿岸警備隊等を対象とすること等を検討する。
 インド洋沿岸国・中東諸国との間では、我が国のシーレーンの安定的利用やエネルギー・経済の観点からの重要性を踏まえ、防衛協力を進めていく。同時に、アフリカ諸国等との間でも、グローバルな課題に対応するという観点から、防衛協力を強化する。特に、海賊対処、在外邦人等の保護・輸送等、この地域における運用基盤の強化等のため、ジブチとの連携を強化し、同国において運営している自衛隊の活動拠点を長期的・安定的に活用する。
 同志国等との連携の推進の一方で、中国やロシアとの意思疎通についても留意していく。
 中国との間では、「建設的かつ安定的な関係」の構築に向けて、日中安保対話を含む多層的な対話や交流を推進していく。その際、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守するとともに、軍事力強化や国防政策に係る透明性を向上するよう引き続き促す一方で、我が国として有する懸念を率直に伝達していく。また、両国間における不測の事態を回避するため、ホットラインを含む「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」を運用していく。
 ロシアとの関係については、力による一方的な現状変更は認められないとの考えの下、ウクライナ侵略を最大限非難しつつ、G7を始めとした国際社会と緊密に連携し、適切に対応する。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないために必要な連絡を絶やさないようにする。



Ⅳ 防衛力の抜本的強化に当たって重視する能力
 本戦略等に示された基本方針及びこれらと整合された統合的な運用構想により導き出された、我が国の防衛上必要な7つの機能・能力の基本的な考え方とその内容は以下のとおり。

1 スタンド・オフ防衛能力
 東西南北、それぞれ約3,000キロに及ぶ我が国領域を守り抜くため、島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏の外から対処するスタンド・オフ防衛能力を抜本的に強化する。

 まず、我が国への侵攻がどの地域で生起しても、我が国の様々な地点から、重層的にこれらの艦艇や上陸部隊等を阻止・排除できる必要かつ十分な能力を保有する。次に、各種プラットフォームから発射でき、また、高速滑空飛翔や極超音速飛翔といった多様かつ迎撃困難な能力を強化する。

 このため、2027年度までに、地上発射型及び艦艇発射型を含めスタンド・オフ・ミサイルの運用可能な能力を強化する。その際、国産スタンド・オフ・ミサイルの増産体制確立前に十分な能力を確保するため、外国製のスタンド・オフ・ミサイルを早期に取得する。

 今後、おおむね10年後までに、航空機発射型スタンド・オフ・ミサイルを運用可能な能力を強化するとともに、変則的な軌道で飛翔することが可能な高速滑空弾、極超音速誘導弾、その他スタンド・オフ・ミサイルを運用する能力を獲得する。

 あわせて、スタンド・オフ防衛能力に不可欠な、艦艇や上陸部隊等に関する精確な目標情報を継続的に収集し、リアルタイムに伝達し得る指揮統制に係る能力を保有する。対処実施後の成果の評価も含む情報分析能力や、情報ネットワークの抗たん性・冗長性も併せて保有する。

2 統合防空ミサイル防衛能力
 四面環海の日本は、経空脅威への対応が極めて重要である。近年、弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機等の能力向上に加え、対艦弾道ミサイル、極超音速兵器や無人機等の出現により、この経空脅威は多様化・複雑化・高度化している。

 このため、探知・追尾能力や迎撃能力を抜本的に強化するとともに、ネットワークを通じて各種センサー・シューターを一元的かつ最適に運用できる体制を確立し、統合防空ミサイル防衛能力を強化する。

 相手からの我が国に対するミサイル攻撃については、まず、ミサイル防衛システムを用いて、公海及び我が国の領域の上空で、我が国に向けて飛来するミサイルを迎撃する。その上で、弾道ミサイル等の攻撃を防ぐためにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、有効な反撃を加える能力として、スタンド・オフ防衛能力等を活用する。こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、相手のミサイル発射を制約し、ミサイル防衛による迎撃を行い易くすることで、ミサイル防衛と相まってミサイル攻撃そのものを抑止していく。

 このため、2027年度までに、警戒管制レーダーや地対空誘導弾の能力を向上させるとともに、イージス・システム搭載艦を整備する。また、指向性エネルギー兵器等により、小型無人機等に対処する能力を強化する。

 今後、おおむね10年後までに、滑空段階での極超音速兵器への対処能力の研究や、小型無人機等に対処するための非物理的な手段による迎撃能力を一層導入することにより、統合防空ミサイル防衛能力を強化する。

3 無人アセット防衛能力
 無人アセットは、有人装備と比べて、比較的安価であることが多く、人的損耗を局限し、長期連続運用ができるといった大きな利点がある。さらに、この無人アセットをAIや有人装備と組み合わせることにより、部隊の構造や戦い方を根本的に一変させるゲーム・チェンジャーとなり得ることから、空中・水上・水中等での非対称的な優勢を獲得することが可能である。このため、こうした無人アセットを情報収集・警戒監視のみならず、戦闘支援等の幅広い任務に効果的に活用する。また、有人機の任務代替を通じた無人化・省人化により、自衛隊の装備体系、組織の最適化の取組を推進する。

 このため、2027年度までに、無人アセットを早期装備化やリース等により導入し、幅広い任務での実践的な能力を獲得する。特に、水中優勢を獲得・維持するための無人潜水艇(UUV)の早期装備化を進める。

 今後、おおむね10年後までに、無人アセットを用いた戦い方を更に具体化し、我が国の地理的特性等を踏まえた機種の開発・導入を加速し、本格運用を拡大する。さらに、AI等を用いて複数の無人アセットを同時制御する能力等を強化する。

4 領域横断作戦能力
 宇宙・サイバー・電磁波の領域及び陸・海・空の領域における能力を有機的に融合し、相乗効果によって全体の能力を増幅させる領域横断作戦により、個別の領域が劣勢である場合にもこれを克服し、我が国の防衛を全うすることがますます重要になっている。

 宇宙領域においては、衛星コンステレーションを含む新たな宇宙利用の形態を積極的に取り入れ、情報収集、通信、測位等の機能を宇宙空間から提供されることにより、陸・海・空の領域における作戦能力を向上させる。同時に、宇宙空間の安定的利用に対する脅威に対応するため、地表及び衛星からの監視能力を整備し、宇宙領域把握(SDA)体制を確立するとともに、様々な状況に対応して任務を継続できるように宇宙アセットの抗たん性強化に取り組む。
このため、2027年度までに、宇宙を利用して部隊行動に必要不可欠な基盤を整備するとともに、SDA能力を強化する。
今後、おおむね10年後までに、宇宙利用の多層化・冗長化や新たな能力の獲得等により、宇宙作戦能力を更に強化する。
 サイバー領域では、防衛省・自衛隊において、能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野における政府全体での取組と連携していくこととする。その際、重要なシステム等を中心に常時継続的にリスク管理を実施する態勢に移行し、これに対応するサイバー要員を大幅増強するとともに、特に高度なスキルを有する外部人材を活用することにより、高度なサイバーセキュリティを実現する。このような高いサイバーセキュリティの能力により、あらゆるサイバー脅威から自ら防護するとともに、その能力を生かして我が国全体のサイバーセキュリティの強化に取り組んでいくこととする。
 このため、2027年度までに、サイバー攻撃状況下においても、指揮統制能力及び優先度の高い装備品システムを保全できる態勢を確立し、また防衛産業のサイバー防衛を下支えできる態勢を確立する。
 今後、おおむね10年後までに、サイバー攻撃状況下においても、指揮統制能力、戦力発揮能力、作戦基盤を保全し任務が遂行できる態勢を確立しつつ、自衛隊以外へのサイバーセキュリティを支援できる態勢を強化する。
 電磁波領域においては、相手方からの通信妨害等の厳しい電磁波環境の中においても、自衛隊の電子戦及びその支援能力を有効に機能させ、相手によるこれらの作戦遂行能力を低下させる。また、電磁波の管理機能を強化し、自衛隊全体でより効率的に電磁波を活用する。
 宇宙・サイバー・電磁波の領域において、相手方の利用を妨げ、又は無力化するために必要な能力を拡充していく。
 領域横断作戦の基本となる陸上防衛力・海上防衛力・航空防衛力については、海上優勢・航空優勢を維持・強化するための艦艇・戦闘機等の着実な整備や、先進的な技術を積極的に活用し、無人アセットとの連携を念頭に置きつつ、新型護衛艦の導入や次期戦闘機の開発を進めるなど、抜本的に強化していく。
5 指揮統制・情報関連機能
 今後、より一層、戦闘様相が迅速化・複雑化していく状況において、戦いを制するためには、各級指揮官の適切な意思決定を相手方よりも迅速かつ的確に行い、意思決定の優越を確保する必要がある。このため、AIの導入等を含め、リアルタイム性・抗たん性・柔軟性のあるネットワークを構築し、迅速・確実なISRTの実現を含む領域横断的な観点から、指揮統制・情報関連機能の強化を図る。

 このため、2027年度までに、ハイブリッド戦や認知領域を含む情報戦に対処可能な情報能力を整備する。また、衛星コンステレーション等によるニアリアルタイムの情報収集能力を整備する。

 今後、おおむね10年後までに、AIを含む各種手段を最大限に活用し、情報収集・分析等の能力を更に強化する。また、情報収集アセットの更なる強化を通じ、リアルタイムで情報共有可能な体制を確立する。

 また、これまで以上に、我が国周辺国等の意思と能力を常時継続的かつ正確に把握する必要がある。このため、動態情報から戦略情報に至るまで、情報の収集・整理・分析・共有・保全を実効的に実施できるよう、情報本部を中心とした電波情報、画像情報、人的情報、公刊情報等の機能別能力を強化するとともに、地理空間情報の活用を含め統合的な分析能力を抜本的に強化していく。あわせて、情報関連の国内関係機関との協力・連携を進めていくとともに、情報収集衛星により収集した情報を自衛隊の活動により効果的に活用するために必要な措置をとる。

 これに加え、偽情報の流布を含む情報戦等に有効に対処するため、防衛省・自衛隊における体制・機能を抜本的に強化するとともに、同盟国・同志国等との情報共有や共同訓練等を実施していく。

6 機動展開能力・国民保護
 島嶼部を含む我が国への侵攻に対しては、海上優勢・航空優勢を確保し、我が国に侵攻する部隊の接近・上陸を阻止するため、平素配備している部隊が常時活動するとともに、状況に応じて必要な部隊を迅速に機動展開させる必要がある。このため、自衛隊自身の海上輸送力・航空輸送力を強化するとともに、民間資金等活用事業(PFI)等の民間輸送力を最大限活用する。

 また、これらによる部隊への輸送・補給等がより円滑かつ効果的に実施できるように、統合による後方補給態勢を強化し、特に島嶼部が集中する南西地域における空港・港湾施設等の利用可能範囲の拡大や補給能力の向上を実施していくとともに、全国に所在する補給拠点の近代化を積極的に推進する。

 自衛隊は島嶼部における侵害排除のみならず、強化された機動展開能力を住民避難に活用するなど、国民保護の任務を実施していく。

 このため、2027年度までに、PFI船舶の活用の拡大等により、輸送能力を強化することで、南西方面の防衛態勢を迅速に構築可能な能力を獲得し、住民避難の迅速化を図る。

 今後、おおむね10年後までに、輸送能力を更に強化しつつ、補給拠点の改善により輸送・補給を一層迅速化する。

7 持続性・強靱性
 将来にわたり我が国を守り抜く上で、弾薬、燃料、装備品の可動数といった現在の自衛隊の継戦能力は、必ずしも十分ではない。こうした現実を直視し、有事において自衛隊が粘り強く活動でき、また、実効的な抑止力となるよう、十分な継戦能力の確保・維持を図る必要がある。このため、弾薬の生産能力の向上及び製造量に見合う火薬庫の確保を進め、必要十分な弾薬を早急に保有するとともに、必要十分な燃料所要量の確保や計画整備等以外の装備品が全て可動する体制を早急に確立する。
 このため、2027年度までに、弾薬については、必要数量が不足している状況を解消する。また、優先度の高い弾薬については製造態勢を強化するとともに、火薬庫を増設する。さらに、部品不足を解消して、計画整備等以外の装備品が全て可動する体制を確保する。
 今後、おおむね10年後までに、弾薬及び部品の適正な在庫の確保を維持するとともに、火薬庫の増設を完了する。装備品については、新規装備品分も含め、部品の適正な在庫の確保を維持する。
 さらに、平素においては自衛隊員の安全を確保し、有事においても容易に作戦能力を喪失しないよう、主要司令部等の地下化や構造強化、施設の離隔距離を確保した再配置、集約化等を実施するとともに、隊舎・宿舎の着実な整備や老朽化対策を行う。さらに、装備品の隠ぺい及び欺まん等を図り、抗たん性を向上させる。
 また、気候変動の問題は、将来のエネルギーシフトへの対応を含め、今後、防衛省・自衛隊の運用や各種計画、施設、防衛装備品、さらに我が国を取り巻く安全保障環境により一層の影響をもたらすことは必至であるため、これに伴う各種課題に対応していく。
 このため、2027年度までに、司令部の地下化、主要な基地・駐屯地内の再配置・集約化を進め、各施設の強靱化を図る。また、災害の被害想定が甚大かつ運用上重要な基地・駐屯地から津波等の災害に対する施設及びインフラの強靱化を推進する。
 今後、おおむね10年後までに、防衛施設の更なる強靱化を図る。
 自衛隊員の生命を救い、身体に対する危険を軽減することによって、自衛隊がより長く、より強靱に我が国への侵攻に対処できるように、隊員の救命率向上のため、応急救護能力を強化するとともに、第一線から最終後送先に至るまでのシームレスな医療・後送体制を構築することによって、衛生機能を変革する。


Ⅴ 将来の自衛隊の在り方
1 7つの重視分野における自衛隊の役割
 防衛力の抜本的強化に当たって重視する能力の7つの分野において、各自衛隊は以下の役割を担う。

 スタンド・オフ防衛能力については、侵攻してくる艦艇や上陸部隊に対し、脅威圏外から多様な対処を行い得るよう、各自衛隊は、車両、艦艇、航空機からのスタンド・オフ・ミサイル発射能力を必要十分な数量整備する。

 統合防空ミサイル防衛能力については、海上自衛隊の護衛艦が上層、陸上自衛隊及び航空自衛隊の地対空誘導弾が下層における迎撃を担うことを基本として、極超音速兵器等の将来の経空脅威への対応能力を強化する。また、各自衛隊は、スタンド・オフ防衛能力等を反撃能力として活用する。

 無人アセット防衛能力については、各自衛隊は、各々の任務分担に従い、既存部隊の見直しを進めつつ、航空・海上・水中・陸上の無人アセット防衛能力を大幅に強化する。

 領域横断作戦のうち、宇宙領域では、航空自衛隊においてSDA能力を始めとする各種機能を強化する。サイバー領域では、防衛省・自衛隊として我が国全体のサイバーセキュリティ強化に貢献するため、自衛隊全体で強化を図り、特に、陸上自衛隊が人材育成等の基盤拡充の中核を担っていくこととする。電磁波領域については、各自衛隊において、電子戦装備を取得・増強し、電磁波を活用した欺まん装備の導入等を推進する。また、我が国周辺国等の通常戦力の急速な増強を踏まえ、これらの領域における能力と連携して領域横断作戦を展開する各自衛隊の装備品の質・量の強化も引き続き行う。

 指揮統制・情報関連機能については、各自衛隊の情報収集能力の強化、収集した情報に基づく意思決定の迅速化、指揮命令を確実に行い得るネットワークの整備等を行う。また、スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要なISRTを含む情報本部の情報機能を抜本的に強化するとともに、指揮統制機能との連携を強化する。

 機動展開能力・国民保護については、我が国への侵攻が想定される事態において、島嶼部等への部隊の展開を迅速に行うため、陸上自衛隊は中型・小型船舶等を、海上自衛隊は輸送艦等を、航空自衛隊は輸送機等を確保することにより、機動・展開能力を強化する。陸上自衛隊においては、沖縄における国民保護をも目的として、部隊強化を含む体制強化を図る。

 持続性・強靱性については、一連の任務遂行を持続的に行うため、各自衛隊は、平素より弾薬・燃料及び可動装備品を必要数確保するとともに、能力発揮の基盤となる防衛施設の抗たん性を強化させる。

2 自衛隊の体制整備の考え方
 以上のような7つの分野における役割を踏まえ、統合運用体制並びに各自衛隊及び情報本部の体制は、次のような基本的考え方により整備を行う。

 統合運用の実効性を強化するため、既存組織の見直しにより、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行い得る常設の統合司令部を創設する。また、統合運用に資する装備体系の検討を進める。

 陸上自衛隊は、領域横断作戦能力の強化及び利点の多い地上発射型スタンド・オフ防衛能力の強化による遠方からの侵攻部隊の阻止、持続性・強靱性の保持、南西地域の島嶼部への迅速かつ分散した機動展開能力の強化、無人アセットの導入、ドローン等への対処を含む統合防空ミサイル防衛能力の向上、分散展開した部隊に必要なシステムを含む指揮統制・情報関連機能を重視した体制を整備する。

 海上自衛隊は、近年のミサイルの脅威の高まり等を踏まえ、防空能力の強化及び省人化・無人化の推進、情報戦能力の強化、水中優勢の確保、スタンド・オフ防衛能力の強化、洋上後方支援能力の強化、持続性・強靱性の確保を重視し、高い迅速性と活動量を求められる部隊運用を持続的に遂行可能な体制を整備する。特に、領域横断作戦の中でも重要な水中優勢を獲得・維持し得る体制を整備することとする。

 航空自衛隊は、高脅威環境下における強靱かつ柔軟な運用による粘り強い任務遂行のため、航空防衛力の質・量の見直し・強化、効果的なスタンド・オフ防衛能力の保持、実効的なミサイル防空態勢の確保、各種無人アセットの導入に必要な体制を整備する。また、宇宙作戦能力を強化し、宇宙利用の優位性を確保し得る体制を整備することにより、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。

 情報本部は、電波情報、画像情報、人的情報、公刊情報等の収集・分析に加え、我が国の防衛における情報戦対応の中心的な役割を担うこととし、他国の軍事活動等を常時継続的かつ正確に把握し、分析・発信する能力を抜本的に強化する。さらに、領域横断作戦能力の強化及びスタンド・オフ防衛能力の強化に併せ、既存の体制を強化するとともに、関係する他機関との協力・連携を切れ目なく実施できるように強化する。

 防衛省・自衛隊においては、能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野に係る政府の取組も踏まえつつ、我が国全体のサイバーセキュリティに貢献する体制を抜本的に強化することとする。

3 政策立案機能の強化
 自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波の領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化していく。この際、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する。また、自衛隊の将来の戦い方とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化する。さらに、こうした取組を推進し、政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化する。


Ⅵ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組
1 国民の生命・身体・財産の保護に向けた取組
 我が国が備えるべき事態は、力による一方的な現状変更やその試み、そして我が国への侵攻のみではない。大規模テロやそれに伴う原子力発電所を始めとした重要インフラに対する攻撃、地震や台風等の大規模災害、新型コロナウイルス感染症といった感染症危機等は、国民の生命・身体・財産に対する深刻な脅威であり、我が国として、国の総力をあげて全力で対応していく必要がある。

 それらの対応に当たって、防衛省・自衛隊においては、抜本的に強化された防衛力を活用し、警察、海上保安庁、消防、地方公共団体等の関係機関と緊密に連携して、大規模テロや重要インフラに対する攻撃に際しては実効的な対処を行い、大規模災害等に際しては効果的に人命救助、応急復旧、生活支援等を行うこととする。また、外国での災害・騒乱等が発生した際には、外交当局と緊密に連携して、在外邦人等を迅速かつ的確に保護し、輸送する。

 防衛力を活用しつつ、このような対応を円滑に実施するためには、平素から関係機関と連携態勢を構築しておくことが必須である。地方公共団体やインフラ事業者を含む関係機関と共に、各種計画等を踏まえつつ、その実効性を担保するために、総合的な訓練を実施する。また、このような連携態勢を活用し、我が国への侵攻が予測される場合には、住民の避難誘導を含む国民保護のための取組を円滑に実施できるようにする。

2 国際的な安全保障協力への取組
 我が国の平和と安全のためには、国際社会の平和と安定及び繁栄が確保されていなければならない。そのため、防衛省・自衛隊としても、抜本的に強化された防衛力を活用しつつ、国際協調を旨とする積極的平和主義の立場から、世界各地における紛争・対立の解決に向けた努力、気候変動等に起因する国際的な大規模災害に際しての人道支援・災害救援、大量破壊兵器の不拡散等の国際的な課題への対応に積極的に取り組んでいく必要がある。

 国連平和維持活動(PKO)を始めとする国際平和協力業務、国際緊急援助活動等の国際平和協力活動については、平和安全法制も踏まえ、必要に応じ、遠隔地であっても、情報関連機能を用いて精緻な情報を収集し、機動展開能力により必要な部隊を迅速に移動させ、我が国が得意とする施設、衛生等といった分野を中心として活動を実施していく。また、高い専門性を有する自衛官の特性を生かし、引き続き、現地ミッション司令部要員等を派遣していく。加えて、これまで蓄積した経験を活かし、能力構築支援を実施していく。

 我が国を取り巻く安全保障環境を改善する観点からは、核兵器・化学兵器・生物兵器といった大量破壊兵器等の軍備管理・軍縮及び不拡散についても、関係国や国際機関等と協力しつつ、取組を推進していく。その際、防衛省・自衛隊の知見を活かし、国際機関や国際輸出管理レジームの実効性の向上に協力していく。



Ⅶ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
 防衛生産・技術基盤は、自国での装備品の研究開発・生産・調達を安定的に確保し、新しい戦い方に必要な先端技術を防衛装備品に取り込むために不可欠な基盤であることから、いわば防衛力そのものと位置付けられるものであり、その強化は必要不可欠である。そのため、新たな戦い方に必要な力強く持続可能な防衛産業の構築、様々なリスクへの対処、販路の拡大等に取り組んでいく。汎用品のサプライチェーン保護、民生先端技術の機微技術管理・情報保全等の政府全体の取組に関しては、防衛省が防衛目的上必要な措置を実施していくことと併せて、関係省庁間の取組と連携していく。

1 防衛生産基盤の強化
 我が国の防衛産業は、自衛隊の任務遂行に当たっての装備品の確保の面から、防衛省・自衛隊と共に国防を担うパートナーというべき重要な存在であり、高度な装備品を生産し、高い可動率を確保できる能力を維持・強化していく必要がある。そのためには、防衛産業において、防衛技術基盤の強化を通じた高度な技術力及び品質管理能力を確保することに加え、装備品の生産・維持・整備、改修・能力向上等を確保していく。

 防衛産業が、このような大きな役割を果たすために、サプライチェーン全体を含む基盤強化を図っていく。その際、防衛産業のコスト管理や品質管理に関する取組を適正に評価し、適正な利益を確保するための新たな利益率の算定方式を導入することで、事業の魅力化を図るとともに、既存のサプライチェーンの維持・強化と新規参入促進を推進する。

 また、装備品の取得に際して、企業の予見可能性を図りつつ、国内基盤を維持・強化する観点を一層重視し、技術的、質的、時間的な向上を図るとともに、こうした措置を講じてもなお、他に手段がない場合、国自身が製造施設等を保有する形態を検討していく。

 さらに、防衛産業のサプライチェーンリスクに対応するとともに、国際水準を踏まえたサイバーセキュリティを含む産業保全を強化し、併せて機微技術管理の強化に取り組む。こうした観点から、同盟国・同志国等の防衛当局と、防衛産業に関するサプライチェーン保護、機微技術管理等を実施していく。

2 防衛技術基盤の強化
 新しい戦い方に必要な装備品を取得するためには、我が国が有する技術を如何に活用していくかが極めて重要である。そのために、防衛省・自衛隊においては、防衛関連企業等から提案を受け、新しい戦い方に適用し得るかを踏まえた上で、当該企業が有する装備品特有の技術や社内研究成果、さらには、非防衛産業から取り込んで装備品に活用できる技術を早期装備化に繋げていくための取組を積極的に推進していくこととする。特に、政策的に緊急性・重要性が高い事業の実施に当たっては、研究開発リスクを許容しつつ、想定される成果を考慮した上で、一層早期の研究開発や実装化を実現する。

 また、試作品を部隊で運用しながら仕様を改善し、必要な装備品を部隊配備する取組を強化する。

 さらに、我が国の防衛に資する装備品を取得する手段として、我が国主導の国際共同開発を推進するなど、同盟国・同志国等との協力・連携を進めていく。

 加えて、スタートアップ企業や国内の研究機関・学術界等の民生先端技術を積極活用するための枠組みを構築するほか、総合的な防衛体制強化のための府省横断的な仕組みを活用する。

 防衛装備庁の研究開発関連組織のスクラップ・アンド・ビルドにより、装備化に資するマルチユース先端技術を見出し、防衛イノベーションにつながる装備品を生み出すための新たな研究機関を創設するとともに、政策・運用・技術の面から総合的に先端技術の活用を検討・推進する体制を拡充する。こうした体制の下、予見可能性を高める観点から、新しい戦い方を踏まえて、重視する技術分野や研究開発の見通しについて戦略的に発信する。

3 防衛装備移転の推進
 防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための重要な政策的な手段となる。こうした観点から、安全保障上意義が高い防衛装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため、防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討する。その際、三つの原則そのものは維持しつつ、防衛装備移転の必要性、要件、関連手続の透明性の確保等について十分に検討する。また、防衛装備移転を円滑に進めるため、基金を創設し、必要に応じた企業支援を行うこと等により、官民一体となって防衛装備移転を進める。



Ⅷ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
1 人的基盤の強化
 防衛力の中核は自衛隊員である。防衛力の抜本的強化を実現するに当たっては、自衛官の定員は増やさずに必要な人員を確保するとともに、自衛隊員には、これまで以上の知識・技能・経験が求められているほか、偽情報等に惑わされない素養を身に着ける必要が生じていることも踏まえつつ、全ての隊員が高い士気と誇りを持ちながら、個々の能力を発揮できる環境を整備する必要がある。生活・勤務環境の改善、処遇の向上、栄典・礼遇に関する施策の推進、自衛隊員の家族や関係団体等との連携を含めた家族支援の拡充、人事管理の柔軟化等を通じた女性隊員が更に活躍できる環境醸成、ワークライフバランスの推進、若年で退職する自衛官の再就職支援の充実等に引き続き取り組む。特に、高い即応性、長期の任務、社会と隔絶された厳しい環境での勤務を求められる隊員には一定の配慮が必要である。また、ハラスメントは人の組織である自衛隊の根幹を揺るがすものであることを各自衛隊員が改めて認識し、ハラスメントを一切許容しない組織環境を構築する。これらの取組は、中途退職による戦力低下を防止するだけでなく、有為な人材を確保するためにも重要である。

 採用については、質の高い人材を必要数確保するため、募集能力の一層の強化を図る。あわせて、精強性の維持に配慮しつつ、定年年齢を更に引き上げるとともに、退職する自衛官の再任用を拡大することにより、熟練した技能の有効活用を図る。さらに、柔軟な人材活用を進め、サイバー領域等の専門的な知識・技能を有する民間人材を含めた幅広い層からの人材確保を推進する。特に、充足率の低い艦艇乗組員や、レーダーサイトの警戒監視要員等の人材確保に資する施策を総合的に講じていく。なお、常備自衛官の補完等に当たる予備自衛官等については、サイバー領域を含め、採用を大幅に増やすべく、その制度の見直しや体制強化に取り組む。また、退職した自衛隊員等との連携を強化する。

 採用した人材の育成については、自衛隊員へのリスキリングや防衛大学校、各自衛隊の学校等の教育基盤の強化を図る。この際、サイバー領域等の専門性が高い分野や、統合教育・研究を特に強化するとともに、希少な専門人材を有効に活用するための施策を講じる。また、防衛省における事務官等は、防衛力の一要素として自衛隊の活動を支えるとともに、防衛力の抜本的強化やそれに伴う政策の企画立案、部隊における運用支援等のために重要な役割を果たすものである。そのために必要となる事務官・技官等を確保し、さらに必要な制度の検討を行うなど、人的基盤の強化に取り組む。

 このように、自衛隊員が育児、出産、介護といった各種のライフイベントを迎える中にあっても、遺憾なくその能力を発揮できる組織環境づくりにも配慮し、自衛隊員としてのライフサイクル全般に着目した大胆な施策を講じる。

2 衛生機能の変革
 自衛隊衛生については、これまで自衛隊員の壮健性の維持を重視してきたが、持続性・強靱性の観点から、有事において危険を顧みずに任務を遂行する隊員の生命・身体を救う組織に変革する。

 このため、各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう、各自衛隊で共通する衛生機能等を一元化して統合的な運用を推進するとともに、防衛医科大学校も含めた自衛隊衛生の総力を結集できる態勢を構築し、戦傷医療能力向上のための抜本的改革を推進する。

 この際、南西地域の第一線から本州等の後送先病院までの役割の明確化を図った上で、第一線から後送先病院までのシームレスな医療・後送態勢を確立し、後送に係る衛生資器材の共通化を図るとともに、医療・後送に際して必要となる医療情報を第一線を含む全国の医療拠点・施設で共有するシステムを整備する。また、部隊の救護能力の強化、外傷医療に不可欠な血液・酸素を含む衛生資器材の確保、南西地域の医療拠点の整備も行う。

 さらに、防衛医科大学校での戦傷医療についての教育研究の強化を進めるとともに、医官及び看護官の臨床経験をより充実させるために必要な運営改善を進める。また、積極的な部外研修によって医官及び看護官の臨床経験を補完する。その上で、戦傷医療についての統合教育・訓練を通じ各自衛隊共通の知識・技能の向上を図る。



Ⅸ 留意事項
1 本戦略は、国家安全保障戦略の下、他の分野の戦略と整合をもって実施される。防衛目標達成のためのアプローチと手段が適切にとられているのか、特に国全体の防衛体制の強化が確実に実施されているのかについて、国家安全保障会議において定期的に体系的な評価を行う。また、安全保障環境の変化、特に相手方の能力に着目し、統合的な運用構想に基づき、実効的に対処できる防衛力を構築していくため、必要な能力に関する評価を常に実施する。

2 本戦略に基づく防衛力の抜本的強化は、将来にわたり、維持・強化していく必要がある。このため、防衛力の抜本的強化の在り方について中長期的な観点から不断に検討を行う。

3 本戦略はおおむね10年間の期間を念頭に置いているが、国際情勢や技術的水準の動向等について重要な変化が見込まれる場合には必要な修正を行う。

防衛力整備計画について

目次
Ⅰ 計画の方針
Ⅱ 自衛隊の能力等に関する主要事業
Ⅲ 自衛隊の体制等
Ⅳ 日米同盟の強化
Ⅴ 同志国等との連携
Ⅵ 防衛力を支える要素
Ⅶ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組
Ⅷ 早期装備化のための新たな取組
Ⅸ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
Ⅹ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
Ⅺ 最適化の取組
Ⅻ 整備規模
ⅩⅢ 所要経費等
ⅩⅣ 留意事項
別表1
別表2
別表3

Ⅰ 計画の方針
 「国家防衛戦略」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化し、相手の能力と新しい戦い方に着目して、5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。おおむね10年後までに、防衛力の目標をより確実にするため更なる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する。

 以上を踏まえ、以下を計画の基本として、防衛力の整備、維持及び運用を効果的かつ効率的に行う。

 我が国の防衛上必要な機能・能力として、まず、我が国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるようにする必要がある。このため、「スタンド・オフ防衛能力」と「統合防空ミサイル防衛能力」を強化する。
 また、万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合には、これらの能力に加え、有人アセット、さらに無人アセットを駆使するとともに、水中・海上・空中といった領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保できるようにする必要がある。このため、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」を強化する。
 さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させられるようにする必要がある。このため、「機動展開能力・国民保護」、「持続性・強靱性」を強化する。また、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤に加え、防衛力を支える人的基盤等も重視する。
 装備品の取得に当たっては、能力の高い新たな装備品の導入、既存の装備品の延命、能力向上等を適切に組み合わせることにより、必要十分な質・量の防衛力を確保する。その際、研究開発を含む装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化等によるコストの削減に努め、費用対効果の向上を図る。また、自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結し得る分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性が高い事業については、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。
 人口減少と少子高齢化が急速に進展し、募集対象者の増加が見込めない状況においても、自衛隊の精強性を確保し、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上を図る観点から、採用の取組強化、予備自衛官等の活用、女性の活躍推進、自衛官の定年年齢引上げ、再任用自衛官を含む多様かつ優秀な人材の有効な活用、生活・勤務環境の改善、人材の育成、処遇の向上、再就職支援等の人的基盤の強化に関する各種施策を総合的に推進する。
 日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力及び相互運用性の向上等を推進するとともに、あらゆる段階における日米共同での実効的な対処力を支える基盤を強化するため、日米間の情報共有を促進するための情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組並びに装備・技術協力を強化する。また、在日米軍の駐留を支えるための施策を着実に実施する。
 自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進するため、円滑化協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、情報保護協定等、防衛装備品・技術移転協定等の制度的枠組みの整備に更に推進するとともに、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む取組等を推進する。
 防衛力の抜本的強化に当たっては、スクラップ・アンド・ビルドを徹底して、組織定員と装備の最適化を実施するとともに、効率的な調達等を進めて大幅なコスト縮減を実現してきたこれまでの努力を更に強化していく。あわせて、人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。


Ⅱ 自衛隊の能力等に関する主要事業
 2027年度までに、我が国への侵攻に対し、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できる防衛力を構築するため、防衛力の抜本的強化に当たって重視する主要事業を1から7までのとおり実施することとする。

1 スタンド・オフ防衛能力
 我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、脅威圏外から対処する能力を強化するため、12 式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)、島嶼防衛用高速滑空弾及び極超音速誘導弾の開発・試作を実施・継続する。島嶼防衛用高速滑空弾及び極超音速誘導弾を始め、各種誘導弾の長射程化を実施する。防衛力の抜本的強化を早期に実現するため、上記のスタンド・オフ・ミサイルの量産弾を取得するほか、米国製のトマホークを始めとする外国製スタンド・オフ・ミサイルの着実な導入を実施・継続する。

 また、発射プラットフォームの更なる多様化のための研究・開発を進めるとともに、スタンド・オフ・ミサイルの運用能力向上を目的として、潜水艦に搭載可能な垂直ミサイル発射システム(VLS)、輸送機搭載システム等を開発・整備する。

 スタンド・オフ防衛能力の実効性確保のため、目標情報の一層効果的な収集を行う観点から、衛星コンステレーションを活用した画像情報等の取得や無人機(UAV)、目標観測弾の整備等を行い、情報収集・分析機能及び指揮統制機能を強化する。スタンド・オフ・ミサイルの運用は、目標情報の収集、各部隊への目標の割当てを含む一連の指揮統制を一元的に行う必要があるため、統合運用を前提とした態勢を構築する。スタンド・オフ・ミサイル等を保管するための火薬庫を増設するとともに、射場利用の確保を含め、試験・整備等に必要な施策を着実に実施することで、スタンド・オフ・ミサイルの開発・運用に必要な一連の機能を確保する。

2 統合防空ミサイル防衛能力
 極超音速滑空兵器(HGV)等の探知・追尾能力を強化するため、固定式警戒管制レーダー(FPS)等の整備及び能力向上、次期警戒管制レーダーの換装・整備を図る。また、地対空誘導弾ペトリオット・システムを改修し、新型レーダー(LTAMDS)を導入することで、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)による極超音速滑空兵器(HGV)等への対処能力を向上させる。

 各種事態により実効的に対応するため、航空自衛隊の高射部隊の編成及び配置の見直しに着手するとともに、中距離地対空誘導弾部隊と合わせた重層的な要域防空体制を構築し、平素からの展開配置のための部隊運用を行う。また、基地防空用地対空誘導弾の能力向上を推進する。加えて、滑空段階での極超音速滑空兵器(HGV)等への対処を行い得る誘導弾システムの調査及び研究を実施する。

 極超音速滑空兵器(HGV)等に対処する能力を強化するため、03 式中距離地対空誘導弾(改善型)の能力向上を図るほか、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM-6)等を取得する。

 ネットワーク化による効果的かつ効率的な対処の実現のため、護衛艦等の間で連携した射撃を可能とするネットワークシステム(FCネットワーク)を取得し、共同交戦能力(CEC)を保持する。また、地対空誘導弾ペトリオット・システムの情報調整装置(ICC)を改修することで、各種誘導弾システムをネットワークで連接する。

 我が国の防空能力強化のため、主に弾道ミサイル防衛に従事するイージス・システム搭載艦を整備する。

 高出力レーザーや高出力マイクロ波(HPM)等の指向性エネルギー技術の組み合わせにより、小型無人機(UAV)等への非物理的な手段による対処能力を早期に整備する。

 なお、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力を反撃能力として用いる。この反撃能力の運用は、統合運用を前提とした一元的な指揮統制の下で行う。

3 無人アセット防衛能力
 人的損耗を局限しつつ任務を遂行するため、既存の装備体系・人員配置を見直しつつ、各種無人アセットを早期に整備する。その整備に当たっては、安全性の確保と効果的な任務遂行の両立を図るものとする。

 隙のない情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)を実施するため、洋上監視に資する滞空型無人機(UAV)及び艦載型の無人アセットや相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る偵察用無人機(UAV)のほか、用途に応じた様々な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)用無人アセットを整備する。また、広域に分散展開した部隊、離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機(UAV)の導入について検討の上、必要な措置を講じる。

 我が国への侵攻を阻止・排除するため、空中から人員・車両・艦艇等を捜索・識別し、迅速に目標に対処することが可能となるよう、各種攻撃機能を効果的に保持した多用途/攻撃用無人機(UAV)及び小型攻撃用無人機(UAV)を整備する。

 艦艇と連携し、効果的に各種作戦運用が可能な無人水上航走体(USV)を開発・整備する。また、水中優勢を獲得するための各種無人水中航走体(UUV)を整備する。

 このほか、無人車両(UGV)と無人機(UAV)を効果的に組み合わせることにより、駐屯地・基地等や重要施設の警備及び防護体制の効率化を図る。加えて、有人機と無人機(UAV)の連携を強化するとともに、複数の無人アセットを同時に運用する能力の強化を図る。

4 領域横断作戦能力
 宇宙領域における能力
 スタンド・オフ・ミサイルの運用を始めとする領域横断作戦能力を向上させるため、宇宙領域を活用した情報収集、通信等の各種能力を一層向上させる。具体的には、米国との連携を強化するとともに、民間衛星の利用等を始めとする各種取組によって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築する。また、衛星を活用した極超音速滑空兵器(HGV)の探知・追尾等の対処能力の向上について、米国との連携可能性を踏まえつつ、必要な技術実証を行う。さらに、増大する衛星通信の需要に対応するため、従来のXバンド通信に加え、より抗たん性の高い通信帯域を複層化する取組を進める。
 宇宙領域の安定的利用に対する脅威が増大する中、宇宙領域への対応として、相手方の指揮統制・情報通信等を妨げる能力を更に強化する。また、平素からの宇宙領域把握(SDA)に関する能力を強化するため、2026年度に打ち上げ予定の宇宙領域把握(SDA)衛星の整備に加え、更なる複数機での運用についての検討を含めた各種取組を推進する。さらに、我が国の衛星を含む宇宙システムの抗たん性を強化するため、準天頂衛星を含む複数の測位信号の受信や民間衛星等の利用を推進しつつ、衛星通信の抗たん性技術の開発実証に着手する。
 諸外国との協力について、米国等と宇宙領域把握(SDA)に係る情報共有を推進するほか、高い抗たん性を有する通信波を多国間で共同使用するなどの連携強化を推進する。
 宇宙領域に係る組織体制・人的基盤を強化するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等の関係機関や米国等の同盟国・同志国との交流による人材育成を始めとした連携強化を図るほか、関係省庁間で蓄積された宇宙分野の知見等を有効に活用する仕組みを構築するなど、宇宙領域に係る人材の確保に取り組む。
 サイバー領域における能力
 政府全体において、サイバー安全保障分野の政策が一元的に総合調整されることを踏まえ、防衛省・自衛隊においては、自らのサイバーセキュリティのレベルを高めつつ、関係省庁、重要インフラ事業者及び防衛産業との連携強化に資する取組を推進することとする。
 サイバー攻撃を受けている状況下において、指揮統制能力及び優先度の高い装備品システムを保全し、自衛隊の任務遂行を保証できる態勢を確立するとともに、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる態勢を構築する。
 このため、最新のサイバー脅威を踏まえ、境界型セキュリティのみでネットワーク内部を安全に保ち得るという従来の発想から脱却し、もはや安全なネットワークは存在しないとの前提に立ち、サイバー領域の能力強化の取組を進める。この際、ゼロトラストの概念に基づくセキュリティ機能の導入を検討するとともに、常時継続的にリスクを管理する考え方を基礎に、情報システムの運用開始後も継続的にリスクを分析・評価し、適切に管理する「リスク管理枠組み(RMF)」を導入する。さらに、装備品システムや施設インフラシステムの防護態勢を強化するとともに、ネットワーク内部に脅威が既に侵入していることも想定し、当該脅威を早期に検知するためのサイバー・スレット・ハンティング機能を強化する。また、防衛関連企業に対するサイバーセキュリティ対策の強化を下支えするための取組を実施する。
 防衛省・自衛隊のサイバーセキュリティ態勢の強化のため、陸上自衛隊通信学校を陸上自衛隊システム通信・サイバー学校に改編し、サイバー要員を育成する教育基盤を拡充する。さらに、我が国へのサイバー攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方のサイバー空間の利用を妨げる能力の構築に係る取組を強化する。
 これらの取組を行う組織全体としての能力を強化するため、2027年度を目途に、自衛隊サイバー防衛隊等のサイバー関連部隊を約 4,000人に拡充し、さらに、システム調達や維持運営等のサイバー関連業務に従事する隊員に対する教育を実施する。これにより、2027年度を目途に、サイバー関連部隊の要員と合わせて防衛省・自衛隊のサイバー要員を約2万人体制とし、将来的には、更なる体制拡充を目指す。
 電磁波領域における能力
 自衛隊の通信妨害やレーダー妨害能力の強化と併せて、電磁波の探知・識別能力の強化や電磁波を用いた欺まんの手段を獲得するなど電子戦能力を向上させるとともに、レーザー等を活用した小型無人機(UAV)への対処等の電磁波の利用方法を拡大する。また、自衛隊の使用する電磁波の利用状況を適切に管理・調整する機能を強化する。
 このため、通信・レーダー妨害機能を有するネットワーク電子戦システム(NEWS)の整備、脅威圏外から通信妨害等を行うスタンド・オフ電子戦機及び脅威圏内において各種電子妨害を行うスタンド・イン・ジャマー等の開発、電波探知器材の搭載による艦艇及び固定翼哨戒機の信号探知・識別能力の向上、陸上からレーダー妨害を行う対空電子戦装置の整備を行う。また、固定翼哨戒機等への電子妨害能力の付与について、試験的に検証し、必要な措置を講じる。加えて、小型無人機(UAV)に対処する車両搭載型レーザー装置の運用を開始するとともに、高出力レーザー、高出力マイクロ波(HPM)等の指向性エネルギー技術の早期装備化を図る。防衛省・自衛隊のシステムに電磁波の利用状況を把握・管理するための機能を整備するとともに、関係省庁と緊密に連携し、自衛隊の各種活動に必要な電波利用を確保していく。
 陸・海・空の領域における能力
 各自衛隊において、装備品等の取得及び能力向上等を加速し、領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化する。先進的な技術を積極的に活用し、各自衛隊の装備品等を着実に整備するとともに、無人アセットと連携する高度な運用能力を獲得する。
5 指揮統制・情報関連機能
 指揮統制機能の強化
 迅速・確実な指揮統制を行うため、抗たん性のある通信、システム・ネットワーク及びデータ基盤を構築し、スタンド・オフ防衛能力及び統合防空ミサイル防衛能力を始めとする各種能力を統合的に運用するため、リアルタイムに指揮統制を行う態勢を概成するとともに、各自衛隊の一元的な指揮を可能とする指揮統制能力に関する検討を進め、必要な措置を講じる。
 このため、領域横断作戦に資する情報共有機能の強化を図るため、共通基盤としてのクラウドの整備、自衛隊の指揮統制機能及び関係省庁等との連接機能を強化する中央指揮システムの換装を行う。また、陸上自衛隊の自律的な作戦遂行能力を強化する将来指揮統制システムの整備、海上自衛隊の意思決定サイクルを一層高速化する指揮統制システムの換装、航空自衛隊の指揮統制機能の抗たん性を強化する自動警戒管制システム(JADGE)の換装、指揮統制機能の機動性・柔軟性の強化、宇宙関連装備品の運用を一元的に指揮統制する宇宙作戦指揮統制システムの整備及び衛星利用の抗たん性強化を行う。さらに、それらの情報を共有するために必要な防衛情報通信基盤(DII)の強化を行う。
 情報収集・分析等機能の強化
 我が国周辺における軍事動向等を常時継続的に情報収集し、その処理、分析、共有等を行う能力及び態勢を抜本的に強化することにより、隙のない情報収集・分析体制を構築するとともに、政策判断や部隊運用に資する情報を迅速に提供することができる態勢を確立する。加えて、米軍との情報共有態勢及び無人アセットに係る統合運用の在り方について検討し、必要な措置を講じる。
 このため、我が国の防衛における情報機能の中核を担う情報本部を中心に、電波情報、画像情報、人的情報、公刊情報等の機能別能力を強化するとともに、分析官等の育成基盤の拡充や地理空間情報の活用、防衛駐在官制度の充実を始めとする情報収集・分析等に関する体制を強化する。特に、情報収集衛星・民間衛星等を活用した宇宙領域からの情報収集能力を強化するとともに、米国との連携強化や、民間衛星の利用等を始めとする各種取組によって補完しつつ、目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築する。また、効果的な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)の実施に必要な無人機(UAV)等を取得する。
 認知領域を含む情報戦等への対処
 国際社会において、紛争が生起していない段階から、偽情報や戦略的な情報発信等を用いて他国の世論・意思決定に影響を及ぼすとともに、自らの意思決定への影響を局限することで、自らに有利な安全保障環境の構築を企図する情報戦に重点が置かれている状況を踏まえ、我が国として情報戦に確実に対処できる体制・態勢を構築する。
 このため、情報戦対処の中核を担う情報本部において、情報収集・分析・発信に関する体制を強化する。さらに、各国等の動向に関する情報を常時継続的に収集・分析することが可能となる人工知能(AI)を活用した公開情報の自動収集・分析機能の整備、各国等による情報発信の真偽を見極めるためのSNS上の情報等を自動収集する機能の整備、情勢見積りに関する将来予測機能の整備を行う。
6 機動展開能力・国民保護
 島嶼部への侵攻阻止に必要な部隊等を南西地域に迅速かつ確実に輸送するため、輸送船舶(中型級船舶(LSV)、小型級船舶(LCU)及び機動舟艇)、輸送機(C-2)、空中給油・輸送機(KC-46A等)、輸送・多用途ヘリコプター(CH-47J/JA、UH-2)等の各種輸送アセットの取得を推進する。また、海上輸送力を補完するため、車両及びコンテナの大量輸送に特化した民間資金等活用事業(PFI)船舶を確保する。

 南西地域への輸送における自己完結性を高めるため、輸送車両(コンテナトレーラー)及び荷役器材(大型クレーン、大型フォークリフト等)を取得する。また、港湾規模に制約のある島嶼部への輸送の効率性を高めるため、揚陸支援システムの研究開発を進める。同時に、輸送を必要とする補給品の南西地域への備蓄により、輸送所要を軽減する取組を講じる。

 また、自衛隊の機動展開や国民保護の実効性を高めるために、平素から各種アセット等の運用を適切に行えるよう、政府全体として、特に南西地域における空港・港湾等を整備・強化する施策に取り組むとともに、既存の空港・港湾等を運用基盤として使用するために必要な措置を講じる。さらに、自衛隊の機動展開のための民間船舶・航空機の利用の拡大について関係機関等との連携を深めるとともに、当該船舶・航空機に加え自衛隊の各種輸送アセットも利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整・協力する。その際、政府全体として、武力攻撃事態等を念頭に置いた国民保護訓練の強化や様々な種類の避難施設の確保を行う。また、国民保護にも対応できる自衛隊の部隊の強化、予備自衛官の活用等の各種施策を推進する。

7 持続性・強靱性
 弾薬等の整備
 12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイル、弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)、能力向上型迎撃ミサイル(PAC-3MSE)、長距離艦対空ミサイル(SM-6)、03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型等の各種弾薬について、必要な数量を早期に整備する。加えて、早期かつ安定的に弾薬を量産するために、防衛産業による国内製造態勢の拡充等を後押しする。さらに、弾薬の維持整備体制の強化を図る。
 また、増加する弾薬の保管所要に対応するため、火薬庫の増設及び不用弾薬の廃棄を促進する。
 燃料等の確保
 自衛隊が行う作戦に必要な燃料所要量を早期かつ安定的に確保するため、燃料タンクの新規整備及び民間燃料タンクの借り上げを実施する。加えて、糧食・被服の必要数量を確保する。
 防衛装備品の可動数向上
 防衛装備品の高度化・複雑化に対応しつつ、リードタイムを考慮した部品費と修理費の確保により、部品不足による非可動を解消し、2027年度までに装備品の可動数を最大化する。
 このため、需給予測の精緻化を図るとともに、部隊が部品を受け取るまでの時間を短縮化するため、補給倉庫の改修を進める。可動数の増加に当たっては、限られた資源を有効に活用するため、維持整備等の部外委託を推進するなど、部外力を活用する。加えて、後方支援分野においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入を推進し、維持整備の最適化を図る。また、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う契約方式(PBL)等を含む包括契約の拡大を図る。
 施設整備
 スタンド・オフ・ミサイルを始めとした各種弾薬の取得に連動して、必要となる火薬庫を整備する。また、火薬庫の確保に当たっては、各自衛隊の効率的な協同運用、米軍の火薬庫の共同使用、弾薬の抗たん性の確保の観点から島嶼部への分散配置を追求、促進する。
 主要な装備品、司令部等を防護し、粘り強く戦う態勢を確保するため、主要司令部等の地下化・構造強化・電磁パルス(EMP)攻撃対策、戦闘機用の分散パッド、アラート格納庫のえん体化、ライフライン多重化等を実施する。あわせて、省人化を図りつつ、基地警備機能を強化する。
 また、無人アセット等の新たな装備品を効率的に運用可能な施設整備を行う。
 既存施設の更新に際しては、爆発物、核・生物・化学兵器、電磁波、ゲリラ攻撃等に対する防護性能を付与するものとし、施設の機能・重要度に応じた構造強化、離隔距離確保のための再配置、集約化等を実施する。
 大規模災害時等における自衛隊施設の被災による機能低下を防ぐため、被害想定が甚大かつ運用上重要な駐屯地・基地等から、津波等の災害対策等を推進する。今後、気候変動に伴う各種課題へ適応・対応し、的確に任務・役割を果たしていけるよう、駐屯地・基地等の施設及びインフラの強靱化等を進める。
 こうした施設整備は、関係省庁や民間の知見を活用しつつ、5年間で集中して、円滑に執行していく。


Ⅲ 自衛隊の体制等
 計画の方針に基づき、各自衛隊の体制等を1から5までのとおり整備する。

1 統合運用体制
 各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事まであらゆる段階においてシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、常設の統合司令部を創設する。この際、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることを踏まえ、速やかに当該司令部を創設するとともに、共同の部隊を含め、各自衛隊の体制の在り方を検討する。
 サイバー領域における更なる能力向上のため、防衛省・自衛隊のシステム・ネットワークを常時継続的に監視するとともに、我が国へのサイバー攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化し得るよう、共同の部隊としてサイバー防衛部隊を保持する。
 また、南西地域への機動展開能力を向上させるため、共同の部隊として海上輸送部隊を新編する。
2 陸上自衛隊
 保有すべき防衛力の水準
 作戦基本部隊に関して、南西地域における防衛体制を強化するため、第15旅団を師団に改編するとともに、各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止及び対処し得るよう、その他の8個師団、5個旅団、1個機甲師団については機動運用を基本とする。また、専門的機能を備えた空挺部隊、水陸機動部隊、空中機動部隊を機動的に運用する。
 この際、良好な訓練環境を踏まえ、統合輸送能力により迅速に展開・移動させることを前提として、高い練度を維持した1個師団、2個旅団、1個機甲師団を北海道に配置する。
 こうした施策の前提として、組織の最適化を徹底するとともに、中長期的な体制の在り方を検討する。
 スタンド・オフ防衛能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊を保持するとともに、島嶼防衛用高速滑空弾を装備した部隊、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)及び極超音速誘導弾を装備した長射程誘導弾部隊を新編する。
 多様な経空脅威から重要拠点等を防護するため、03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を装備した高射特科部隊を保持する。
 基幹部隊の見直し等
 領域横断作戦能力を強化するため、対空電子戦部隊を新編するとともに、島嶼部の電子戦部隊を強化する。さらに、情報収集、攻撃機能等を保持した多用途無人航空機部隊を新編する。また、サイバー戦や電子戦との連携により、認知領域を含む情報戦において優位を確保するための部隊を新編する。
 持続性・強靱性を強化するため、南西地域に補給処支処を新編するとともに、補給統制本部を改編し、各補給処を一元的に運用することで後方支援体制を強化する。
 スタンド・オフ防衛能力、サイバー領域等における能力の強化に必要な増員所要を確保するため、即応予備自衛官を主体とする部隊を廃止し、同部隊所属の常備自衛官を増員所要に充てる。また、即応予備自衛官については、補充要員として管理する。
3 海上自衛隊
 保有すべき防衛力の水準
 平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、安定した経済活動の基盤となる海上交通の安全確保、各国との安全保障協力等のための海外展開の実施等、増加する活動量に対応し得るよう、哨戒艦等の導入により増強された水上艦艇部隊を保持する。また、有事においては、我が国の領域及び周辺海域を防衛するとともに、所要の海上交通の安全を確保するため、対潜水艦戦、対水上戦、対機雷戦等の各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、増強及び強化された護衛艦部隊、掃海艦艇部隊を保持するとともに、強化された哨戒ヘリコプター部隊を保持する。加えて、主に弾道ミサイル防衛に従事するイージス・システム搭載艦を整備する。
 平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、領域横断作戦の中でも重要な水中優勢を獲得・維持し得るよう、強化された潜水艦部隊を保持する。
 平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、平素からの活動に加え、偵察、ターゲティング及び対潜水艦戦を始めとする各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、強化された固定翼哨戒機部隊を保持する。
 基幹部隊の見直し等
 認知領域を含む情報戦への対応能力を強化し、迅速な意思決定が可能な態勢を整備するため、所要の研究開発を実施するとともに、情報、サイバー、通信、気象海洋等といった機能・能力を有する部隊を整理・集約し、総合的に情報戦を遂行するため、体制の在り方を検討した上で海上自衛隊情報戦基幹部隊を新編する。
 重層的な警戒監視態勢を構築するとともに水中及び海上優勢の確保や人的資源の損耗を低減させるため、各種無人アセット(滞空型無人機(UAV)、既存艦艇の活用を含む無人水上航走体(USV)、無人水中航走体(UUV)等)を導入するとともに、無人機部隊を新編する。
 統合運用体制の下、高い迅速性と活動量を求められる部隊運用を持続的に遂行可能な体制を構築するため、基幹部隊の体制の見直し等に着手し、所要の改編等を実施する。
 統合任務部隊を運用し得る自衛艦隊等の司令部の継戦能力を向上させるとともに、部隊運用の持続性・強靱性を確保するためのロジスティクスに係る態勢の見直し等に着手し、必要な措置を講じる。
 護衛艦(DDG・DD・FFM)等に12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイルを搭載する。
 上記のオに加え、水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発する。
 就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある艦艇等の早期除籍等を図り、省人化した護衛艦(FFM)等を早期に増勢する。加えて、分散機動運用等の多様な作戦を可能にするため、防空中枢艦を増勢するとともに、護衛艦(DDG・DD・FFM)の防空能力及び電子戦能力等の能力を向上させる。さらに、機雷戦能力を強化するため、掃海用無人アセットを管制する掃海艦艇を増勢するとともに、洋上における後方支援能力強化のため、補給艦を増勢する。また、有事における航空攻撃への対処等のため、戦闘機(F-35B)の運用が可能となるよう、護衛艦(「いずも」型)の改修を推進する。
 能力向上した固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K(能力向上型))の整備を進めるとともに、固定翼哨戒機の電子戦、対艦攻撃等の能力を向上させる。
4 航空自衛隊
 保有すべき防衛力の水準
 太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域を常時継続的に警戒監視するとともに、我が国に飛来する弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器(HGV)等の新たな経空脅威を探知・追尾し得る固定式警戒管制レーダーを備えた警戒管制部隊のほか、いわゆるグレーゾーン事態等の情勢緊迫時において、より広域で長期間にわたり我が国周辺の空域における警戒監視・管制を有効に行うため、増強された警戒航空部隊から構成される航空警戒管制部隊を保持する。
 戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的な態勢で行うため、質・量ともに大幅に洗練・増強された戦闘機部隊を保持する。また、戦闘機部隊等が我が国周辺空域等で高烈度化する各種航空作戦において粘り強く戦闘を継続するため、増強された空中給油・輸送部隊及び航空救難部隊を保持する。
 部隊等の機動展開や国際平和協力活動等を効果的に実施するため、増強された航空輸送部隊を保持する。
 重要地域の防空を実施する上で陸上自衛隊の地対空誘導弾部隊と連携するとともに、弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護する際に終末段階で対処する機能を備え、多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、増強された高射部隊を保持する。
 宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙領域把握(SDA)能力を増強した宇宙領域専門部隊を保持する。
 我が国から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な監視を実施するため、無人機部隊を保持する。
 基幹部隊の見直し等
 我が国の航空戦力の質・量を更に洗練・強化するため、近代化改修に適さない戦闘機(F-15)について、戦闘機(F-35A及びF-35B)への代替ペースを加速させる。また、近代化改修を行った戦闘機(F-15)について、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を引き続き行う。さらに、戦闘機(F-2)については、スタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、12式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与するため、計2個飛行隊分の能力向上事業を推進する。加えて、航空戦力の量的強化を更に進めるため、2027年度までに必要な検討を実施し、必要な措置を講じる。この際、無人機(UAV)の活用可能性について調査を行う。
 次期戦闘機について、戦闘機(F-2)の退役が見込まれる2035年度までに、将来にわたって航空優勢を確保・維持することが可能な戦闘機を配備できるよう、改修の自由や同盟国との相互運用性を確保しつつ、英国及びイタリアと次期戦闘機の共同開発を推進する。この際、戦闘機そのものに加え、無人機(UAV)等を含むシステムについても、国際協力を視野に開発に取り組む。
 さらに、戦闘機(F-35)や次期戦闘機といった最先端の戦闘機のパイロットの効率的な育成のため、地上教育及び練習機による飛行訓練を教育システムとして一体化することも含め、あるべき教育体系について検討の上、必要な措置を講じる。
 粘り強く戦闘を継続するため、各所に機動分散運用を実施し得るよう、展開基盤の迅速な整備等を行う体制を構築する。また、航空戦力を我が国への侵攻正面に柔軟に集中・指向し得るよう、航空戦力の運用の在り方について必要な検討を行う。
 高烈度な航空作戦にも対応し、また、粘り強く戦闘を継続する観点から、空中給油機能を強化するため、空中給油・輸送機(KC-46A等)を増勢するとともに、救難機(UH-60J)を更新する。また、太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防空態勢を強化するため、太平洋側の島嶼部等への移動式警戒管制レーダー等の整備を推進するとともに、早期警戒機(E-2D)を増勢する。陸上部隊等の迅速な機動展開等を実施するため、輸送機(C-2)を整備する。
 スタンド・オフ・ミサイルの運用能力を向上させるため、相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る無人機(UAV)を導入するほか、部隊の任務遂行に必要な情報機能の強化のため、空自作戦情報基幹部隊を新編する。
 多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、地対空誘導弾ペトリオット・システム等の能力向上を引き続き進める。
 宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。
5 組織定員の最適化
 2027年度末の常備自衛官定数については、2022年度末の水準を目途とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊それぞれの常備自衛官定数は組織定員の最適化を図るため、適宜見直しを実施することとする。また、統合運用体制の強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するため、必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、おおむね2,000名の陸上自衛隊の常備自衛官定数を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊にそれぞれ振り替える。

 なお、2027年度末までは、自衛官の定数の総計を増やさず、所要の施策を講じることで、必要な人員を確保する。


Ⅳ 日米同盟の強化
1 日米防衛協力の強化
 日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、平素からの連携を図る態勢を構築するとともに、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力、相互運用性を高めるための取組、我が国による反撃能力の行使に係る協力、防空、対水上戦・潜水艦戦、機雷戦、水陸両用作戦、空挺作戦、情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)、アセットや施設の防護、後方支援等における連携を推進する。また、より高度かつ実践的な演習・訓練を通じて同盟の即応性や相互運用性を始めとする対処力の向上を図る。

 力による一方的な現状変更やその試み、更には各種事態の生起を抑止するため、日米共同による、事態に応じて柔軟に選択される抑止措置(FDO)、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)等を拡大・深化させるとともに、平素から、日米双方の施設等の共同使用の増加、訓練等を通じた日米の部隊の双方の施設等への展開等を進める。また、日米間の調整機能を一層強化するとともに、日米同盟を中核とした同志国等との運用面における緊密な調整を実現する。

 あらゆる段階における日米共同での実効的な対処を支える基盤を強化するため、日米間の情報共有を促進するための情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組を強化するとともに、先端技術に関する共同分析や共同研究、装備品の共同開発・生産、相互互換性の向上、各種ネットワークの共有及び強化、米国製装備品の国内における生産・整備能力の拡充、サプライチェーンの強化に係る取組等、装備・技術協力を一層強化する。

2 在日米軍の駐留を支えるための施策の着実な実施
 在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるだけでなく、日米同盟の抑止力・対処力を強化していく観点から、「同盟強靱化予算」を始めとする在日米軍の駐留に関連する経費を安定的に確保する。



Ⅴ 同志国等との連携
 我が国にとって望ましい安全保障環境を創出することは、我が国の防衛の根幹に関わり、また、我が国の防衛そのものに資する極めて重要かつ不可欠な取組であるとの認識の下、自由で開かれたインド太平洋というビジョンも踏まえつつ、二国間・多国間の防衛協力・交流を一層推進する。特に、国家防衛戦略に示す同志国等との連携の方針を踏まえ、ハイレベル交流、政策対話、軍種間交流、連絡官等の人的交流に加え、自衛隊と各国軍隊との相互運用性の向上や我が国のプレゼンスの強化等を目的として、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、戦略的寄港・寄航、共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援、国際平和協力活動等といった具体的な取組を各軍種の特性に応じ適切に組み合わせて、戦略的に実施する。

 こうした防衛協力・交流の意義を踏まえ、より相互に連携し、具体的かつ踏み込んだ取組を行うべく、業務要領の改善、体制の整備、処遇を含む制度の見直しや秘匿回線を含む各国とのホットラインの整備といった基盤の整備等を進めるとともに、部隊運用に際して、防衛協力・交流に関する所要を一層反映していく。また、防衛協力・交流に係る取組を実施するに当たっては、関係省庁との連携、諸外国や非政府組織、民間部門等との連携を図るとともに、取組について戦略的に発信する。その際、特に以下を重視する。

1 共同訓練・演習
 防衛協力・交流としての意義も十分に踏まえつつ、ロジスティクス協力を含む二国間・多国間の共同訓練・演習を積極的に推進する。これにより、望ましい安全保障環境の創出に向けた我が国の意思と能力を示すとともに、各国との相互運用性の向上や他国との関係強化等を図る。

2 装備・技術協力
 装備品に関する協力は、構想から退役まで半世紀以上に及ぶ取組であることを踏まえ、防衛装備の海外移転や国際共同開発を含む、装備・技術協力の取組の強化を通じ、相手国軍隊の能力向上や相手国との中長期にわたる関係の維持・強化を図る。特に、防衛協力・交流、訓練・演習、能力構築支援等の他の取組とも組み合わせることで、これを効果的に進める。その際、就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある装備品の早期用途廃止、早期除籍等の活用による同志国への移転を検討する。

3 能力構築支援
 インド太平洋地域の各国軍隊等に対し、能力構築支援の取組を一層強化し、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出を目指すとともに、支援対象国との関係強化も推進する。その際、外交政策との調整を十分図るほか、米国、オーストラリア等の同盟国・同志国等とも緊密に連携することで、最大の効果が得られるように努める。東南アジア諸国等に対するものに加え、太平洋島嶼国に対する能力構築支援を拡充する。



Ⅵ 防衛力を支える要素
1 訓練・演習
 各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米の共同訓練・演習に加え、オーストラリア、インド、欧州・東南アジア諸国等との二国間、多国間の訓練・演習についても計画的かつ目に見える形で実施し、力による一方的な現状変更やその試みは認められないとの意思と能力を示していく。その際、事態に応じて柔軟に選択される抑止措置(FDO)としての訓練・演習等の充実強化を図るとともに、円滑化協定(RAA)の整備等を踏まえ、海外の良好な訓練環境を活かした訓練内容の充実や新たな訓練の実施を図る。

 また、有事において、部隊等の能力を最大限発揮するため、北海道を始めとする国内の演習場等を整備し、その活用を拡大するとともに、国内において必要な訓練基盤の整備・充実を着実に進める。米軍施設・区域の自衛隊による共同使用や民間の空港、港湾施設等の利用拡大を図るとともに、南西地域の島嶼部等に部隊を迅速に展開するための訓練を強化し、島嶼部における外部からの武力攻撃に至らない侵害や武力攻撃に適切に対応するため、警察、海上保安庁、消防、地方公共団体等との共同訓練、国民保護訓練等を強化する。

 こうした訓練を拡大していくためには、関係する地方公共団体や地元住民の理解や協力を得る必要があるため、訓練の安全確保に万全を期しつつ、北海道を始めとする国内の演習場等を含め、訓練基盤の周辺環境への配慮をしていく。

2 海上保安庁との連携・協力の強化
 あらゆる事態に適切に対応するため、海上保安庁との連携・協力を一層強化する。このため、海上保安庁との情報共有・連携体制を深化するとともに、武力攻撃事態時における防衛大臣による海上保安庁の統制要領の作成や共同訓練の実施を含め、各種の対応要領や訓練の充実を図る。

3 地域コミュニティーとの連携
 自衛隊及び在日米軍が、平素からシームレスかつ効果的に活動できるよう、自衛隊施設及び米軍施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力をこれまで以上に獲得していく。日頃から防衛省・自衛隊の政策や活動、在日米軍の役割に関する積極的な広報を行い、地元に対する説明責任を果たしながら、地元の要望や情勢に応じた調整を実施する。同時に、騒音等への対策を含む防衛施設周辺対策事業についても、我が国の防衛への協力促進という観点も踏まえ、引き続き推進する。また、各種事態において自衛隊が迅速かつ確実に活動を行うため、地方公共団体、警察・消防等の関係機関との連携を一層強化する。

 地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置・運営に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。また、中小企業者に関する国等の契約の方針を踏まえ、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保を図るなど、地元経済に寄与する各種施策を推進する。

4 政策立案機能の強化等
 自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化していく。この際、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する。また、自衛隊の将来の「戦い方」とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化する。さらに、こうした取組を推進し、政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化する。

 また、国民が安全保障政策に関する知識や情報を正確に認識できるよう 教育機関等への講師派遣、公開シンポジウムの充実等を通じ、安全保障教育の推進に寄与するほか、安全保障に係る研究成果等への国民のアクセスが向上するよう効率的かつ信頼性の高い情報発信に努めるとともに、多様化が進むソーシャルネットワークの一層の活用や、外国語によるものも含む情報発信の能力を高める各種施策を推進する。また、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究・教育機能を一層強化するため、国内外の研究・教育機関や大学、シンクタンク等とのネットワーク及び組織的な連携を拡充する。


Ⅶ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組
1 大規模災害等への対応
 南海トラフ巨大地震等の大規模自然災害や原子力災害を始めとする特殊災害といった各種の災害に際しては、統合運用を基本としつつ、十分な規模の部隊を迅速に輸送・展開して初動対応に万全を期すとともに、無人機(UAV)(狭域用)汎用型、ヘリコプター衛星通信システム、人命救助システム及び非常用電源の整備を始めとする対処態勢を強化するための措置を講じる。

 また、関係省庁、地方公共団体及び民間部門と緊密に連携・協力しつつ、各種の訓練・演習の実施や計画の策定、被災時の代替機能、展開基盤の確保等の各種施策を推進する。

 さらに、原子力発電所が多数立地する地域等において、関係機関と連携して訓練を実施し、連携要領を検証するとともに、原子力発電所の近傍における展開基盤の確保等について検討の上、必要な措置を講じる。

2 海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用に関する取組
 開かれ安定した海洋及び既存の国際的なルールに基づく空の利用は、海洋国家である我が国の平和と繁栄の基礎という認識の下、自由で開かれたインド太平洋というビジョンも踏まえ、海洋安全保障及び既存の国際的なルールに基づく空の利用について認識を共有する諸外国との共同訓練・演習、装備・技術協力、能力構築支援、情報共有等の様々な機会を捉えた艦艇や航空機の寄港・寄航等の取組を推進する。これにより、海洋秩序及び既存の国際的なルールに基づく空の利用の安定のための我が国の意思と能力を積極的かつ目に見える形で示す。

3 国際平和協力活動等
 国際平和協力活動等については、平和安全法制も踏まえ、派遣の意義、派遣先国の情勢、我が国との政治的・経済的関係等を総合的に勘案しながら、引き続き推進する。特に、これまでに蓄積した経験をいかしつつ、安全保障環境の改善に寄与するため、現地ミッション司令部等への要員派遣、国連三角パートナーシッププログラム(TPP)等の国連PKOに係る能力構築支援、国連本部等への幕僚派遣等を積極的に推進する。また、国際情勢の不安定化を踏まえ在外邦人等の保護措置及び輸送に係るものを含め、国際的な活動に係る体制を強化するため、中央即応連隊及び国際活動教育隊の一体化による、高い即応性及び施設分野や無人機運用等の高い技術力を有する国際活動部隊を新編する。

 国際平和協力センターにおける教育内容を拡充するとともに、国際平和協力活動等における関係省庁や諸外国、非政府組織等との連携・協力の重要性を踏まえ、同センターにおける自衛隊員以外への教育を拡大するなど、教育面での連携の充実を図る。

 なお、ジブチにおいて海賊対処のために運営している自衛隊の活動拠点について、中東・アフリカ地域における在外邦人等の保護措置及び輸送等に際する活用を含め地域における安全保障協力等のための長期的・安定的な活用のため、老朽化した設備の更新や施設の整備を推進する。


Ⅷ 早期装備化のための新たな取組
 スタンド・オフ防衛能力、海洋アセット、ソフトキル、無人アセット防衛能力、人工知能(AI)、次世代情報通信、宇宙、デジタルトランスフォーメーション(DX)、高出力エネルギー、情報戦といった分野のほか、自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結し得る分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性の高いものについて、防衛関連企業等から提案を受けて、又は、スタートアップ企業や国内の研究機関等の技術を活用することにより、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。そのため、早期装備化の障害となり得る防衛省内の業務上の手続、契約方式等を柔軟に見直すほか、運用実証・評価・改善等の集中的な反復を通じて、5年以内に装備化し、おおむね10年以内に本格運用するための枠組みを新設する。


Ⅸ いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤
1 防衛生産基盤の強化
 我が国の防衛産業は装備品のライフサイクルの各段階を担っており、装備品と防衛産業は一体不可分であり、防衛生産・技術基盤はいわば防衛力そのものと位置付けられるものである。

 企業にとって、防衛事業は高度な要求性能や保全措置への対応に多大な経営資源の投入を必要とする一方で、収益性は調達制度上の水準より低く、現状では、販路が自衛隊に限られ成長が期待されないなど産業としての魅力が乏しいこと、サプライチェーン上のリスクやサイバー攻撃といった様々なリスクが顕在化しているなど、多様な課題を抱えている。

 これらの課題に対応するため、各企業の防衛事業に対する品質管理、コスト管理、納期管理等を評価して企業のコストや利益を適正に算定する方式を導入し、防衛産業の魅力化を図る。また、企画提案方式等、企業の予見可能性を図りつつ、国内基盤を維持・強化する観点を一層重視した装備品の取得方式を採用していく。有償援助(FMS)調達する装備品についても、国内企業の参画を促進するための取組を行うとともに、合理化・効率化に努める。

 様々なリスクへの対応や防衛生産基盤の維持・強化のため、製造等設備の高度化、サイバーセキュリティ強化、サプライチェーン強靱化、事業承継といった企業の取組に対し、適切な財政措置、金融支援等を行う。

 サプライチェーンリスクを把握するため、サプライチェーン調査を実施する。新規参入を促進することでサプライチェーン強靱化と民生先端技術の取り込みを図る。さらに、同盟国・同志国等の防衛当局と協力してサプライチェーンの相互補完を目指す。これにより、安定的な調達に資するサプライチェーンの強靱化を行っていく。

 サイバー攻撃を含む諸外国の情報活動等からの情報保護は、防衛生産及び国際装備・技術協力の前提であり、防衛産業サイバーセキュリティ基準の防衛産業における着実な実施、防衛産業保全マニュアルを策定・適用するための施策を講じるとともに、産業保全制度の強化を行う。また、特許出願非公開制度等の経済安全保障施策と連携した機微技術管理を実施する。

2 防衛技術基盤の強化
 将来の戦い方に必要な研究開発事業を特定し、装備品の取得までの全体像を整理することにより、研究開発プロセスにおける各種取組による早期装備化を実現する。将来の戦い方を実現するための装備品を統合運用の観点から体系的に整理した統合装備体系も踏まえ、将来の戦い方に直結する以下⑴から⑹までの装備・技術分野に集中的に投資を行うとともに、従来装備品の能力向上等も含めた研究開発プロセスの効率化や新しい手法の導入により、研究開発に要する期間を短縮し、早期装備化につなげていく。その際、成果の見込みが低い研究開発については、速やかに事業廃止する仕組みを構築する。

 将来にわたって技術的優越を確保し、他国に先駆け、先進的な能力を実現するため、民生先端技術を幅広く取り込む研究開発や海外技術を活用するための国際共同研究開発を含む技術協力を追求及び実施するとともに、防衛用途に直結し得る技術を対象に重点的に投資し、早期の技術獲得を目指す。その際、関係省庁におけるプロジェクトとの連携、その成果の積極活用を進める。

 以上を踏まえ、政策部門、運用部門及び技術部門が一体となった体制で、将来の戦い方の検討と先端技術の活用に係る施策を推進する。

 我が国の科学技術力を結集する観点から、防衛省が重視する技術分野や研究開発の見通しを戦略的に発信し、企業等の予見可能性を高める。加えて、防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を抜本的に強化するため、防衛装備庁の研究開発関連組織のスクラップ・アンド・ビルドにより、2024年度以降に新たな研究機関を防衛装備庁に創設するほか、研究開発体制の充実強化を実行する。さらに、先端技術に関する取組を効果的に実施する観点から、国内の研究機関のほか、米国・オーストラリア・英国といった同盟国・同志国との技術協力を強力に推進する。

 開発段階から装備移転を見越した装備品の開発や、自衛隊独自仕様の見直しを推進する。装備品の開発に当たっては、量産段階・維持整備段階のコスト低減を考慮する。また、弾薬や車両等の従来技術について、その生産・技術基盤を維持するための措置を講じる。

 スタンド・オフ防衛能力
我が国に侵攻してくる艦艇、上陸部隊等に対して、脅威圏の外から対処する能力を獲得する。
 12式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)について開発を継続し、地上発射型については2025年度まで、艦艇発射型については2026年度まで、航空機発射型については2028年度までの開発完了を目指す。
 高い隠密性を有して行動できる潜水艦から発射可能な潜水艦発射型スタンド・オフ防衛能力の構築を進める。
 高高度・高速滑空飛しょうし、地上目標に命中する島嶼防衛用高速滑空弾の研究を継続し、早期装備型について2025年度までの事業完了を目指すとともに、本土等のより遠方から、島嶼部に侵攻する相手部隊等を撃破するための島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)を開発する。
 極超音速の速度域で飛行することにより迎撃を困難にする極超音速誘導弾について、研究を推進し2031年度までの事業完了を目指すとともに、派生型の開発についても検討する。
 長射程化、低レーダー反射断面積(RCS)化、高機動化を図りつつ、モジュール化による多機能性を有した島嶼防衛用新対艦誘導弾を研究する。
 極超音速滑空兵器(HGV)等対処能力
 既存装備品での探知や迎撃が困難である極超音速滑空兵器(HGV)等に対処するための技術を獲得する。
 巡航ミサイル等に加えて、極超音速滑空兵器(HGV)や弾道ミサイル対処を可能とする03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を開発する。
 極超音速で高高度を高い機動性を有しながら飛しょうする極超音速滑空兵器(HGV)に対処する、極超音速滑空兵器(HGV)対処用誘導弾システムの調査及び研究を実施する。
 ドローン・スウォーム攻撃等対処能力
 脅威が急速に高まっているドローン・スウォームの経空脅威に対して、経済的かつ効果的に対処するための技術を獲得し、早期装備化を目指す。
 小型無人機(UAV)等の経空脅威を迎撃する高出力レーザーの各種研究を継続する。
 高出力マイクロ波(HPM)を照射して小型無人機(UAV)等を無力化する技術の研究を継続する。
 無人アセット
 防衛装備品の無人化・省人化を推進するため、既存の装備体系・人員配置を見直しつつ、無人水中航走体(UUV)等に係る技術を獲得する。
 管制型試験無人水中航走体(UUV)から被管制用無人水中航走体(UUV)を管制する技術等の研究を実施し、水中領域における作戦機能を強化する。
 有人車両から複数の無人戦闘車両(UGV)をコントロールする運用支援技術や自律的な走行技術等に関する研究を実施する。
 水上艦艇の更なる省人化・無人化を実現するため、無人水上航走体(USV)に関する技術等の研究を継続する。
 次期戦闘機に関する取組
 次期戦闘機の英国及びイタリアとの共同開発を着実に推進し、2035年度までの開発完了を目指す。次期戦闘機等の有人機と連携する戦闘支援無人機(UAV)についても研究開発を推進する。
 これらの研究開発に際しては、我が国主導を実現すべく、数に勝る敵に有効に対処できる能力を保持することを前提に、将来にわたって適時適切な能力向上が可能となる改修の自由や高い即応性等を実現する国内生産・技術基盤を確保するものとする。
 その他抑止力・対処力の強化
 各種経空脅威への対処能力向上のための将来レールガンに関する研究を継続する。
 脅威となるレーダー等の電波器材に誤情報を付与して複数の脅威が存在すると誤認させる欺まん装置技術に関する研究を実施する。
 複雑かつ高速に推移する戦闘様相に対して、人工知能(AI)により行動方針を分析し、指揮官の意思決定を支援する技術を装備品に反映するための研究を行う。
 情報収集能力等を向上した多用機(EP-3)の後継機となる次期電子情報収集機について必要な検討を実施の上、研究開発を進める。
 警戒監視中の艦艇等から迅速に機雷を敷設するため、小型かつ遠隔から管制が可能な新型小型機雷を開発する。
 極超音速誘導弾の要素研究の成果を活用した極超音速地対空誘導弾の研究開発に着手する。
3 防衛装備移転の推進
 防衛装備移転については、同盟国・同志国との実効的な連携を構築し、力による一方的な現状変更や我が国への侵攻を抑止するための外交・防衛政策の戦略的な手段となるのみならず、防衛装備品の販路拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保にも効果的である。このため、政府が主導し、官民の一層の連携の下に装備品の適切な海外移転を推進するとともに、基金を創設し、必要に応じた企業支援を行っていく。

4 各種措置と制度整備の推進
 以上のような政策を実施するため、必要な予算措置等、これに必要な法整備、及び政府系金融機関等の活用による政策性の高い事業への資金供給を行うとともに、その執行状況を不断に検証し、必要に応じて制度を見直していく。


Ⅹ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化
1 人的基盤の強化
 防衛力の抜本的強化のためには、これまで以上に個々の自衛隊員に知識・技能・経験が求められていること、また、領域横断作戦、情報戦等に確実に対処し得る素養を身に着けた隊員を育成する必要があることに留意しつつ、必要な自衛官及び事務官等を確保し、更に必要な制度の検討を行うなど、人的基盤を強化していく。その一環として、研究開発事業に係る職員を確保し、技能等の能力を向上させる。この際、特にサイバー領域等を含む分野については、教育体制の強化や民間人材の活用を図る。

 このため、育児、出産及び介護といったライフイベントを迎える中でも、全ての自衛隊員が能力を発揮できる環境を整備するとともに、自衛隊員へのリスキリングを含め、採用から始まるライフサイクル全般に着目した施策を総合的に講じる。

 採用の取組強化
 少子化による募集対象人口の減少という厳しい採用環境の中で優秀な人材を安定的に確保するため、採用広報のデジタル化・オンライン化等を含めた多様な募集施策を推進するとともに、地方協力本部の体制強化や地方公共団体及び関係機関等との連携を強化する。
 また、任期制自衛官の魅力を向上する観点から、自衛官候補生の在り方の見直し、任期満了後の再就職、大学への進学等に対する支援の充実を図る。さらに、少子高学歴化を踏まえ、非任期制自衛官の採用の拡大や大卒者等を含む採用層の拡大に向けた施策を推進する。この際、貸費学生制度の拡充を通じ、有為な人材の早期確保を図る。
 さらに、サイバー領域等で活躍が見込まれる専門的な知識・技能を有する人材を取り込むため、柔軟な採用・登用が可能となる新たな自衛官制度を構築するほか、自衛隊を退職した者を含む民間の人材を活用するために必要な施策を講じる。
 予備自衛官等の活用
 作戦環境の変化や自衛隊の任務が多様化する中で、予備自衛官等が常備自衛官を効果的に補完するため、充足率の向上のみならず、予備自衛官等に係る制度を抜本的に見直し、体制強化を図る。このため、即応予備自衛官及び予備自衛官が果たすべき役割を再整理した上で、自衛官未経験者からの採用の拡大や、年齢制限、訓練期間等について現行制度の見直しを行う。
 人材の有効活用
 女性隊員の採用や、意欲・能力・適性に応じた登用を引き続き積極的に行うとともに、女性の活躍を支える教育基盤の整備や、女性自衛官の増勢を見据えた隊舎・艦艇等における女性用区画の計画的な整備を行う。
 また、知識・技能・経験等を豊富に備えた人材の一層の活用を図るため、精強性にも配慮しつつ、自衛官の定年年齢の引上げを行うとともに、再任用自衛官が従事できる業務を大幅に拡大し、再任用による退職自衛官の活用を強力に推進する。
 中途退職者の抑制は急務であり、効果的な施策の検討の資とするため、中途退職に関する自衛隊員の意識等の調査を実施する。任務や勤務環境の特殊性も踏まえ、必要となる施策については不断に検討し、講じていく。
 生活・勤務環境の改善等
 ハラスメントは、自衛隊員相互の信頼関係を失墜させ組織の根幹を揺るがす決してあってはならないものであるとの認識の下、ハラスメント防止に係る有識者会議における検討結果等を踏まえた新たな対策を確立し、全ての自衛隊員に徹底させる。さらに、時代に即した対策が講じられるよう、その見直しを継続的に行い、ハラスメントを一切許容しない組織環境とする。
 また、部隊の新編・改編や即応性を確保するために必要な宿舎の着実な整備を進めるほか、隊舎・宿舎の近代化や予防保全を含む計画的な老朽化及び耐震化のための対策を講じる。さらに、生活・勤務用備品の所要数整備や確実な老朽更新、また、日用品等の所要数の確実な確保といった隊員の生活・勤務環境の改善を図る。この際、艦艇のように特殊な環境であっても働きやすい環境となるよう留意する。これらの施策により自衛隊員の士気向上を図る。
 家庭との両立を支援する制度の整備・普及を始めとするワークライフバランス確保の取組を進めるとともに、隊員のニーズを踏まえた託児施設の整備、緊急登庁時におけるこどもの一時預かり等の施策を推進する。また、地方公共団体や関係団体等と連携した家族支援施策を拡充する。
 人材の育成
 より高度な領域横断作戦における統合運用に資する人材確保のため、統合幕僚学校や各自衛隊の幹部学校等における統合教育を強化する。各自衛隊、防衛大学校及び防衛研究所においては、部隊の中核となり得る優秀な人材の確保・輩出のため、サイバー領域等を含む教育・研究の内容及び体制を強化する。また、陸上自衛隊高等工科学校については各自衛隊の共同化及び男女共学化を実施する。
 さらに、各自衛隊の相互補完を一層推進するため、教育課程の共通化を図るとともに、先端技術を活用し、効果的かつ効率的な教育・研究を推進する。加えて、一元的な教育の実施及び教育効果の向上のため、海上自衛隊第1術科学校及び第2術科学校を統合するほか、いわゆる第5世代戦闘機操縦者養成等のための飛行教育・練成訓練環境の最適化等に資する初等練習機(T-7)・中等練習機(T-4)後継機及び関連するシステムの整備等を実施する。
 処遇の向上及び再就職支援
 自衛隊員の超過勤務の実態調査等を通じ、任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与・手当とし、特に艦艇やレーダーサイト等で厳しい任務に従事する隊員を引き続き適正に処遇するとともに、反撃能力を始めとする新たな任務の増加を踏まえた隊員の処遇の向上を図る。諸外国の軍人の給与制度等を調査し、今後の自衛官の給与等の在り方について検討する。自衛官として長年にわたり任務に精励した功績にふさわしい栄典・礼遇に関する施策を進める。
 また、若年定年制又は任期制の下にある自衛官の退職後の生活基盤の確保は国の責務であることを踏まえ、退職予定自衛官に対する進路指導体制や職業訓練機会等を充実させるとともに、地方公共団体、関係機関及び民間企業等との連携を強化するなど、再就職支援の一層の充実・強化を図る。
2 衛生機能の変革
 各種事態への対処や国内外における多様な任務に対応し得るよう、各自衛隊で共通する衛生機能等を一元化して統合衛生運用を推進するとともに、防衛医科大学校も含めた自衛隊衛生の総力を結集できる態勢を構築し、戦傷医療対処能力向上の抜本的改革を推進する。

 有事において、危険を顧みずに任務を遂行する隊員の生命・身体を救うため、第一線から後送先までのシームレスな医療・後送態勢を確立することが必要である。このため、応急的な措置を講じる第一線、戦傷者を後送先病院まで輸送する各自衛隊の各種アセットを有効に利用した後送間救護、最終後送先となる病院それぞれの機能を強化していく必要がある。

 まず、第一線救護については、実際に第一線で活動を行う衛生隊員に准看護師及び救急救命士の資格取得を推進するとともに、これらの養成基盤の更なる強化を図る。また、第一線救護に引き続いて実施する緊急外科手術に関して、新たに統合の教育課程を新設し、計画的な要員の育成を図る。さらに、艦艇での洋上外科手術についても上記課程修了者に必要な教育訓練を実施し洋上医療の強化を図る。

 航空後送間救護については、新たに航空後送間救護のための訓練装置を導入し、傷病者搬送時の救護能力向上のための教育訓練環境を整備する。これらの教育訓練の実施に当たっては、各自衛隊間での共通化、統合化を推進し、共通の知識・技能の向上を図る。

 南西地域における衛生機能の強化に当たっては、自衛隊那覇病院の機能及び抗たん性を拡充することが有効と考えられることから、同病院の病床の増加、診療科の増設、地下化等の機能強化を図る。その他の後送先となる自衛隊病院についても、建替え等の機会を捉え、同様の機能強化を図る。

 衛生機能については、各自衛隊で共通する機能が多いことから、衛生資器材の整備について、各自衛隊間の相互運用性を考慮して共通化を推進する。また、医療・後送に際して必要となる各自衛隊員の医療情報を自衛隊病院等において陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の隊員の区別なくタイムリーに取得できるよう、隊員の身体歴情報を電子化し、各隊員の医療情報を速やかに検索・閲覧できる態勢を整える。

 戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創等による失血死であり、これを防ぐためには輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要であることから、自衛隊において血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢の構築について検討する。また、血液製剤と並び戦傷医療において重要な医療用酸素の確保のため、酸素濃縮装置等についても整備を行う。

 さらに、防衛医科大学校においては、近年の医療技術等の進展が著しい中、戦傷医療対処能力向上を始めとした教育研究の強化を進めるとともに、臨床の現場となる防衛医科大学校病院については、医官及び看護官への高度な医療教育や自衛隊の衛生隊員の技能向上を図るほか、戦傷者の受け入れに対応するため、運営の抜本的改革を図るとともに、病院の建替え等の機会を捉え、機能強化を図る。また、それを補完するものとして、医官及び看護官の部外研修についてもその確保に努める。


Ⅺ 最適化の取組
1 装備品
 陸上自衛隊については、航空体制の最適化のため、一部を除き師団・旅団の飛行隊を廃止し、各方面隊にヘリコプター機能を集約するとともに、対戦車・戦闘ヘリコプター(AH)及び観測ヘリコプター(OH)の機能を多用途/攻撃用無人機(UAV)及び偵察用無人機(UAV)等に移管し、今後、用途廃止を進める。その際、既存ヘリコプターの武装化等により最低限必要な機能を保持する。

 海上自衛隊については、広域での洋上監視能力強化のため、滞空型無人機(UAV)を取得することに伴い、固定翼哨戒機(P-1)の取得数を一部見直す。護衛艦(「いずも」型)への戦闘機(F-35B)の搭載等、艦載所要の見直しにより、哨戒ヘリコプター(SH-60K(能力向上型))の取得数を一部見直す。多用機(U-36A)の用途廃止を進める。

 航空自衛隊については、保有機種の最適化のため、救難捜索機(U-125A)等の用途廃止を進める。

 更なる装備品の効果的・効率的な取得の取組として、長期契約の適用拡大による装備品の計画的・安定的な取得を通じてコスト低減を図り、企業の予見可能性を向上させ効率的な生産を促すことに加え、他国を含む装備品の需給状況を考慮した調達、コスト上昇の要因となる自衛隊独自仕様の絞り込み等により、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の実効性を高める。

2 人員
 統合運用体制強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するために必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、陸上自衛隊の常備自衛官定数のおおむね2,000名を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊に振り替え、自衛隊の組織定員の最適化を図る。

 また、自衛官の定数の総計を増やさず、既存部隊の見直しや民間委託等の部外力の活用を進める。



Ⅻ 整備規模
 この計画の下で抜本的に強化される防衛力の5年後とおおむね10年後の達成目標は、別表1のとおりとする。

 前記Ⅱ及びⅢに示す装備品のうち、主要なものの具体的な整備規模は、別表2のとおりとする。

 また、おおむね10年後における各自衛隊の主要な編成定数、装備等の具体的規模については、別表3のとおりとする。


ⅩⅢ 所要経費等
 2023年度から2027年度までの5年間における本計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は、43兆円程度とする。
 本計画期間の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、以下の措置を別途とることを前提として、40兆5,000億円程度(2027年度は、8兆9,000億円程度)とする。
 自衛隊施設等の整備の更なる加速化を事業の進捗状況等を踏まえつつ機動的・弾力的に行うこと(1兆6,000億円程度)。
 一般会計の決算剰余金が6の想定よりも増加した場合にこれを活用すること(9,000億円程度)。
 なお、格段に厳しさを増す財政事情と国民生活に関わる他の予算の重要性等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底し、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直し、徹底したコスト管理・抑制や長期契約を含む装備品の効率的な取得等の装備調達の最適化、その他の収入の確保等を行うこととし、上記剰余金が増加しない場合にあっては、この取組を通じて実質的な財源確保を図る。
 各年度の予算編成においては、情勢の変化等の不測の事態にも対応できるよう配意するとともに、別表2に示す装備品の整備を含め、各事業の進捗状況、実効性、実現可能性を精査し、必要に応じてその見直しを柔軟に行う。
 この計画を実施するために新たに必要となる事業に係る契約額(物件費)は、43兆5,000億円程度(維持整備等の事業効率化に資する契約の計画期間外の支払相当額を除く)とし、各年度において後年度負担についても適切に管理することとする。
 本計画期間中、2023年度から2027年度までの5年間において、装備品の取得・維持整備、施設整備、研究開発、システム整備等を集中的に実施するため、その後の整備計画においては、これを適正に勘案した内容とし、2027年度の水準を基に安定的かつ持続可能な防衛力整備を進めるものとする。
 この計画については、中長期的な防衛と財政の見通しを踏まえつつ、その時点における国際情勢、情報通信技術を始めとする技術的水準の動向、防衛力強化の裏付けとなる経済力・財政基盤の状況等の内外諸情勢を勘案し、必要に応じ見直しを行う。
 2027年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源、及び、2023年度から2027年度までの本計画を賄う財源の確保については、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の創設、税制措置等、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずることとする。


ⅩⅣ 留意事項
沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢見直し等についての具体的措置及び沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関連事業については、着実に実施する。

防衛力整備計画について別表1-1
防衛力整備計画について別表2-1
防衛力整備計画について別表3-1
防衛力整備計画について別表3-2
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ryukyuheiwa

Author:ryukyuheiwa


「宮古島千代田目」
「宮古島保良目」
「石垣島平得大俣目」

声をあげる。上げ続ける。あきらめないで、がっかりしないで、根気よく。社会を変えるには、結局それしかないのだと思います。
坂本龍一さん

「平和な島に自衛隊・米軍はいらない!」
軍隊が守るのは「国民」や「住民」ではなく、軍上層部が帰属する支配者だけ。
奄美・与那国・宮古・石垣への自衛隊の配備に反対します。

笠原利香さんイラスト:
笠原利香さんイラスト

17分程度のアニメを中心にしたビデオです、ぜひご覧ください!
本当にこれでいいのですか?宮古島
https://youtu.be/J6TdQK4jjmo


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宮古意見広告2020 03サイズ縮小

2015年2月27日「下地島空港を軍事利用しないよう求める」県庁前集会


全国の闘う仲間にお笑いを! 「伝説の闘うエンターテイナー」
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伝説の闘うエンターテイナー」ぶつはらゆきお
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-194.html


ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会のチラシ

住民連絡会チラシ表縮小
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宮古軍事化チラシ裏
宮古軍事化チラシ

3.19宮古島はどうなる?講演会実行委員会のチラシ

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宮古島平和運動連絡協議会のチラシ

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0812チラシ裏

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石垣市民連絡会チラシ01
石垣市民連絡会チラシ02

石垣島「市民連絡会」チラシ12号

石垣市民連絡会チラシ12号01
石垣市民連絡会チラシ12号02