「米軍新戦略」と連動した沖縄島の「米軍基地機能強化」宮古島・石垣島などへのミサイル部隊配備を許すな!島々が戦火の脅威にさらされる①
- 2021/01/29
- 13:48
Ryukyuheiwaより:
関連記事:米軍への隷属深める日米軍事同盟。日常化する日米共同訓練(作戦)、米軍は新部隊の一つを沖縄に配備。
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-857.html
関連記事:「第一列島線に地上発射ミサイル」再編が進む米軍・海兵隊。それと連動した自衛隊配備・強化が加速化する琉球弧の島々。
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-890.html
関連記事:宮古島・石垣島にも米軍がやって来る!米海兵隊が「沿岸連隊」創設、沖縄にも配備?
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-913.html
以下の資料をページ下部に掲載してます:
①7月29日のOKIRON 「自衛隊の南西配備と日米地位協定」 山本琉大准教授
②米海兵隊戦力デザイン2030
③CSBA ADVANCING BEYOND THE BEACH 2016
④7月30日のOKIRON 「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(上)」野添沖縄国際大学准教授
7月31日のOKIRON 「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(下)」野添沖縄国際大学准教授
キャンプ・キンザ―倉庫群の移設先拡張へ。
米軍基地「移設」とは「拡張・機能強化そして返還遅れ」が付き物なのか?

1月29日の琉球新報紙面

1月29日の沖縄タイムス紙面
進む米軍の再編、
浦添キャンプ・キンザーに「上陸支援大隊」

11月3日の琉球新報紙面
米軍インド太平洋地域での新戦略、
同盟国(当然日本も)と連携し軍(海兵隊)の分散化、海軍との作戦行動を一体化。
海兵隊トップのバーガー司令官「海兵沿岸連隊」創設に再び言及。

9月28日の琉球新報紙面
米軍の新戦略「島々を中国の攻撃に耐えうる防衛上の要所に変える」
宮古島、石垣島などへのミサイル部隊配備は「米軍新戦略」と連動したものであることが明白に!!
米軍は対艦・対空ミサイルを装備した米海兵隊沿岸連隊を沖縄(島?)に配備。
新戦略の核心は、第1列島線上で中国軍の海上部隊を撃破し海上封鎖し制海権を確立、西太平洋に分散配置された海軍部隊と、第1列島線の島々に配置された対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルを装備した地上部隊が中国軍の水上艦艇を無力化する。
海軍、空軍、電子戦、その他の能力を背景に、南西諸島を中心とする第1列島線上に、陸自の対艦・対空ミサイル部隊とともに、米陸軍・米海兵隊の地対艦ミサイル・中距離弾道ミサイルなどを配備し精密攻撃ネットワークを構築する。
移動式陸上長距離ミサイル能力の実戦化を加速し、南西諸島を中心とする第一列島線内の島々を中国の攻撃に耐えうる防衛上の要所に変える。 これらの島々に設置された移動式ミサイルは、複雑な地形の中で標的を見つけることの難しさゆえに中国軍が位置を特定し、追跡し、破壊することは困難である。

7月25日の琉球新報紙面

7月25日の沖縄タイムス紙面

7月25日のワシントン時事
7月25日 時事通信
戦車全廃、内陸から沿岸部隊へ 中国にらみ変貌 米海兵隊
ワシントン時事:戦車部隊全廃、1万2000人削減、対艦ミサイル装備の新連隊創設
米海兵隊のバーガー総司令官は3月、10年後を見据えた海兵隊の抜本的改革を打ち出した。中東やアフガニスタンでの対テロ戦に最適化された戦力構成から脱却。中国との軍事衝突をにらみ、海兵隊は西太平洋の制海権確保に貢献する部隊へと変貌しつつある。
改革の道筋を示した「戦力デザイン2030」によると、今後10年間で戦車部隊を全廃するほか、砲兵隊を大幅に削減、水陸両用車や短距離離陸・垂直着陸が可能な最新鋭ステルス戦闘機F35B、輸送機オスプレイなども減らす。
一方で無人偵察機を増やし、ミサイルを扱うロケット砲部隊を7隊から21隊に拡大する。新たに設置する「海兵沿岸連隊(MLR)」に対艦ミサイルを配備し、西太平洋で米海軍の活動を阻む中国軍艦をけん制。制海権確保につなげるのが狙いだ。
バーガー司令官は「戦力デザイン2030」の中で「18年策定の国家防衛戦略は、海兵隊が中東での過激派対策からインド太平洋における大国間競争に任務をシフトするよう求めた」と説明。「内陸から沿岸、対テロ組織から同格の競合国。このような任務の根本的変化は海兵隊の組織や訓練、装備に大幅な変革を必要とする」と強調した。
中国は地域紛争時に米軍の介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を打ち出し、ミサイル戦力を大幅に増強している。昨年8月のロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約失効後、米軍は同条約で禁止されていた射程500~5500キロの地上発射型ミサイルの開発を開始。中国に対抗するため、日本を含む第1列島線に地上発射型ミサイルを配備する方針を示している。
ただ、バーガー司令官は、500キロ以上の射程を持つとされる地上発射型トマホークを海兵沿岸連隊に配備するかどうかについては、「現時点で判断するのは時期尚早だ」と述べるにとどめた。
再掲:
米軍は、2022年までにサイバーや極超音速ミサイルなどの新たな作戦部隊を「台湾以東の島々(=沖縄の島々)へ配備。

1月24日の琉球新報紙面

1月23日の東京新聞紙面

1月21日の沖縄タイムス
①7月29日 OKIRON
住民保護なしに進む自衛隊の南西配備と日米地位協定
琉球大学准教授山本章子
海兵沿岸連隊の創設
2020年7月25日付の時事通信記事によれば、米海兵隊トップのデイビッド・バーガー総司令官は23日、同社の電話取材に対し、2027年までに対艦ミサイルなどを装備した「海兵沿岸連隊」を3連隊創設、沖縄とグアム、ハワイに配置する考えを明らかにした。バーガー総司令官は3月、海兵隊の今後10年間の方針を示した「兵力デザイン2030」で、戦力構成を抜本的に見直し、対中国抑止に傾注する姿勢を示していた。
海兵沿岸連隊の創設は、現在ある海兵隊の組織を再編する形となるので、沖縄に駐留する海兵隊の総兵力数が増えることはないという。
海兵沿岸連隊は1800~2000人規模とみられ、長距離対艦ミサイルや対空ミサイルを装備する。有事には島しょに分散展開し、陸上から中国軍艦隊を攻撃して中国軍の活動を阻害。米海軍による制海権確保を支援するのが、主な任務となる。
バーガー総司令官は、自衛隊が水陸両用車や輸送機オスプレイ、最新鋭ステルス戦闘機F35など相互運用性のある装備を保有しており、「(海兵隊と)完全に補完し合う関係」にあると強調。南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せた。
陸上自衛隊の南西配備
南西諸島では現在、陸上自衛隊(陸自)配備計画が進行中だ。自衛隊の南西配備計画は、民主党政権下の2010年に改定された、「防衛計画の大綱」(防衛大綱)で登場した。尖閣諸島をめぐる日中間の対立が高まったのを機に、「自衛隊配備の空白地域」である南西諸島への配備の必要性が打ち出され、2013年改定の防衛大綱に引き継がれる。
そして、2016年3月から与那国島に約160名の陸自沿岸監視隊が駐屯。また、2016年10月から奄美大島に約550名、2020年4月から宮古島に約700名の陸自警備部隊・地対艦空誘導弾部隊が駐屯。その次が、石垣島に奄美・宮古と同じ陸自部隊約500〜600名を駐屯させる計画で、2019年3月から駐屯地の建設工事が始まっている。
陸自の南西配備は、その賛否をめぐって各島の住民同士の対立を招いている。その根源には、有事に戦場となる沖縄島嶼の住民は守られるのか、という拭いがたい不信がある。
国民保護法では、有事に国民を避難させるのは自衛隊ではなく、自治体の役割となっている。周囲を海に囲まれた小さな自治体に、その能力や手段があるのか。そもそも、危機管理学が専門の中林啓修氏の試算によれば、宮古・八重山諸島の住民と、観光客などの滞在者を民間航空機・船舶で避難させるには、約3週間かかるという。平時ならまだしも、予測不能な有事に、事前に約3週間もの余裕をもって、民間人が避難することは可能なのか。
米軍の沖縄島嶼駐留の可能性
このように陸自の南西配備は、有事の住民保護への手当てが欠落したまま進められている。にもかかわらず、海兵沿岸連隊の創設にからんで、自衛隊とともに、米軍が訓練で南西諸島に駐留する可能性も出てきた。すでに、奄美大島では2019年9月、日米共同訓練が初めて実施されている。
日米地位協定第2条第4項bは、自治体や住民の意思に関係なく、米軍が自衛隊施設を利用することを認めている。ただし、米軍の自衛隊施設利用は、日米両国の実務担当者が話し合う日米合同委員会での合意が必要だ。
また、在沖米軍も、その実現が「政治的に難しい」ことは認識している。筆者がヒアリングしたところ、在沖海兵隊は、沖縄県内の自衛隊施設で自衛隊と共同訓練したいという希望を、以前から強く持っているが、住民の反発が強く「現在のところは」実現可能性が低いと見ている。
しかし、米軍は、民間空港・港を自由に使用できる。日米地位協定第5条は、米軍機に日本国内の民間空港の使用を許可している。2014~2018年の5年間で、米軍機が日本国内の民間空港を使用した回数は1605回。全国の89の民間空港のうち40カ所に着陸している。奄美空港にも219回、米軍機が着陸している。
宮古島市の下地島空港は、米海兵隊普天間飛行場の約2800メートルの滑走路よりも長い、3000メートルの滑走路を有しており、自衛隊や米軍が有事の使用を希望しているといわれてきた。沖縄県は下地島空港について、1971年の「屋良覚書」にもとづき軍事利用を禁止している。しかし、2019年9月に沖縄県が宮古島市で実施した総合防災訓練には、陸海空自衛隊から計約500人が参加し、航空自衛隊のC2輸送機が初めて下地島空港を使用した。
台湾有事の拠点となる沖縄島嶼
同じく日米地位協定第5条では、米軍艦船による国内の港の使用も認めている。日米地位協定の本文には、米軍は入港の際、日本側への事前通告を行わねばならないと書かれている。しかし、同条に関する合意議事録では、米軍が安全上必要だと判断すれば通告しなくとも入港できるとある。問題は、通告の判断が米軍に委ねられているように、米軍が港湾管理者の許可なく、民間の港へ自由に入港できることだ。
米軍は2007年に沖縄県与那国町の祖納港、2009年に石垣市の石垣港、2010年に宮古島市の平良港に入港。「乗組員の休養と友好親善」を理由とした石垣港入港時には、石垣市がターミナルの屋上に掲げた横断幕で入港反対の意思を示し、交流を拒否したにもかかわらず、住民の抗議の声の中を米海軍掃海艦が寄港した。
米軍の沖縄島嶼寄港の意図については、当時沖縄総領事だったケビン・メアの考えが、ウィキリークスによって明らかになっている。メアは、「軍拡を進める中国海軍と尖閣諸島で対峙した場合、一番近い港が与那国島、石垣島、宮古島になる。南西諸島の島々を対中国軍への戦略拠点として利用しないと有事に対処できない」と述べている。
注意したいのは、日米地位協定は平時の取り決めであり、有事に米軍機・船舶が民間空港・港を使用するのは、両国政府の事前協議の対象となる。事前協議とは、安約改定の際に創設された制度で、在日米軍の戦闘作戦行動には、事前に日本政府の了解が必要だ。
とはいえ、令和2年度版防衛白書は、昨年度版にひきつづき、中国が「安全保障上の強い懸念」であり、「強い関心をもって注視していく必要がある」と記述。安倍晋三首相も長年、中国の脅威を強調してきた。日本政府も、沖縄島嶼における日米共同訓練や、有事の米軍の民間空港・港使用を推進する側にある。
住民保護が欠落した国防
中国脅威論や自衛隊の南西配備の前にまず、有事に国が沖縄島嶼の住民を保護する仕組みづくりや、どうすればその実現が可能か検討するのが先だったはずだ。いつのまにかなくなったが、少なくともJアラートでは、沖縄島嶼住民の命は守れない。
米軍の場合、朝鮮有事には、米海兵隊が自国民の保護・避難任務を担っている。日本にも、島嶼防衛のため2018年に陸自の中に創設された、「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団が存在するが、現在は沖縄の離島ではなく、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に駐留している。
しかも、現在の水陸機動団は、輸送手段を持っていない。当初、佐賀空港に配備されるはずだった輸送機MV22(通称オスプレイ)は、地元の反対で、配備先を千葉県木更津駐屯地に変更。それも地元の反対で、配備が2020年7月までずれこむ。それまで陸上自衛隊のオスプレイは、アメリカのノースカロライナ州で訓練や整備を行っていた。
木更津への配備は、地元との取り決めで「暫定的」なものとされ、防衛省は5年以内に当初の計画どおり佐賀空港への配備を目指している。しかし、地権者との交渉が必要で、その後の施設整備の工期も確定していないことから、現時点で時期の見通しは立っていない。このような状況では、たとえ国民保護法を改正しても、「日本版海兵隊」が住民の保護・避難任務を担うことは不可能だ。
国民を守るための国防ではなく、国民の命を危うくする国防になっている。それが南西配備の問題のすべてではないか。
②米海兵隊戦力デザイン2030 2020年5月27日 / 最終更新6月2日
米海兵隊総司令官デービッド H.バーガー米海兵隊大将










③CSBA ADVANCING BEYOND THE BEACH 2016


































































7月30日 OKIRON
「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(上)」
野添沖縄国際大学准教授
米中対立の激化
米中対立が激化している今日、米軍の中で特に中国に対抗するために急激な変革を進めているのが、海兵隊である。
海兵隊の変革見直しの急先鋒になっているのが、デビッド・バーガー総司令官である。彼は7月の着任直後に「計画指針」を、今年3月には「兵力デザイン2030」を発表した。「兵力デザイン2030」では新たに海兵沿岸連隊を設立することが記されたが、7月24日のロイターの記事によれば、バーガー総司令官は、2027年までに沖縄に海兵沿岸連隊を設置することを明らかにした。すでに沖縄への海兵沿岸連隊配備に向けて、日本政府と協議を開始したという(Reuters, July 24)。
周知のように、沖縄には、在日米軍専用施設の約七割が集中している。沖縄の海兵隊の兵力数は約1万5000人で在沖米軍の兵力の約六割を占め、その基地面積は沖縄米軍基地全体の基地面積の約七割を占めている。沖縄には、海兵隊の最大の兵力単位である三つの海兵遠征軍(MEF)のうち、第三海兵遠征軍(ⅢMEF)が拠点を置いている。
このように、沖縄の米軍基地問題を考える上で沖縄の海兵隊について理解することが不可欠である。しかもバーガー総司令官の「計画指針」では、沖縄を拠点とする第三海兵遠征軍(ⅢMEF)は、海兵隊にとって「主要な努力の焦点」とされている(38th Commandant’s Planning Guidance)。それゆえ本稿では、各報道や報告書をもとに、現時点での海兵隊の見直しと沖縄への影響についてまとめてみたい。
海兵隊の見直し
海兵隊は、一般的に海から敵地へ上陸する「殴り込み部隊」というイメージがあるが、現在、むしろ最大の特徴は、司令部隊、陸上戦闘部隊、航空戦闘部隊、兵站部隊という四つの部隊が一体的に運用される海兵空地任務部隊(MAGTF)という組織構成をとることである。MAGTFは、大規模紛争に対応する海兵遠征軍(MEF)、中規模紛争に対応する海兵遠征連隊(MEB)、小規模紛争や人道支援・災害救助に対応する海兵遠征部隊(MEU)と、紛争の規模に合わせて三つのタイプをとる。このようなMAGTFの組織編成によって、海兵隊は、自然災害から大規模紛争まで、様々な種類の緊急事態に、即時にそして柔軟に対応することができるというのである。
海兵隊の歴史は、米国内の不要論に対する自分たちの存在の正当化・役割再定義の繰り返しであった。アジア太平洋戦争や朝鮮戦争で「水陸両用作戦」を実践した海兵隊は、ベトナム戦争後の不要論や批判に対して、グローバルな即応部隊として自らを再定義し、さらに冷戦後の不要論に対しては、災害救助・人道支援、さらにはテロとの戦いに向けて自らを変革してきたのである。
2000年代以降、中東での対テロ戦争に従事した海兵隊は、「第二の陸軍」としてまたも米国内で批判にさらされていた。こうした中、海兵隊は西太平洋における中国との対立の中に新たな役割を見いだした。
近年、中国は南シナ海・東シナ海への海洋進出を進めるとともに、短距離ミサイルや対艦ミサイルなど「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)と呼ばれる米軍の介入を妨げる能力を向上させてきた。今日、日本列島から台湾、フィリピンにかけての「第一列島線」上にある在日米軍基地は約2000発もの中国軍のミサイルの射程内にあり、小笠原など「第二列島線」上のグアムも狙える能力も備えつつある。
当初、中国軍に対抗する上で「エア・シー・バトル」が構想されたように、米軍の戦略で重視されていたのは、空軍や海軍であった。しかし、この後、中国の軍事力の向上によって西太平洋における米軍の空や海での優位が揺らぐ中、陸軍や海兵隊が巻き返しを図る。これまでのような海上における米国の軍事的優位が前提でなくなる中、海兵隊は、制海権を確保し、中国軍の海洋進出を阻止する役割を担おうとしている。
海兵隊の新作戦構想EABO
バーガー海兵隊総司令官は、昨年の「計画指針」において、中国を念頭に、潜在敵国の長距離射撃能力の向上に対して、海軍と連携することで、制海権を確保し海洋拒否を実行することを掲げた。そのため、海兵隊は、中国など潜在敵国のミサイルの射程内で活動するという。そしてバーガー総司令官は、「敵の精密打撃能力の向上を踏まえて、陸上での我々の兵力を分散しなければならない」と強調している。潜在敵国は、「我々の前方の固定された脆弱な基地を標的にすることを意図している」ので、「集中した、脆弱な、そしてお金のかかる前方のインフラやプラットフォームに依存しない新しい遠征型の海軍力の構造を発展させる」必要があるというのである。注目すべきことに、海兵隊の組織編成の特徴であるMAGTFについても、「すべての危機における唯一の解決策ではありえない」としてその見直しを示唆している。(38th Commandant’s Planning Guidance)。
こうした中、近年、海兵隊が追求している新たな作戦構想が、「Littoral Operations in Contested Environment」(LOCE:対立的環境下における沿岸作戦)と「Expeditionary Advanced Base Operations」(EABO:遠征前方基地作戦)である。特にEABOは、対立的環境の中、分散された小規模の部隊で、要衝となる離島を占拠し、ミサイルやセンサーを配備したり戦闘機の出撃拠点や給油拠点にしたりするなど、一時的な即席の基地を構築することで、制海権の確保や中国軍の海洋進出を拒否しようとするものである。海兵隊は、このような作戦を実施するにあたり、移動式のミサイルであるHIMARS(高機動ロケット砲システム)や無人機・無人艇、サイバーといった最新の技術を駆使しようとしている。
最近、沖縄では、EABOの訓練が活発に行われている。昨年2019年には、沖縄県北部の離島である伊江島で3月、8月、12月と三回にわたって大規模なEABOの訓練が行われた。そこでは、MV22オスプレイによる兵員の輸送、パラシュートによる海兵隊員の島への上陸と飛行場の占拠、大型ヘリコプターCH53Eによる物資の輸送と戦闘機F35の給油地点の設置、輸送機C130によるHIMARSの輸送といった一連の訓練が行われた。訓練を行った沖縄を拠点とする第31海兵遠征部隊(31MEU)のロバート・ブローディ司令官は、「もし太平洋で紛争が起これば、31MEUがその第一陣になるだろうし、島の奪還というEABOコンセプトを使用するだろう」と述べている(USNI News, April 23, 2019)。
沖縄でのEABO訓練実施には、実戦のためのリハーサルのみならず、中国に対するデモンストレーションという意味合いもあったであろう。もっとも、海兵隊関係者が昨年筆者に話したところによれば、EABOはただちに実施できるには至っておらず、その完成にはあと5年かかるだろうということだった。
7月31日 OKIRON
「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(下)」
野添沖縄国際大学准教授
米海兵隊が使用する米軍普天間飛行場
「兵力デザイン2030」と海兵沿岸連隊の設置今年2020年3月、バーガー海兵隊総司令官は、「兵力デザイン2030」という文書を出し、ここで非常にドラスティックな組織の再編案が示された。予算の増加が見込めない中で新たな役割に向けた能力を目指し、資源配分を大幅に見直すべく、2030年までに、海兵隊の兵力数を合計で12000人削減するというのである。その内訳は、陸上兵力としては、すべての戦車大隊の廃止、3つの歩兵大隊の廃止(24→21)、砲兵中隊を16個削減(21→5)など、航空兵力のうち264海兵中規模ティルトローター飛行隊などの廃止、などであった。そして、その代わりに、ロケット砲中隊を14増加することや、長距離ミサイルや無人システムの開発に力を注ぐとされた(Force Design 2030)。
海兵隊の再編計画で注目されたのは、新たに海兵沿岸連隊(Marine Littoral Regiment: MLR)を設置するというものである。海兵沿岸連隊は、まさにEABOを行い、制海権や海洋拒否を達成するための部隊である。バーガー総司令官は「ウォールストリート・ジャーナル」に海兵沿岸連隊について次のように語っている。
もし軍事衝突が間近に迫れば、海兵沿岸連隊は小規模なチームに分かれ、揚陸艇で南シナ海や東シナ海に点在する小島に上陸する。そして、空中・海上・水面下で運用可能なセンサー付きドローンを装備し、より広い太平洋での戦闘に乗り出す前に中国の戦艦を標的にする。50~100人程度がチームを組み、中国艦隊に対艦ミサイルを発射する。報復攻撃をくぐり抜けるため、海兵隊は遠隔操縦できる次世代の水陸両用艇を駆使し、48~72時間ごとに島から島へと移動。他のチームは米戦艦からおとりの船を使った作戦を展開する。
バーガー総司令官は、このような海兵沿岸連隊について、「小規模で常に動き回り、しかも手を伸ばして接触する能力を持つ、分散された海軍遠征部隊に対抗するのは非常に難しいだろう」と語っている(『ウォールストリート・ジャーナル日本版』2020年3月25日)。
なお、海兵沿岸連隊の人員は1800人から2000人で、沿岸戦闘チーム(LCT)、沿岸対空大隊、沿岸兵站大隊という三つの主要な要素から構成される。
LCTは、歩兵大隊と長距離ミサイル中隊で構成され、長距離対艦射撃や前方での軍用機の武装や給油、情報収集・偵察などを行う。沿岸対空大隊は、航空偵察、早期警戒、制空権確保、前方での装備や給油能力の提供を担う。沿岸兵站大隊は、EABOを行うにあたり物資を供給したり、医療やメンテナンスを行ったりするという。
海兵沿岸連隊は、沖縄に司令部を置くⅢMEFに三つ設置されるが、まずはハワイに、そして次に日本とグアムに設置される予定である。ハワイに現在駐留する第3海兵連隊が、まず海兵沿岸連隊に再編され、様々な実験が行われる。その上で、現在、沖縄に駐留する第4海兵連隊(キャンプ・シュワブ)、第12海兵連隊(キャンプ・ハンセン)がそれぞれ海兵沿岸連隊に転換されるというのである(USNI News, June 4, 2020、Congressional Research Service, New US Marine Corps Force Design Initiative, June 5, 2020)。
なお、2012年に合意された在日米軍再編の見直しでは、第4海兵連隊は、沖縄からグアムに移転することになっている。グアムに設置される海兵沿岸連隊は、第4海兵連隊が沖縄からグアムに移転した後に再編されるものと思われる。一方、沖縄では、キャンプ・ハンセンの第12海兵連隊が海兵沿岸連隊に再編されると予想できる。
バーガー総司令官は、沖縄に海兵沿岸連隊が設置されたからといって、日本における駐留米軍の兵力数が増えるわけではないと述べている。なお、沖縄からグアムへの海兵隊移転は、沖縄での米軍基地への反発に対応したものであり、より分散化した兵力というバーガー総司令官のビジョンにも合致するものだという(Stars and Stripes, July 23, 2020)。海兵隊関係者によれば、海兵沿岸連隊は、どこかに設置されたとしても、有事だけでなく平時から分散してアジア各地を移動して回るということであった。平時から分散化・ローテーション化することにより、中国のミサイルの標的になりにくくするのが目的である。
自衛隊との連携?
海兵隊は、自衛隊との協力を重視しているようだ。バーガー総司令官は、7月23日の時事通信の電話取材で、自衛隊が水陸両用車やオスプレイ、F35など相互運用性のある装備を保有しているので、海兵隊と自衛隊は「完全に補完しあう関係だ」と強調し、南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せたという(時事ドットコムニュース、2020年7月25日)。
バーガー総司令官の考える作戦では、海兵隊は同盟国の兵力と一体となることが目指されている。彼によれば、海兵隊の部隊は「彼ら(同盟国)の間に非常に分散し、あなた(海兵隊)は彼らとともにいる」ことで、「パートナーや同盟国を安心させる」という(USNI News April 2, 2020 )。
自衛隊もまた、海兵隊との協力を重視している。もともと陸上自衛隊は、海兵隊と1970年代以降、共同訓練・演習を通して太いパイプを持っている。日本政府・自衛隊は、沖縄の海兵隊を、「在日米軍唯一の地上戦闘部隊」として重視してきた(野添文彬『沖縄返還後の日米安保』吉川弘文館、2016年、197-198頁)。近年では、離島奪還作戦を専門とする「日本版海兵隊」というべき、水陸機動団の発足にあたっても海兵隊が協力している。
昨年2019年8月20日、バーガー総司令官が初の外遊先として日本を訪問した際も、湯浅陸幕長は、海兵隊がEABOを展開する上でⅢMEFを重視する点について、「我々とも非常に親和性があると思っている」と述べた。そして、陸上自衛隊として、ⅢMEFと連携してインド太平洋地域の平和と安定に連携して努力したいと述べたという(『航空新聞社』2019年8月21日)。
元陸将の渡部悦和氏も、海兵隊のEABOは、離島を拠点に対艦ミサイルや対空ミサイルで中国軍の作戦を妨害するという点で「自衛隊の南西防衛構想と共通点がある」と評価している。その上で、「自衛隊、特に陸上自衛隊は米海兵隊の大胆な改革から多くのことを学ぶべき」だと強調している(渡部悦和・佐々木孝博『現代戦争論―超「超限戦」』ワニブックス、2020年、213-214頁)。
日本政府内では、2020年代前半、水陸機動団のうち、今後新設される三つ目の連隊(600人規模)を、キャンプ・ハンセンに配備することが考えられているという(『朝日新聞』2017年10月31日)。すでにキャンプ・ハンセンでは基地の共同使用が進んでおり、陸上自衛隊が演習を行っている。現在、キャンプ・ハンセンは、第12海兵連隊と31MEUの拠点となっている。上述のように第12海兵連隊は海兵沿岸連隊へ再編される予定だとされており、ここに自衛隊の水陸機動団が配備されれば、自衛隊と海兵隊は中国をにらんでさらに連携を強化することになるだろう。
米中対立の「最前線」
米中対立が激化する中で、沖縄は地理的にその対立の「最前線」に位置する。このような沖縄は、米軍にとって極めて重要であるのは間違いない。海兵隊は、沖縄に司令部を置くⅢMEFを最重視し、また海兵沿岸連隊を新たに設置しようとしている。バーガー総司令官は、海兵沿岸連隊の設置によって米軍の人数が増えるわけではないとはいうが、海兵隊が中国に対抗すべく非常に攻撃的な部隊に変貌しようとしている中、沖縄では不安の声が高まるだろう。
すでにEABOの訓練が沖縄で活発に行われ、有事には海兵隊がミサイルで中国軍を狙うことが予想される中、平時と有事双方において沖縄県民の危険性は高まることになるだろう。さらに、自衛隊と海兵隊の連携が進み、共同訓練が行われたり、自衛隊の部隊が新たに配備されたりすることになれば、沖縄の基地負担はさらに高まることになる。日米両政府には、沖縄にどのような兵力が配備され、何をするのか、沖縄県と県民に対して丁寧な説明が求められることはいうまでもない。
他方で、バーガー総司令官自らが認めているように、中国のミサイル能力が高まる中、大規模で固定的な基地は軍事的に脆弱になっている。それゆえ、現在、海兵隊は、分散によって、小規模の部隊で行動することを目指しているのである。海兵沿岸連隊も平時から分散・ローテーションによるプレゼンスの形をとるようである。こうした中で、海兵隊のMAGTFという組織編成さえも見直される可能性がある。
近年、米軍は海兵隊のみならず、様々な軍種が中国のミサイル能力に対抗するために分散化やローテーション化を重視している。エスパー国防長官は、前方配備された兵力を削減し、よりローテーション化された米軍のプレゼンスを目指していると述べた(Breaking Defense, July 21, 2020)。上院軍事委員会も2021年会計年度の国防権限法案で、インド太平洋軍の態勢について、大規模で集中したインフラから、より小さく、分散化された基地へ移行するよう強調した(Breaking Defense, June 11, 2020)。このように、米軍のプレゼンスのあり方が現在、見直されているのである。
もちろん、海兵隊の分散化作戦が、自動的に沖縄の米軍基地の集中の是正にただちにつながる訳ではない。米軍全体の分散化への志向は、むしろ基地やアクセス拠点の増大を招く可能性もある。しかし、中国に近接し基地の集中する沖縄は、海兵隊を含め米軍にとってあまりにも危険である。そして、沖縄は地理的に重要だとはいっても、沖縄だけではなく、日本列島から台湾、フィリピンへと至る「第一列島線」全体が米軍にとって重要であることを見逃してはならない。米軍の抑止力が重要であるならば、さらなる兵力の分散化、ローテーション化によって、沖縄に集中する米軍のあり方を見直す必要があるのではないか。さらに自衛隊が沖縄を重視する中、米軍のあり方を見直さなければ、自衛隊にも沖縄から批判の矛先が向かうことにも注意しなければならない。
関連記事:米軍への隷属深める日米軍事同盟。日常化する日米共同訓練(作戦)、米軍は新部隊の一つを沖縄に配備。
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-857.html
関連記事:「第一列島線に地上発射ミサイル」再編が進む米軍・海兵隊。それと連動した自衛隊配備・強化が加速化する琉球弧の島々。
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-890.html
関連記事:宮古島・石垣島にも米軍がやって来る!米海兵隊が「沿岸連隊」創設、沖縄にも配備?
http://ryukyuheiwa.blog.fc2.com/blog-entry-913.html
以下の資料をページ下部に掲載してます:
①7月29日のOKIRON 「自衛隊の南西配備と日米地位協定」 山本琉大准教授
②米海兵隊戦力デザイン2030
③CSBA ADVANCING BEYOND THE BEACH 2016
④7月30日のOKIRON 「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(上)」野添沖縄国際大学准教授
7月31日のOKIRON 「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(下)」野添沖縄国際大学准教授
キャンプ・キンザ―倉庫群の移設先拡張へ。
米軍基地「移設」とは「拡張・機能強化そして返還遅れ」が付き物なのか?

1月29日の琉球新報紙面

1月29日の沖縄タイムス紙面
進む米軍の再編、
浦添キャンプ・キンザーに「上陸支援大隊」

11月3日の琉球新報紙面
米軍インド太平洋地域での新戦略、
同盟国(当然日本も)と連携し軍(海兵隊)の分散化、海軍との作戦行動を一体化。
海兵隊トップのバーガー司令官「海兵沿岸連隊」創設に再び言及。

9月28日の琉球新報紙面
米軍の新戦略「島々を中国の攻撃に耐えうる防衛上の要所に変える」
宮古島、石垣島などへのミサイル部隊配備は「米軍新戦略」と連動したものであることが明白に!!
米軍は対艦・対空ミサイルを装備した米海兵隊沿岸連隊を沖縄(島?)に配備。
新戦略の核心は、第1列島線上で中国軍の海上部隊を撃破し海上封鎖し制海権を確立、西太平洋に分散配置された海軍部隊と、第1列島線の島々に配置された対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルを装備した地上部隊が中国軍の水上艦艇を無力化する。
海軍、空軍、電子戦、その他の能力を背景に、南西諸島を中心とする第1列島線上に、陸自の対艦・対空ミサイル部隊とともに、米陸軍・米海兵隊の地対艦ミサイル・中距離弾道ミサイルなどを配備し精密攻撃ネットワークを構築する。
移動式陸上長距離ミサイル能力の実戦化を加速し、南西諸島を中心とする第一列島線内の島々を中国の攻撃に耐えうる防衛上の要所に変える。 これらの島々に設置された移動式ミサイルは、複雑な地形の中で標的を見つけることの難しさゆえに中国軍が位置を特定し、追跡し、破壊することは困難である。

7月25日の琉球新報紙面

7月25日の沖縄タイムス紙面

7月25日のワシントン時事
7月25日 時事通信
戦車全廃、内陸から沿岸部隊へ 中国にらみ変貌 米海兵隊
ワシントン時事:戦車部隊全廃、1万2000人削減、対艦ミサイル装備の新連隊創設
米海兵隊のバーガー総司令官は3月、10年後を見据えた海兵隊の抜本的改革を打ち出した。中東やアフガニスタンでの対テロ戦に最適化された戦力構成から脱却。中国との軍事衝突をにらみ、海兵隊は西太平洋の制海権確保に貢献する部隊へと変貌しつつある。
改革の道筋を示した「戦力デザイン2030」によると、今後10年間で戦車部隊を全廃するほか、砲兵隊を大幅に削減、水陸両用車や短距離離陸・垂直着陸が可能な最新鋭ステルス戦闘機F35B、輸送機オスプレイなども減らす。
一方で無人偵察機を増やし、ミサイルを扱うロケット砲部隊を7隊から21隊に拡大する。新たに設置する「海兵沿岸連隊(MLR)」に対艦ミサイルを配備し、西太平洋で米海軍の活動を阻む中国軍艦をけん制。制海権確保につなげるのが狙いだ。
バーガー司令官は「戦力デザイン2030」の中で「18年策定の国家防衛戦略は、海兵隊が中東での過激派対策からインド太平洋における大国間競争に任務をシフトするよう求めた」と説明。「内陸から沿岸、対テロ組織から同格の競合国。このような任務の根本的変化は海兵隊の組織や訓練、装備に大幅な変革を必要とする」と強調した。
中国は地域紛争時に米軍の介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を打ち出し、ミサイル戦力を大幅に増強している。昨年8月のロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約失効後、米軍は同条約で禁止されていた射程500~5500キロの地上発射型ミサイルの開発を開始。中国に対抗するため、日本を含む第1列島線に地上発射型ミサイルを配備する方針を示している。
ただ、バーガー司令官は、500キロ以上の射程を持つとされる地上発射型トマホークを海兵沿岸連隊に配備するかどうかについては、「現時点で判断するのは時期尚早だ」と述べるにとどめた。
再掲:
米軍は、2022年までにサイバーや極超音速ミサイルなどの新たな作戦部隊を「台湾以東の島々(=沖縄の島々)へ配備。

1月24日の琉球新報紙面

1月23日の東京新聞紙面

1月21日の沖縄タイムス
①7月29日 OKIRON
住民保護なしに進む自衛隊の南西配備と日米地位協定
琉球大学准教授山本章子
海兵沿岸連隊の創設
2020年7月25日付の時事通信記事によれば、米海兵隊トップのデイビッド・バーガー総司令官は23日、同社の電話取材に対し、2027年までに対艦ミサイルなどを装備した「海兵沿岸連隊」を3連隊創設、沖縄とグアム、ハワイに配置する考えを明らかにした。バーガー総司令官は3月、海兵隊の今後10年間の方針を示した「兵力デザイン2030」で、戦力構成を抜本的に見直し、対中国抑止に傾注する姿勢を示していた。
海兵沿岸連隊の創設は、現在ある海兵隊の組織を再編する形となるので、沖縄に駐留する海兵隊の総兵力数が増えることはないという。
海兵沿岸連隊は1800~2000人規模とみられ、長距離対艦ミサイルや対空ミサイルを装備する。有事には島しょに分散展開し、陸上から中国軍艦隊を攻撃して中国軍の活動を阻害。米海軍による制海権確保を支援するのが、主な任務となる。
バーガー総司令官は、自衛隊が水陸両用車や輸送機オスプレイ、最新鋭ステルス戦闘機F35など相互運用性のある装備を保有しており、「(海兵隊と)完全に補完し合う関係」にあると強調。南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せた。
陸上自衛隊の南西配備
南西諸島では現在、陸上自衛隊(陸自)配備計画が進行中だ。自衛隊の南西配備計画は、民主党政権下の2010年に改定された、「防衛計画の大綱」(防衛大綱)で登場した。尖閣諸島をめぐる日中間の対立が高まったのを機に、「自衛隊配備の空白地域」である南西諸島への配備の必要性が打ち出され、2013年改定の防衛大綱に引き継がれる。
そして、2016年3月から与那国島に約160名の陸自沿岸監視隊が駐屯。また、2016年10月から奄美大島に約550名、2020年4月から宮古島に約700名の陸自警備部隊・地対艦空誘導弾部隊が駐屯。その次が、石垣島に奄美・宮古と同じ陸自部隊約500〜600名を駐屯させる計画で、2019年3月から駐屯地の建設工事が始まっている。
陸自の南西配備は、その賛否をめぐって各島の住民同士の対立を招いている。その根源には、有事に戦場となる沖縄島嶼の住民は守られるのか、という拭いがたい不信がある。
国民保護法では、有事に国民を避難させるのは自衛隊ではなく、自治体の役割となっている。周囲を海に囲まれた小さな自治体に、その能力や手段があるのか。そもそも、危機管理学が専門の中林啓修氏の試算によれば、宮古・八重山諸島の住民と、観光客などの滞在者を民間航空機・船舶で避難させるには、約3週間かかるという。平時ならまだしも、予測不能な有事に、事前に約3週間もの余裕をもって、民間人が避難することは可能なのか。
米軍の沖縄島嶼駐留の可能性
このように陸自の南西配備は、有事の住民保護への手当てが欠落したまま進められている。にもかかわらず、海兵沿岸連隊の創設にからんで、自衛隊とともに、米軍が訓練で南西諸島に駐留する可能性も出てきた。すでに、奄美大島では2019年9月、日米共同訓練が初めて実施されている。
日米地位協定第2条第4項bは、自治体や住民の意思に関係なく、米軍が自衛隊施設を利用することを認めている。ただし、米軍の自衛隊施設利用は、日米両国の実務担当者が話し合う日米合同委員会での合意が必要だ。
また、在沖米軍も、その実現が「政治的に難しい」ことは認識している。筆者がヒアリングしたところ、在沖海兵隊は、沖縄県内の自衛隊施設で自衛隊と共同訓練したいという希望を、以前から強く持っているが、住民の反発が強く「現在のところは」実現可能性が低いと見ている。
しかし、米軍は、民間空港・港を自由に使用できる。日米地位協定第5条は、米軍機に日本国内の民間空港の使用を許可している。2014~2018年の5年間で、米軍機が日本国内の民間空港を使用した回数は1605回。全国の89の民間空港のうち40カ所に着陸している。奄美空港にも219回、米軍機が着陸している。
宮古島市の下地島空港は、米海兵隊普天間飛行場の約2800メートルの滑走路よりも長い、3000メートルの滑走路を有しており、自衛隊や米軍が有事の使用を希望しているといわれてきた。沖縄県は下地島空港について、1971年の「屋良覚書」にもとづき軍事利用を禁止している。しかし、2019年9月に沖縄県が宮古島市で実施した総合防災訓練には、陸海空自衛隊から計約500人が参加し、航空自衛隊のC2輸送機が初めて下地島空港を使用した。
台湾有事の拠点となる沖縄島嶼
同じく日米地位協定第5条では、米軍艦船による国内の港の使用も認めている。日米地位協定の本文には、米軍は入港の際、日本側への事前通告を行わねばならないと書かれている。しかし、同条に関する合意議事録では、米軍が安全上必要だと判断すれば通告しなくとも入港できるとある。問題は、通告の判断が米軍に委ねられているように、米軍が港湾管理者の許可なく、民間の港へ自由に入港できることだ。
米軍は2007年に沖縄県与那国町の祖納港、2009年に石垣市の石垣港、2010年に宮古島市の平良港に入港。「乗組員の休養と友好親善」を理由とした石垣港入港時には、石垣市がターミナルの屋上に掲げた横断幕で入港反対の意思を示し、交流を拒否したにもかかわらず、住民の抗議の声の中を米海軍掃海艦が寄港した。
米軍の沖縄島嶼寄港の意図については、当時沖縄総領事だったケビン・メアの考えが、ウィキリークスによって明らかになっている。メアは、「軍拡を進める中国海軍と尖閣諸島で対峙した場合、一番近い港が与那国島、石垣島、宮古島になる。南西諸島の島々を対中国軍への戦略拠点として利用しないと有事に対処できない」と述べている。
注意したいのは、日米地位協定は平時の取り決めであり、有事に米軍機・船舶が民間空港・港を使用するのは、両国政府の事前協議の対象となる。事前協議とは、安約改定の際に創設された制度で、在日米軍の戦闘作戦行動には、事前に日本政府の了解が必要だ。
とはいえ、令和2年度版防衛白書は、昨年度版にひきつづき、中国が「安全保障上の強い懸念」であり、「強い関心をもって注視していく必要がある」と記述。安倍晋三首相も長年、中国の脅威を強調してきた。日本政府も、沖縄島嶼における日米共同訓練や、有事の米軍の民間空港・港使用を推進する側にある。
住民保護が欠落した国防
中国脅威論や自衛隊の南西配備の前にまず、有事に国が沖縄島嶼の住民を保護する仕組みづくりや、どうすればその実現が可能か検討するのが先だったはずだ。いつのまにかなくなったが、少なくともJアラートでは、沖縄島嶼住民の命は守れない。
米軍の場合、朝鮮有事には、米海兵隊が自国民の保護・避難任務を担っている。日本にも、島嶼防衛のため2018年に陸自の中に創設された、「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団が存在するが、現在は沖縄の離島ではなく、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に駐留している。
しかも、現在の水陸機動団は、輸送手段を持っていない。当初、佐賀空港に配備されるはずだった輸送機MV22(通称オスプレイ)は、地元の反対で、配備先を千葉県木更津駐屯地に変更。それも地元の反対で、配備が2020年7月までずれこむ。それまで陸上自衛隊のオスプレイは、アメリカのノースカロライナ州で訓練や整備を行っていた。
木更津への配備は、地元との取り決めで「暫定的」なものとされ、防衛省は5年以内に当初の計画どおり佐賀空港への配備を目指している。しかし、地権者との交渉が必要で、その後の施設整備の工期も確定していないことから、現時点で時期の見通しは立っていない。このような状況では、たとえ国民保護法を改正しても、「日本版海兵隊」が住民の保護・避難任務を担うことは不可能だ。
国民を守るための国防ではなく、国民の命を危うくする国防になっている。それが南西配備の問題のすべてではないか。
②米海兵隊戦力デザイン2030 2020年5月27日 / 最終更新6月2日
米海兵隊総司令官デービッド H.バーガー米海兵隊大将










③CSBA ADVANCING BEYOND THE BEACH 2016


































































7月30日 OKIRON
「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(上)」
野添沖縄国際大学准教授
米中対立の激化
米中対立が激化している今日、米軍の中で特に中国に対抗するために急激な変革を進めているのが、海兵隊である。
海兵隊の変革見直しの急先鋒になっているのが、デビッド・バーガー総司令官である。彼は7月の着任直後に「計画指針」を、今年3月には「兵力デザイン2030」を発表した。「兵力デザイン2030」では新たに海兵沿岸連隊を設立することが記されたが、7月24日のロイターの記事によれば、バーガー総司令官は、2027年までに沖縄に海兵沿岸連隊を設置することを明らかにした。すでに沖縄への海兵沿岸連隊配備に向けて、日本政府と協議を開始したという(Reuters, July 24)。
周知のように、沖縄には、在日米軍専用施設の約七割が集中している。沖縄の海兵隊の兵力数は約1万5000人で在沖米軍の兵力の約六割を占め、その基地面積は沖縄米軍基地全体の基地面積の約七割を占めている。沖縄には、海兵隊の最大の兵力単位である三つの海兵遠征軍(MEF)のうち、第三海兵遠征軍(ⅢMEF)が拠点を置いている。
このように、沖縄の米軍基地問題を考える上で沖縄の海兵隊について理解することが不可欠である。しかもバーガー総司令官の「計画指針」では、沖縄を拠点とする第三海兵遠征軍(ⅢMEF)は、海兵隊にとって「主要な努力の焦点」とされている(38th Commandant’s Planning Guidance)。それゆえ本稿では、各報道や報告書をもとに、現時点での海兵隊の見直しと沖縄への影響についてまとめてみたい。
海兵隊の見直し
海兵隊は、一般的に海から敵地へ上陸する「殴り込み部隊」というイメージがあるが、現在、むしろ最大の特徴は、司令部隊、陸上戦闘部隊、航空戦闘部隊、兵站部隊という四つの部隊が一体的に運用される海兵空地任務部隊(MAGTF)という組織構成をとることである。MAGTFは、大規模紛争に対応する海兵遠征軍(MEF)、中規模紛争に対応する海兵遠征連隊(MEB)、小規模紛争や人道支援・災害救助に対応する海兵遠征部隊(MEU)と、紛争の規模に合わせて三つのタイプをとる。このようなMAGTFの組織編成によって、海兵隊は、自然災害から大規模紛争まで、様々な種類の緊急事態に、即時にそして柔軟に対応することができるというのである。
海兵隊の歴史は、米国内の不要論に対する自分たちの存在の正当化・役割再定義の繰り返しであった。アジア太平洋戦争や朝鮮戦争で「水陸両用作戦」を実践した海兵隊は、ベトナム戦争後の不要論や批判に対して、グローバルな即応部隊として自らを再定義し、さらに冷戦後の不要論に対しては、災害救助・人道支援、さらにはテロとの戦いに向けて自らを変革してきたのである。
2000年代以降、中東での対テロ戦争に従事した海兵隊は、「第二の陸軍」としてまたも米国内で批判にさらされていた。こうした中、海兵隊は西太平洋における中国との対立の中に新たな役割を見いだした。
近年、中国は南シナ海・東シナ海への海洋進出を進めるとともに、短距離ミサイルや対艦ミサイルなど「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)と呼ばれる米軍の介入を妨げる能力を向上させてきた。今日、日本列島から台湾、フィリピンにかけての「第一列島線」上にある在日米軍基地は約2000発もの中国軍のミサイルの射程内にあり、小笠原など「第二列島線」上のグアムも狙える能力も備えつつある。
当初、中国軍に対抗する上で「エア・シー・バトル」が構想されたように、米軍の戦略で重視されていたのは、空軍や海軍であった。しかし、この後、中国の軍事力の向上によって西太平洋における米軍の空や海での優位が揺らぐ中、陸軍や海兵隊が巻き返しを図る。これまでのような海上における米国の軍事的優位が前提でなくなる中、海兵隊は、制海権を確保し、中国軍の海洋進出を阻止する役割を担おうとしている。
海兵隊の新作戦構想EABO
バーガー海兵隊総司令官は、昨年の「計画指針」において、中国を念頭に、潜在敵国の長距離射撃能力の向上に対して、海軍と連携することで、制海権を確保し海洋拒否を実行することを掲げた。そのため、海兵隊は、中国など潜在敵国のミサイルの射程内で活動するという。そしてバーガー総司令官は、「敵の精密打撃能力の向上を踏まえて、陸上での我々の兵力を分散しなければならない」と強調している。潜在敵国は、「我々の前方の固定された脆弱な基地を標的にすることを意図している」ので、「集中した、脆弱な、そしてお金のかかる前方のインフラやプラットフォームに依存しない新しい遠征型の海軍力の構造を発展させる」必要があるというのである。注目すべきことに、海兵隊の組織編成の特徴であるMAGTFについても、「すべての危機における唯一の解決策ではありえない」としてその見直しを示唆している。(38th Commandant’s Planning Guidance)。
こうした中、近年、海兵隊が追求している新たな作戦構想が、「Littoral Operations in Contested Environment」(LOCE:対立的環境下における沿岸作戦)と「Expeditionary Advanced Base Operations」(EABO:遠征前方基地作戦)である。特にEABOは、対立的環境の中、分散された小規模の部隊で、要衝となる離島を占拠し、ミサイルやセンサーを配備したり戦闘機の出撃拠点や給油拠点にしたりするなど、一時的な即席の基地を構築することで、制海権の確保や中国軍の海洋進出を拒否しようとするものである。海兵隊は、このような作戦を実施するにあたり、移動式のミサイルであるHIMARS(高機動ロケット砲システム)や無人機・無人艇、サイバーといった最新の技術を駆使しようとしている。
最近、沖縄では、EABOの訓練が活発に行われている。昨年2019年には、沖縄県北部の離島である伊江島で3月、8月、12月と三回にわたって大規模なEABOの訓練が行われた。そこでは、MV22オスプレイによる兵員の輸送、パラシュートによる海兵隊員の島への上陸と飛行場の占拠、大型ヘリコプターCH53Eによる物資の輸送と戦闘機F35の給油地点の設置、輸送機C130によるHIMARSの輸送といった一連の訓練が行われた。訓練を行った沖縄を拠点とする第31海兵遠征部隊(31MEU)のロバート・ブローディ司令官は、「もし太平洋で紛争が起これば、31MEUがその第一陣になるだろうし、島の奪還というEABOコンセプトを使用するだろう」と述べている(USNI News, April 23, 2019)。
沖縄でのEABO訓練実施には、実戦のためのリハーサルのみならず、中国に対するデモンストレーションという意味合いもあったであろう。もっとも、海兵隊関係者が昨年筆者に話したところによれば、EABOはただちに実施できるには至っておらず、その完成にはあと5年かかるだろうということだった。
7月31日 OKIRON
「海兵隊の再編は沖縄に何をもたらすか(下)」
野添沖縄国際大学准教授
米海兵隊が使用する米軍普天間飛行場
「兵力デザイン2030」と海兵沿岸連隊の設置今年2020年3月、バーガー海兵隊総司令官は、「兵力デザイン2030」という文書を出し、ここで非常にドラスティックな組織の再編案が示された。予算の増加が見込めない中で新たな役割に向けた能力を目指し、資源配分を大幅に見直すべく、2030年までに、海兵隊の兵力数を合計で12000人削減するというのである。その内訳は、陸上兵力としては、すべての戦車大隊の廃止、3つの歩兵大隊の廃止(24→21)、砲兵中隊を16個削減(21→5)など、航空兵力のうち264海兵中規模ティルトローター飛行隊などの廃止、などであった。そして、その代わりに、ロケット砲中隊を14増加することや、長距離ミサイルや無人システムの開発に力を注ぐとされた(Force Design 2030)。
海兵隊の再編計画で注目されたのは、新たに海兵沿岸連隊(Marine Littoral Regiment: MLR)を設置するというものである。海兵沿岸連隊は、まさにEABOを行い、制海権や海洋拒否を達成するための部隊である。バーガー総司令官は「ウォールストリート・ジャーナル」に海兵沿岸連隊について次のように語っている。
もし軍事衝突が間近に迫れば、海兵沿岸連隊は小規模なチームに分かれ、揚陸艇で南シナ海や東シナ海に点在する小島に上陸する。そして、空中・海上・水面下で運用可能なセンサー付きドローンを装備し、より広い太平洋での戦闘に乗り出す前に中国の戦艦を標的にする。50~100人程度がチームを組み、中国艦隊に対艦ミサイルを発射する。報復攻撃をくぐり抜けるため、海兵隊は遠隔操縦できる次世代の水陸両用艇を駆使し、48~72時間ごとに島から島へと移動。他のチームは米戦艦からおとりの船を使った作戦を展開する。
バーガー総司令官は、このような海兵沿岸連隊について、「小規模で常に動き回り、しかも手を伸ばして接触する能力を持つ、分散された海軍遠征部隊に対抗するのは非常に難しいだろう」と語っている(『ウォールストリート・ジャーナル日本版』2020年3月25日)。
なお、海兵沿岸連隊の人員は1800人から2000人で、沿岸戦闘チーム(LCT)、沿岸対空大隊、沿岸兵站大隊という三つの主要な要素から構成される。
LCTは、歩兵大隊と長距離ミサイル中隊で構成され、長距離対艦射撃や前方での軍用機の武装や給油、情報収集・偵察などを行う。沿岸対空大隊は、航空偵察、早期警戒、制空権確保、前方での装備や給油能力の提供を担う。沿岸兵站大隊は、EABOを行うにあたり物資を供給したり、医療やメンテナンスを行ったりするという。
海兵沿岸連隊は、沖縄に司令部を置くⅢMEFに三つ設置されるが、まずはハワイに、そして次に日本とグアムに設置される予定である。ハワイに現在駐留する第3海兵連隊が、まず海兵沿岸連隊に再編され、様々な実験が行われる。その上で、現在、沖縄に駐留する第4海兵連隊(キャンプ・シュワブ)、第12海兵連隊(キャンプ・ハンセン)がそれぞれ海兵沿岸連隊に転換されるというのである(USNI News, June 4, 2020、Congressional Research Service, New US Marine Corps Force Design Initiative, June 5, 2020)。
なお、2012年に合意された在日米軍再編の見直しでは、第4海兵連隊は、沖縄からグアムに移転することになっている。グアムに設置される海兵沿岸連隊は、第4海兵連隊が沖縄からグアムに移転した後に再編されるものと思われる。一方、沖縄では、キャンプ・ハンセンの第12海兵連隊が海兵沿岸連隊に再編されると予想できる。
バーガー総司令官は、沖縄に海兵沿岸連隊が設置されたからといって、日本における駐留米軍の兵力数が増えるわけではないと述べている。なお、沖縄からグアムへの海兵隊移転は、沖縄での米軍基地への反発に対応したものであり、より分散化した兵力というバーガー総司令官のビジョンにも合致するものだという(Stars and Stripes, July 23, 2020)。海兵隊関係者によれば、海兵沿岸連隊は、どこかに設置されたとしても、有事だけでなく平時から分散してアジア各地を移動して回るということであった。平時から分散化・ローテーション化することにより、中国のミサイルの標的になりにくくするのが目的である。
自衛隊との連携?
海兵隊は、自衛隊との協力を重視しているようだ。バーガー総司令官は、7月23日の時事通信の電話取材で、自衛隊が水陸両用車やオスプレイ、F35など相互運用性のある装備を保有しているので、海兵隊と自衛隊は「完全に補完しあう関係だ」と強調し、南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せたという(時事ドットコムニュース、2020年7月25日)。
バーガー総司令官の考える作戦では、海兵隊は同盟国の兵力と一体となることが目指されている。彼によれば、海兵隊の部隊は「彼ら(同盟国)の間に非常に分散し、あなた(海兵隊)は彼らとともにいる」ことで、「パートナーや同盟国を安心させる」という(USNI News April 2, 2020 )。
自衛隊もまた、海兵隊との協力を重視している。もともと陸上自衛隊は、海兵隊と1970年代以降、共同訓練・演習を通して太いパイプを持っている。日本政府・自衛隊は、沖縄の海兵隊を、「在日米軍唯一の地上戦闘部隊」として重視してきた(野添文彬『沖縄返還後の日米安保』吉川弘文館、2016年、197-198頁)。近年では、離島奪還作戦を専門とする「日本版海兵隊」というべき、水陸機動団の発足にあたっても海兵隊が協力している。
昨年2019年8月20日、バーガー総司令官が初の外遊先として日本を訪問した際も、湯浅陸幕長は、海兵隊がEABOを展開する上でⅢMEFを重視する点について、「我々とも非常に親和性があると思っている」と述べた。そして、陸上自衛隊として、ⅢMEFと連携してインド太平洋地域の平和と安定に連携して努力したいと述べたという(『航空新聞社』2019年8月21日)。
元陸将の渡部悦和氏も、海兵隊のEABOは、離島を拠点に対艦ミサイルや対空ミサイルで中国軍の作戦を妨害するという点で「自衛隊の南西防衛構想と共通点がある」と評価している。その上で、「自衛隊、特に陸上自衛隊は米海兵隊の大胆な改革から多くのことを学ぶべき」だと強調している(渡部悦和・佐々木孝博『現代戦争論―超「超限戦」』ワニブックス、2020年、213-214頁)。
日本政府内では、2020年代前半、水陸機動団のうち、今後新設される三つ目の連隊(600人規模)を、キャンプ・ハンセンに配備することが考えられているという(『朝日新聞』2017年10月31日)。すでにキャンプ・ハンセンでは基地の共同使用が進んでおり、陸上自衛隊が演習を行っている。現在、キャンプ・ハンセンは、第12海兵連隊と31MEUの拠点となっている。上述のように第12海兵連隊は海兵沿岸連隊へ再編される予定だとされており、ここに自衛隊の水陸機動団が配備されれば、自衛隊と海兵隊は中国をにらんでさらに連携を強化することになるだろう。
米中対立の「最前線」
米中対立が激化する中で、沖縄は地理的にその対立の「最前線」に位置する。このような沖縄は、米軍にとって極めて重要であるのは間違いない。海兵隊は、沖縄に司令部を置くⅢMEFを最重視し、また海兵沿岸連隊を新たに設置しようとしている。バーガー総司令官は、海兵沿岸連隊の設置によって米軍の人数が増えるわけではないとはいうが、海兵隊が中国に対抗すべく非常に攻撃的な部隊に変貌しようとしている中、沖縄では不安の声が高まるだろう。
すでにEABOの訓練が沖縄で活発に行われ、有事には海兵隊がミサイルで中国軍を狙うことが予想される中、平時と有事双方において沖縄県民の危険性は高まることになるだろう。さらに、自衛隊と海兵隊の連携が進み、共同訓練が行われたり、自衛隊の部隊が新たに配備されたりすることになれば、沖縄の基地負担はさらに高まることになる。日米両政府には、沖縄にどのような兵力が配備され、何をするのか、沖縄県と県民に対して丁寧な説明が求められることはいうまでもない。
他方で、バーガー総司令官自らが認めているように、中国のミサイル能力が高まる中、大規模で固定的な基地は軍事的に脆弱になっている。それゆえ、現在、海兵隊は、分散によって、小規模の部隊で行動することを目指しているのである。海兵沿岸連隊も平時から分散・ローテーションによるプレゼンスの形をとるようである。こうした中で、海兵隊のMAGTFという組織編成さえも見直される可能性がある。
近年、米軍は海兵隊のみならず、様々な軍種が中国のミサイル能力に対抗するために分散化やローテーション化を重視している。エスパー国防長官は、前方配備された兵力を削減し、よりローテーション化された米軍のプレゼンスを目指していると述べた(Breaking Defense, July 21, 2020)。上院軍事委員会も2021年会計年度の国防権限法案で、インド太平洋軍の態勢について、大規模で集中したインフラから、より小さく、分散化された基地へ移行するよう強調した(Breaking Defense, June 11, 2020)。このように、米軍のプレゼンスのあり方が現在、見直されているのである。
もちろん、海兵隊の分散化作戦が、自動的に沖縄の米軍基地の集中の是正にただちにつながる訳ではない。米軍全体の分散化への志向は、むしろ基地やアクセス拠点の増大を招く可能性もある。しかし、中国に近接し基地の集中する沖縄は、海兵隊を含め米軍にとってあまりにも危険である。そして、沖縄は地理的に重要だとはいっても、沖縄だけではなく、日本列島から台湾、フィリピンへと至る「第一列島線」全体が米軍にとって重要であることを見逃してはならない。米軍の抑止力が重要であるならば、さらなる兵力の分散化、ローテーション化によって、沖縄に集中する米軍のあり方を見直す必要があるのではないか。さらに自衛隊が沖縄を重視する中、米軍のあり方を見直さなければ、自衛隊にも沖縄から批判の矛先が向かうことにも注意しなければならない。
スポンサーサイト
安倍→菅は辺野古新基地あきらめろ②「米大統領」がトランプからバイデンに変わっても琉球弧の軍事要塞化は進む。 ホーム
沖縄県紙2紙が報道!1月23日の共同配信記事:自衛隊特殊部隊の元トップが指導自衛官に私的戦闘訓練。